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16. 04. 28

翻訳は難しい

人の名前を呼ぶとき、
名前の下に「さん」をつけるときと
つけないときでは、やはり感じが
違ってくると個人的には思うのですが、
これをお読みのみなさんはいかがでしょうか。

たとえば
「津島」という言い方と「津島さん」という言い方。

謙介の大学の時の国文法の先生は、
太宰治と小中学校が同級生でした。

幼なじみ、だったので、
太宰のことは、「津島はね」と
本名で「くん」も「さん」もつけずに呼んでいました。

「津島くん」と「津島」では
やはり受け取る側では微妙にニュアンスが違うように
謙介は思うんですけどね。


何もつけない場合の言い方として
「呼び捨て」という言葉が日本語には
わざわざあります。


呼び捨てがいいとか悪いとか、という議論はさておき、
この「呼び捨て」 という言葉をわざわざ創りだした、
というのは、やはり日本人が「名前を呼び捨てにする」
ということについて何かしらの思いがある、
ということなんだろうと思うんです。

別にそれが普通であれば、取り立てて「呼び捨て」なんて
いう言葉を創ったりはしないでしょう。


どうしてそんなことを思ったかと言えば、
ちょっと用事があって、今
ムラカミハル○の小説を韓国語で読んで
いるからなのです。

Kisoen_books_020

この小説の中に「島本さん」という主人公ハジメくんの
小学校の時の同級生が出てくるのですが、
韓国語訳では、시마모토 とだけで、
呼び捨てになっています。

それから、主人公は大人になって、
結婚をするのですが、
原作の配偶者の呼び方については
有紀子と呼び捨てで

韓国語訳も当然原文と同じように 유키코
と呼び捨てです。

作者が二人の女性について、片方は「さん」付けとして
もう片方は呼び捨てにしているのは、
主人公からの心理的な距離感とか、
片方は家族、片方は幼なじみ、といった
時間の中での関係性の象徴として
そういう表現に差があるのか、と思います。


韓国語に軽い敬称表現がないかと言えば、
ちゃんとあるんですよ。「氏」っていうのが。 

デパートなんかで、迷子の呼び出しとか
でアナウンスがあるんですが、そういうときの
呼び出しは、「キム ミギョン氏」「パク ギワン氏」
というふうに「氏」をつけます。

韓国は日本と違って「姓」の種類が少ないので
デパートで「キム氏」なんて言ったら、
何百人と該当します。

だからこういう呼び出しの場合は必ずフルネームで
アナウンスします。そして、最後に「氏」をつけます。
日本ではちょっとあらたまった言い方の「氏」ですが、
韓国では日本語の「さん」程度の敬称です。


その島本さんが、主人公を呼ぶときは
「ハジメくん」と呼んでいて、
韓国語訳を見たら、今度は「ハジメ氏」になっているのです。

「さん」をつける、「呼び捨て」にする、「氏」をつけるつけない。
ということだけを見ても、いろいろと違いがあります。

翻訳とは、それに対応すると思われる
外国語の単語をあてはめて文章を作っていく、
というだけの作業ではなくて
両方の文化の背景をきちんと知った上で、
ふさわしい言葉をあてはめていかなければならない、
というしんどい作業なのだ、とまぁ当たり前のことについて
改めて深く思ったりしたのでした。


国際化、とか簡単に言いますが、やはりそれぞれの国の
文化をお互いに理解する、というのは、本当に難しい
ことですねぇ。

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Comments

 文化に少しでも似たような部分があれば,そこに関しては翻訳はやりやすいかもしれませんが,実際にはそんなことはほとんどないでしょうからねえ。
 その昔流行っていた「超訳」ならいざ知らず(笑

 ちなみに,韓国留学当初,なんとか読み書きができるようになった嬉しさに,槇原敬之の「もう恋なんてしない」の歌詞を韓国語に訳して知り合いの学生に見せてみたら,???になってました。歌詞に含まれる「強がりの弱さ」的な部分がまったくわからなかったみたいです。
 まあ,それ以前に訳そのものがダメダメだったんでしょうけど(苦笑

Posted by: Ikuno Hiroshi | 16. 04. 30 at 오전 12:03

---Ikuno Hiroshiさん
 あ、それわかります。日本語と韓国語は語順も同じなので、言葉を置き換えたらええやん、とか思って、これはこの単語、それはこれ、って置き換えてみるんですよね。それで、日本人から見たら、できた、って思うんですが、何せ文化、というものがありますから、思考の差とか、そういう習慣は、理解できない、っていうのもありますし、、。簡単にいかないですよね。今、なんでもかんでも国際化とかあまりに安易に言葉をつかっていますけれども、そういう文化の違いをひっくるめて、理解しあう、というのは、なかなか難しいことじゃないか、と思います。

Posted by: 謙介 | 16. 04. 30 at 오후 1:16

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