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13. 05. 15

空海の書(2)

中国人の書いた書と日本人の書いた書の違いについて
講演をしてくださった京国博の上席研究員の方も
やはり述べておいででしたが、
筆が決定的に違う、ということですね。
筆の毛の材質です。

まったくのでたらめで嘘っぱちなことわざに
弘法筆をえらばず、というのがあります。

空海は筆については非常にうるさくて
書体によってそれぞれ書く筆をえらんでいました。
また毛を指定して筆を作らせていた人です。

ですから筆をえらばず、などということは
あり得ない話です。

日本人はどちらかと言えば
柔らかい毛先を好みます。
毛の材質で言えば羊毛です。
それに対して中国は硬い毛を好みます。
と、書いたら、日本はひらがなだから
やわらかい毛なのですか? と聞く人が
いますが、それは全然違います。
ひらがなは硬い毛でないとダメです。

うーん。硬い、というのか、
つんつん撥ねるような毛です。
ひらがなにあるカーブ、っていうのは
力を溜めておいたその反発力で
びよよよよんと放物線を描く、書き方から
生まれます。 その反発力が出るような
硬めの毛で書かないと、単なる
なよなよした字に堕落してしまいます。

どうしたものなのでしょうねぇ。
日本の書道界、特に関○書芸院関連の先生は
羊毛の筆、と言われます。

羊毛の筆は非常に癖がありまして。
長所といえば、毛がちびにくい。
比較的長持ちします。

しかし毛がふにゃふにゃなので
書く人の技量がはっきりそこに出ます。
筆を垂直にして、穂先の焦点をたえず紙に
合わせるようにしておかないと鋭い線が
書けません。

初心者に書きやすいのはタヌキやイタチの毛です。
実は空海が作らせた筆もイタチの毛の筆です。

この動物の毛は、つんつんしてて、反発力が
ありますから、柔軟でいてしかも力強い線が
比較的難しくなく書けます。
ただ問題は非常に摩耗が速い。
いい筆でもすぐにちびてしまいます。

ご講演の後は、もちろん上に上がって
展覧会を見学しました。


空海の書は前にも言いましたように
お経の解説の草稿なわけで、
お経そのものではないのですが。
お経を書くときにはいくつかの決まりがあります。
1行の文字数は必ず17文字。
そうして全体の行数は26行。
これは必ずそう決まっています。

古いお経を見たときに、縦の罫線が入っているのを
ご覧になったことがありますかね。

Okyo

こんなの。
どうしてこの縦の線が入っているのかご存知ですか?

大昔、紙がまだなかったころは、木簡に字を書いて
いたわけです。その時代の木簡だった時の枠がそのまま
残って、ああいう縦の罫線になったのです。

ついでにいいますと、木簡は長方形に切った木の板です。
それを皮でつなぎ合わせたものが紙のない時代の本だった
ということです。

本を数える単位の「冊」は木簡が皮ひもで結わえられた形状
なのです。紙のない時代のお経の形です。

そのお経は大切なものですから決して地べたに置くような
ことはしませんでした。必ず台の上に置きました。
その状態が「典」ですね。 

これはお経が台の上に置かれた
形状です。 何より「経典」とかいう熟語がありますし、
今は少なくなりましたけれども、謙介くらいの年代の
女の人で「典子」と書いて(のりこ)と読む、という名前の人が
結構いました。

あ、(例によって脱線してしまいましたから話を、元に戻しませう。)


空海の書も改めて見ました。
作品をじーっと見てみましたが
やはり王羲之の影響というのか
王羲之の書法を空海はよく学んだのではないか
ということは思いました。
後、美術の教科書で見たような作品が
いくつも出陳されていて、、、。
雪舟とか、若冲とかのああ見たことある、という作品が
結構ありました。
改めて
京国博のお宝が、まとまってこちらに展示されたのだなぁ、という
ことがわかりました。


今回の展示直前にこの空海の書は修理に出していたのだそうです。
というのが今までは、作品の裏に裏打ちと言って別の紙を貼って
いたのです。(書の表装ではそういうことふつうにします。)
裏打ちを外してみて、何か裏に別の文字を空海が書いていないか
新発見がないか、と期待したのですが、それは残念ながら
なかったそうで、、。
裏は、空海が字を書くときに筆の穂先を整えた
あとがあっただけだったそうです。

紙の保存ということですが

ずっと前から資料の保存ということが
よく言われます。
最近アーカイブズという言葉を
あちこちで聞きますが,
大体がアーカイブズって資料の保管・保存
という意味がありますよね。

ああいう言葉をやはり身近で聞くようになってきたのは
そういう資料保存、ということを世間も注目するように
なってきた、ということかもしれません。

電子媒体での保存って言われるように
なりましたけれども、やっぱり紙の保存のほうが
はるかに長持ちするでしょう。

紙だと1200年は持ちます。
あ、ただこの場合洋紙は持ちが悪いですよ。
まぁそれでも100年くらいは大丈夫ですけど。


ただ、和紙については、正直ちょっと危惧しています。
江戸時代とかそれ以前に作られていた和紙と
今の和紙を比べるとはるかに今の和紙のほうが
品質が落ちているのです。 

江戸時代の上等の紙を今の技術で作ることは
できません。

科学の進歩は過去より未来ですが、
工芸の世界では、現在より過去のほうが
ずっと良かったものが結構あります。

いい紙が少なくなったねぇ、、。
そういう話を前に書道用品の専門店で店主の人としていて、、
謙介さん、紙を大量に買い込んだわけです。
とてもいい紙です。

でもはたして一生かかってあの紙を使い切ってしまえるのか、、。
あーどうしよう。

というふうなことを思い出しながら、1000年以上前の人の
書いたものを眺めていたのでした。


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おげいじゅつ」カテゴリの記事

Comments

母も十数本の筆を持っていました。
いろいろ使い分けていましたし、何やらこっていましたが、書とは縁のほど遠い私にはまったく分からなかった世界です(苦笑)。

市販のコピー用紙などは数年で赤茶けてしまい、ボロボロになりますね。
紙幣がそうですが、あれだけ人に触られ、機械を通され、高温低温、湿気にさらされても数年使えるといのはすごいです。
和紙そのものが無形文化財だと思いますよ。

謙介さん、高品質の和紙を大量に買い込んだとのこと。
1,000年以上残る何かに挑んでみてはいかがでしょうかo(^-^)o
他の人には真似できない技術・能力をお持ちですから、きっと生かせるところがあると思います。
郷土文化財や保存状態の悪い古書の写本とかいかがでしょう。
今は“たかが写本”かもしれませんが、最近の謙介さんの記事にありました“古事記”も写本しか残っていないようですので、いつかは“されど写本”になると思います。

Posted by: タウリ | 13. 05. 16 at 오후 12:26

---タウリさん
 四国は高知のいの町とか愛媛の西条に和紙を作っているところがあります。 洋紙のように木のチップを大量に釜で煮て、というふうな大規模なものでなくて、楮とかみつまたの木を取ってきて、釜で蒸して、それを叩いて、繊維を出して、、、と本当に手間のかかる工程です。いい和紙になると、1枚が1000円とかします。事情を知らない人は、高い、ってすぐに言うのですが、あれほどの工程があって、なおかつ紙の丈夫さ、とか考えたら、それくらいの値段はするなぁ、と思います。ですが、作品を書いていて、自分にしてはうまくいっている、と思って書いて、最後の最後に来て、あ、失敗した、となったときのあの気持ち。(笑) おまけに紙の値段は高いし、、もう泣きたくなります。 ちょうどパソコンで半日入力作業をしていて、突然パソコンがフリーズドしてしまって、保存もできなくなって、入力したデータがすべて消えてしまったときのあの言いようのない憤り感、というのか空しさに似ています。 
 写本ですか。前に京都の田舎で古文書の整理をしたことがあったのですが、その時に江戸時代のエッチな本が出てきました。「ほれほれかういうのがいいんだらう」「あ、あ、わっちわもう、、」とか。こういうのだったらちょっとやってみたいです。あ、でも、肝心の絵がかけません。

Posted by: 謙介 | 13. 05. 16 at 오후 1:06

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