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16. 07. 04

フランス人による文楽の本

フランソワ・ロゼ著 秋山伸子訳の
『文楽の日本 人形の身体と叫び』を読みました。
Benben


著者のロゼさんは、
東大のフランス文学の教員なのですが、
滞日10年を数え、今や浄瑠璃をおっしょさんについて
習っている、という人です。

ロゼさんのこの著書の原文はフランス語で書かれた
ものだったので、謙介が読んだのは当然日本語訳、
ということなのですが。


翻訳の文章って、謙介みたいに国文科の人間からすると
どうしてそんなこなれていないようなこむつかしい言葉を使うんだよ、という
思いがいつもありまして、謙介としては、読むの、結構しんどいのです。
特にフランス語の日本語訳って、、、、嫌いだ。(笑)

確かにこの『文楽の日本』もそういうところはありました。
文章、こんなふうなのです。 以下引用

  語り手と呼ばれることもある太夫は日常言語を統御する規範
  のほとんどすべてを乱す。 西洋の俳優は顔のすべてを総動員
  して、複雑な地形を垣間見せ、内面の変化に応じて表情を刻々と
  変化させていくが、太夫に関しては、顔全体で、この熱狂的な
  音を生み出していくのだ。したがって太夫が見せる様々な表情から
  登場人物の純粋かつ単純な表出を読み取る必要はない。ディドロ
  (フランスの作家)が当時演技に定評のあった俳優モンニメルに
  ついて述べたことは太夫には当てはまらないのだ。 太夫は口を
  ゆがめ、頬をふくらませ、唇を震わせ、眉を寄せ、額に皺を寄せ
  目を見開き、頬骨を飛び出させる。それは舞台上の若い主人公が
  絶望しているからでもなく、恋する娘が悲しんでいるからでもない。
  (中略) 太夫の声というこの素材は、激しい興奮状態にあり、
  忘我の境地にあることもしばしばで、唸り声、舌打ち、歯ぎしり
  甲高いヒューという音になって現れる。爆音に轟音、変貌自在な
  太夫の表情(とりわけ豊竹嶋大夫の顔は大きく震えているかの
  ようだ)は、魂とか心の動きを表現するものとなることを拒否する。

たとえば一行目。 「大夫は」の後、「、」を打てよ、とか
思ったりするのです。もうちょっと句点を打っていけば、
意味がクリアになるのに、どうして文章をだらだらと
続けるかなぁ、という気がするのですが。

ただね、今回のこの文章は、
今までの翻訳書と違ってそう苦痛にはならなかったのです。

というのが、この文章の題材が「文楽」であって、対象が
謙介的には自分がよく知っている対象だったので、
この本で書かれていることを、比較的簡単に
自分の中でイメージすることができたからです。

自分の場合、翻訳本、を読むときって、
文章から一度、これは、どういう意味なのだろう、
と考え、その書かれている文章を自分なりにイメージする作業をして
こういうことか? と創りあげながら、本を読み進めていく、
というふうにします。

ところが、上の文章の描写ですと、
パッと嶋大夫さんが、黒漆に金の紋の入った
豪壮な見台の前で、
顔の表情筋のすべての運動をするかのようにしながら、
要するにすんごい顔をして浄瑠璃を語っているありさまを
すぐに目に浮かべることができたのです。

この筆者に謙介はリクエストをしたいと思います。

浄瑠璃を聴くのであれば、
東京とか大阪の劇場に出演する
名人上手と言われる人のだけでなくて
各地で今も行われている人形浄瑠璃、
を聴いて欲しいのです。
(この本の中で一か所だけ、淡路島の文楽の話は出てきますが)

地方で行われている文楽の公演、
広報活動があまりされていないだけで
丹念に見て行けば、あちこちでやっています。

そういう地方の浄瑠璃語りは、人間国宝の
芸からすれば、お話にならないようなものも
あるかもしれません。

名人上手の浄瑠璃の、
その語りはどうしても浄瑠璃の語り、として
芸術的に昇華されて、
素晴らしく完成してしまっています。

中世のころ、大きな道の交わる辻とか市の立つ集落の
出入り口に立って、布教活動をしていた
ヒジリと呼ばれる人たちの説教節が
やがて、口説きになって、それがやがて、
音曲を伴った河内音頭・伊勢音頭と呼ばれるようになった系譜、
もうひとつはこうした語りの要素の濃い浄瑠璃へ行った系譜、

素朴な語りの中からは、
あ、語るということはこういうことなんだ、
ということも分かるように思いますし
語りの芸能、というものが、本当は大劇場の
洗練されたような場所で観るようなものではなくて
庶民の生活に根ざしたものだった、
ということも分かるように思うのですが。


この本を読んで、そんなことを感じ、思いました。


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