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13. 10. 03

イケメンの書道家だそうです。

Barasan

以下、イケメンでもなんでもない
ただの書道をやってるだけのおっさんの
感想ですが。

このまんがのあらすじ、っていうのが、
書道家で若くして中央の展覧会で
賞を取った半田清舟という人が、
賞の審査員に、字が人のまねだ、
書いた人の個性が出ていない、とか言われて、、
その審査員の爺さんをぶん殴ってしまい、
中央の書道界にいられなくなってしまって
長崎の離島にやってきて、そこでのドタバタ生活が描かれている、
というお話です。

まぁそこでの島の人たちの生活と、都会にいた
若くてイケメンの書道家としての生き方との大きなずれ、
カルチャーショックがドタバタタッチで描かれている、という
ことですね。

謙介、一番違和感を持ったのが、その島に来た動機でした。

マンガのそんなところに違和感を持っただのと
言うのは、まぁ大人気(おとなげ)ないか、とか
興ざめとか、シャレが分からんヤツ、、、。
とも一応思いはしたのですが、


でも、審査員の爺さんを殴ったために
島に来てしまう、ということは、このマンガの中では、
そもそもこのマンガとしては重要な動機の部分でして。
シャレのわからんヤツ、とか野暮はおよし、という気持ちもありますが
敢えて書くことにします。


審査員の爺さんに「個性がない」って言われて、イケメンの
書道家のお兄さん、怒髪天を突く勢いになって
その爺さんを殴ってしまうわけです。

書道を本当にやっている人であれば、
「個性がない」というような
批判の仕方はまずしません。
そこが変だ、って思いました。

書道の練習というのは、ふつうは以下のようにします。

まず、自分が書きたい古典の作品を選びます。

そしてその作品を何度も何度も練習をします。
これを臨書といいます。

たとえば仮に楷書の「九成宮醴泉銘」を
練習の古典に選んだとします。

ますはその九成宮を手本を見ながら
何度も何度も練習をします。
これを臨書といいますね。

そうして手本を閉じて、手本を見ないでも、
九成宮の字が書けるくらいにまで、
字の書き方を覚えます。

次に、題材はなんでもいいです。
たとえば、お経をその九成宮の書体で書いてみる、
ということをしてみます。
これを倣書、といいます。

そうして九成宮の字が体に叩き込まれたのを
確認していくわけです。

おそらくそのころには、九成宮の字の特徴、とか
筆の使い方、空間処理の仕方、というようなことも
文字通り体得しているはずでしょう。

今度は、そうした九成宮の書体をもとに
自分の作品を作っていくわけです。

ですからあくまで基本とかベースは、九成宮から
スタートしたのであれば、九成宮の字体を基本におくわけです。

何かしらの古典をベースにする
というのが書道の基本だし、
字の研究の基本です。

こうやって作品を仕上げていくのが
一番オーソドックスな書道の作品の仕上げ方です。

この「八犬伝」は謙介が書いた作品ですが
Hakken01


この字のベースは「始平公像造記」という古典が
ベースになっています。
Ryumonrin


今、↑で「ふつうの書道の練習」と書いたんですけどねー。

書道の先生について、そこで与えられた
お手本の字を練習して作品を作って展覧会に出す
という人がいます。
正直言えば、今の日本の書道をやっている人間の
7割くらいはこういう人かもしれません。

 
お手本をもらって書くと
習った字については練習しますが、
それ以外の字は、練習はしませんから。
そういうことで習った字と習ってない字の落差が
すごく激しいのです。

話をもとに戻しますが、
もし仮に
そうやって九成宮をベースにした作品を同じように
書いたとしても、Aさんが書いた字と、謙介が書いた字では
違いが出るはずです。それを書道では個性と呼びます。

一度自分の書いた字をとことん、その古典の形の中に入れて
しまうのです。

若いときは何かしらの古典をベースに使って
作品を作っていいのです。
そのエッセンスを取って、自分のものにし
永年自己研さんしていった後
はじめてその人なりの書風、というものが
確立されていく、ということです。

だからこのマンガの中で、
20歳そこそこの奴に個性がない、って
主人公のイケメン書道家に言った
審査員の爺さんのこのセリフは
謙介には「はあ?」としか思えませんでした。
「どこがいけないの? 」とか。


まだ年若い字を書く人の作品を見て
俺であれば要求するのは、
「あなたは何の古典をベースに作品作りに取り組んだか、それが
わかるかどうか」という要求でしかありません。

個性なんて要求するのは、
70歳80歳になってからでいいのです。


美術では「個性」とかその人らしさ、って
すごく言いますよね。書道もその人らしさ、
っていうことは言うのですが、美術と書道では
そのニュアンスが違います。

どうもこの作者は美術で言う「個性」と
書道でいう「個性」を同一視してるように
思ってしまうんですけどね。

そこで謙介、「え? 」となっちゃうわけです。


でもこれって同じじゃないですから。


と、書くと、おそらくじゃあ、前衛書道は? 
ということになろうと思います。
あのね、前衛の人だって最初はちゃんと古典を
勉強します。

古典のベースがあって、の前衛ですもん。

前衛もひところは盛んだったのですが、、
今、全国で前衛書道の盛んなところは
3つだけになってしまいました。
東京と愛媛と高知と。

どうして前衛書道がこれほどまでに衰退したか、と言えば、
基礎基本となる古典をしっかり学ばなくて、
いきなり個性に走ってしまったからです。
 
我流の字というのは、表現方法の
引き出しがろくにありません。

最初の一回はビギナーズラックで成功したとしても
その次からの展開が描けなくて
たちまち行き詰ってしまうことになります。

いろいろな古典の書体を研究して、そうした
古典のエッセンスを体得して、そのうえで自分の
作品を作る。そうしたら自然にその人らしさ
って出てきます。 

爺さん、まだ20歳そこいらの人に
個性個性って無茶苦茶なこと言うたらあかんがな。(笑)

俺だったら、古典のベースをきちんとおさえてあれば
「ちゃんと書けててええやん。」と言ったはずです。(笑)
「どこがダメなの? 」
それで充分だと思うけどなぁ。


あ、でも、それじゃあ、島に行く、お話のとっかかりの理由がないか。(笑)

だからさぁ、「女にふられた」とか「女から逃げてきた」とかで
離島に蟄居、っていうのはダメなんだろうか?

離島の描かれ方は、まぁあれくらいのことしか描けないと思います。

マンガだし、やっぱりあんまりおどろおどろしい現実までは、、。(笑)

最初のとっかかりでは「はぁ? 」というところもありましたが
それ以降の展開はおもしろかったです。


人気がある作品、っていうのもわかる気がしました。

(今日聴いた音楽 あざやかに生きて 歌 田島裕子
 1979 資生○サイモンピュ○CM曲 この曲も
 秋の深まるころに聞いて、いいなぁ、と思った曲です。)

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Comments

この漫画読んだことはないですが、イケメンの人生格闘は、なんだか最近の女子には人気ですね。仮面ライダーから、イケメン俳優がぞくぞくとデビューするのも…。

作者の思考もきっとストレートなのかもだけど…笑。

原発問題や世界政治が大変なときに、単純なストーリーがはやるものですね…日本人が幼稚になった証拠かもです。
なんでこんなに日本人、幼稚な馬鹿になりさがってしまったんでしょうね。。。

小説や漫画より、やはり現実は、きびしいですね。笑。

Posted by: holly | 13. 10. 04 at 오후 1:44

---hollyさん
今の世の中、分からないことがあっても、携帯やらパソコンでちょちょっと検索すると、とりあえず答えらしきものが出てくるではないですか。それで、あ、これこれ、っていうんで、そこから先を考えなくなってしまったからではないでしょうか。大切なことは答えを出すのではなくて、その出てきたものをどう組み合わせるかとか、それをベースに自分はどういう考えを展開するか、というほうが大切なんですが、答えが出てきた段階で、「あ、これでいいや。」って終わってしまってるように思うんです。本当はそこからが必要なことなんですけどね。 それとなんでも
答えをすぐ出せ、っていうようなことが多くなりましたよね。よーく考えて、考えて、っていうのをバカにするというのか、さっさとしろよ、っていうようなことばかりで、、。
一生懸命考えているのに、そんなすぐに出る答えばかりではありません。なんだかスピードばかりに追い立てられて、、。そういうようなことで、よく考えなくなってきているのではないかなぁ、と謙介は思ったりするんですが、、。

Posted by: 謙介 | 13. 10. 04 at 오후 5:39

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