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16. 10. 05

お脳の調子

大学の時に、近代文学研究の授業で
2年間漱石を集中的に勉強したことがありました。

大抵は漱石さんの作品の場合、
中学校で『坊っちゃん』、高校で『こころ』
が教科書に入っている率が高くて、それでまぁ
知ってる、という人が多いのではないか、と
思います。
でも、謙介の高校で採用していた教科書に
『こころ』は入っていなくて、大学で勉強するまで
結局漱石の作品で謙介が読んだのは
『坊っちゃん』だけだったのです。

漱石さん、幼少時に、養子に出されたこともあって、
自分を取り巻く人間の顔色、というものに
とても敏感だった、というところがあったようです。

そもそも親は子どもとの結びつきを構築します。
その結びつきを学ぶことを基本にしながら、
子は次第に他の人との人間関係を作っていくわけですから、
普通は親子の信頼による人間関係が、その人の基本になるわけです。


ところが漱石さんのところは、
「お前は里子に出す」と言ってその親が、
よその家に放り出したわけです。

養子に出した家は
もとはそこそこの資産家だったらしいのですが
零落したとかで、お寺か神社の参道で夜店をしていました。

養子先の親がやっている夜店に漱石が一緒にいて、
それがあまりにかわいそうな姿だった
と漱石の長兄が親に懇願して、
漱石は再び夏目家に戻ってくることになりました。

世の中にはどうしようもない親もいるので、
自分との信頼関係を構築する相手が親でなくて
ほかの人でもいいのですが。

とにかく、自分が、ある特定な人との
間に、信頼関係を作ることができれば、、
それ以降の人間関係も、そこから発展させて
築いていくことができやすいのでしょうし、
自我が何とか育っていく、ということなのだと思います。

ところが漱石の場合は、誰か特定な人との信頼関係を
築けなかった。そのため、自我もいつまでもぐらぐらとしていて
不安定なままだったようです。

ある時は「私の個人主義」と言って、周囲との関係を排除して
自分は自分、他の人は他の人と言ったかと思うと、
逆についつい他人の顔色とか機嫌をやたら気にし過ぎて、
その結果、身動きが取れなくなったりしています。

それで再び他人の思惑ばかり気にし過ぎた結果、
また身動きが取れなくなって、苦しくなっていきます。

そうして苦しい自分に今度は禅に救いを求めて、
「則天去私」と言ったりしたわけです。


漱石さんの人生は結局、その自我の不安定さのために
周囲との距離の取り方が、うまくできず、
自己を確立して生きる! と 他人との関係性の中で生きる
の間で揺れまくり、一生を終える、ということになりました。

しかし自己と他者との距離感の問題、というのは、
実は私たち近現代の人間が抱える
大きな問題でもないか、と思うのです。

そういう他者との距離感の問題で
悩んでいる人って、決して少ないない、のでは
ないか、と思います。


授業の中で、作品を読みながら
謙介はそういうことに気づきました。

そう考えたときに、なんだか自分からは遠い作家だった
漱石さんがいきなり目の前にやってきた、
という気がしました。

それから漱石の全作品を読みました。
それと併せて、漱石の奥さんが話して
娘婿の松岡譲が筆記した
『夏目漱石の思い出』も読みました。
Kinchan
今はこの作品は文春文庫所収ですね。
(あ、著作権法違反しちゃった♪
こんなふうに本の表紙をブログに載っける場合は
出版社の許可を得ないといけないんですよ。
あ、テーブルの写真を撮ったら、本が写っちゃった、
ということにしておこう。(笑)


謙介のもっている本は1986年発刊の
角川文庫改版21版のものです。

今、NH○で、この本を下敷きにしたドラマをやっているので
先週見ました。
今年は夏目漱石没後100周年ですからね。
 

本の中では、
鏡子さんが、漱石は「お脳の調子が良くない時」があって、
その時は大変だ、というような話をしていました。
そのお脳の調子の悪い時期が済むと、穏やかになるのだけど、、
とあった、と記憶しています。

この「お脳の調子が悪い」というのは、
謙介的には気にいったフレーズになりまして。
その後、調子が良くない時は、すべて「お脳の調子が悪い」
ということにしていました。

いやいや、今日は「お脳の調子」が良くないのです、とか。

先週ドラマを見ていましたら、
画面の中で、漱石役の長谷川なんとかさんが
荒れ狂っておりましたです。

それで、「ああそうだった、お脳の調子の良くない時期だ」ということを
思い出したのでした。

謙介なんか、相変わらずいつもお脳の調子がよくないぞ。


(今日聴いた音楽 いい日旅立ち 山口百恵歌
 1978年 今日は1980年に山口百恵の引退コンサートの
 あった日だとNH○のラジオで言っていました。
 謙介、1980年のこのころは、それこそお脳の調子が
 最悪の時期で、、うつ状態だったんですよね。
 ああ、引退するんだなぁ、ということは、当時ものすごく
 報道されたから、知らないわけではないのですが、
 あまり印象に残っていないのは、きっと自分のことで
 手一杯で、よそを見る余裕が全くなかったからでしょう)


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