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13. 01. 07

身体を使うということ

年末・年始、本当に字を書く機会が結構ありました。
仕事場で、何かとお世話になっている会社とか
諸機関宛てに出す年賀状が80枚。 
それとは別に自分自身が書く年賀状が160枚。

その他にも、のしぶくろとか正月用の箸袋、
年末年始の営業のお知らせの張り紙を書いてくれとか、、。
突然に言ってくる人がいて、そんなこんなで
毎年この時期には書く用事が飛躍的に増えます。


年賀状を書くときなのですが、
最初は、やはり下手なんです。
1枚書いては、あーあ、とか思うんですが
それが30枚くらい書いたあたりから
少しずつ、以前の勘が戻ってくるんです。

今年書いていてちょっとうれしかったのは
勘の戻り方が早かったのと、
戻ってから後も、どうしたものか
結構自分の思い通りにうまく書くことができたことです。

それが、気分に乗る、というのが案外難しいのです。
気分に乗りすぎてしまって
調子に乗った気分で書いてしまうと
今度は気分がいいものですから、字がどんどん大きくなりすぎて、
書きあげたものを見ると、余白の美しさなんてどこへやら、
ものすごく下品な字の配置になってしまっているのです。
これではダメなのです。

字って、単に書いてあるだけではいけません。
全体の紙の大きさと
字の大きさと、
それから余白の美しさと。

そういうのを計算して字の大きさを
割り出してきます。

それはペンで書く場合と、筆で書く場合とは違います。
(筆記具の線の太さが違うのですから当然です)
そういうことを紙を見て、ぱっと頭の中で計算して
大体の寸法を割り出して書いて行く。
字の大きさは住所の長短によっても変ります。
 
そういうのを頭の中でとっさに計算してハガキの寸法に合った
大きさの字を書いていくのがワープロソフトには簡単にできない
人間が字を書く、という技術なのだと思います。

それから、字を書くと、戻ってきたのは
字を書く勘だけではありませんでした。

今まで度忘れしてなかなか出てこなかった
字がすらすらと出てくるようになりました。

やはりワープロを打って自分で字を書かないと
確実に字を忘れてしまいますね。
うちの主治医も、たまに診断書を手書きしなければ
ならなくなったとき、字を忘れて困った、とよく言って
いました。

自分の手で書くことは前にも言ったように
実は全身運動なのです。 もし、字を指先だけ、とか
手先だけで書く、という人がいたら、おそらくそういう人は
ちょこちょこっとメモ程度はできても、長時間たくさんの
字は書けないか、そもそも字を書くのが苦手、っていう人かも
しれません。 

謙介、字を書くのが嫌だ、っていう人に会ったとき、
書く字はろくに見ないんですよ。
(というのか字は見なくてもいいのです。)

そのかわり書いている姿勢を見ます。そうしたら
そういう人って、大抵肩の辺に異常な力が入っていたり
身体がねじれていたり、
背中全体が緊張していたりします。
書くときの姿勢が全然楽そうじゃないんですよね。
あ、そりゃ、長時間楽に字なんて書けんわ、と思います。

それから後、字に対するコンプレックスを抱えている方も
います。 そういう人は、時間はかかるのですが
(相互の信頼関係を作って気持ちをほぐしていくまでにね。)
字を見る側との間に信頼関係ができて
ちょこちょこって直して欲しいところを言うと
あれま、とびっくりするするくらい整った字が
書けるようになります。

書く、ということは全身運動になりますし、
そのついでに脳も刺激するのかもしれません。

最近、アルツハイマー予防に字を書けばいい、
っていうことが言われるようになってきましたが
今回まとまった量のハガキを書いたおかげかどうか、
その効果を実感しました。
やはり身体を使って何かをする、というのは
人が生きて行くうえで必要なことなのだ
と改めて思いました。
便利さと引き換えに人間が生きて行くうえで
必要なものを喪っていくんじゃないか、という
気がしました。


      ×     ×     ×

お正月早々日本経済新聞に やれやれな記事がありましたよ。

おそらくこの記事を書いた人、
字を習ったことがない人だと思います。

どうしてかと言うと、記事の文章の中に

 「毛筆特有の「筆の割れ」や「かすれ」の再現が難しい点にある

と書いてあるからです。

筆で字を書いていて「筆先を割ったり」
「字をかすれたり」させてごらんなさい、
それはもう問題外でへたくそ ということです。 

もし、作品を書いていて、筆先が割れたり
字がかすれてしまった部分ができてしまったら
そこで筆を置いて、書いている紙を取り替えてしまって
最初から新しく作品の作り直しをしなければなりません。

少なくとも、筆先が割れたり、かすれているような
作品を平気で発表しているような人がいるならば、
それはちん、、丸出しで東京駅前に立つ
(え? 見たいの? )
こととなんら変わりないことなのです。

実際、俺が楷書を習った榊原先生は、
「パンツはいてへん! 」と、お清書作品の中に
そういう字を書いてきた人に注意していましたし
別の先生は一言「下品な字は出すな。」って
突っ返していましたから。


ですから、書道の作品において
かすれだの、筆の割れだのがあるのは
許されないことですし、少なくとも、字を練習してきた人間は、
そうならないように、もしくは
そうしたものを作品として絶対に出さないように
営々と努力してきたのですが、
この記事を書いた記者さんは、そうした書を習ってきた
人間全員の努力をすべて「ないものにしてしまった」のです。
加えてこのフォントを作っている人も、書の勉強をして
きた人ではなくて、デザインとかコンピュータ関連の人
だったのでしょう。そういうことを知らないから
平気でそんなことを言うのでしょう。


やれやれ。
もうちょっと毛筆の字のことを勉強してからにしてくれよん。

まぁそういうわけで、かすれだの割れだのと言っている
あたりで難しい、というのであれば、
毛筆ソフトが人間に近づくのは、まだちょっと難しいなぁ、
と思った正月の記事なのでした。


(今日聴いた音楽 高気圧ガール 歌 山下達郎
 2012 アルバム Opus から もう毎日寒いので
 真夏の感じの歌でちょっとでも寒さを、、しのげたら、、
 でもやっぱりさぶい)

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おもうこと」カテゴリの記事

Comments

謙介さん、こんばんは。
実は謙介さんご指摘の日経の記事、ブックマークしてたんです。
と言うのも、僕の会社は印刷会社で、年末になると年賀状の仕事がものすごいんですよ。
で、とにかく、筆文字のようにきれいなフォントで頼む、とか言われるんだけれど、僕は字のことはよくわからないし、かといってフォントで有名なモリサワの字もしっくり来ないし。
だったら、下手でも丁寧に手書きで書けばいいのに、と思っちゃうんですけどね。
ま、仕事だから適当なフォントで納得はさせちゃうんですけど、毎年毎年頭を抱える仕事です。

Posted by: takenii | 13. 01. 07 at 오후 10:56

しかし、本当に字を書かなくなりました…。
字の美しさ上手さ以前に、字を忘れています。
下書きしまくりです。
もし、また働き始めたら、スケジュールくらい、手書きにしようかなぁ。
全部スマホに入れたりしてるし…。

やれやれな記事、僕も見ました。
僕もすっかり騙されていました。
なるほど、そもそもそんなフォントを目指すなってことですね。
確かに、文字を知らない人なのでしょう。
やけに納得です…。

Posted by: まさぜっと | 13. 01. 07 at 오후 11:41

---takeniiさん
そうだったんですか。

うーん。自分でもいろいろと毛筆のフォント見てみたんですが、、やはりこれは、っていうようなものはなかったです。
なかなか難しいですね。 特に欧米のアルファベットなんかと違って、漢字は文字一字一字に表情がありますしね。 手書きですともっと言ってしまうと同じ漢字でも、前後に来る字によって、大きさを変えたりすることもあるんですが、、フォント、となってしまうと、それができないので非常に難しいですし、、。 言ってくるほうだって、そんなことくらい簡単にできるやろ、って簡単に言ってくるんじゃないか、って思うんですけどね、、。ご事態、お察しいたします。 

Posted by: 謙介 | 13. 01. 07 at 오후 11:50

---まさぜっとさん
去年、東京に行った時に、伊東○とか○善(伏字になっていませんね。笑)に行ったのですが、やはりスケジュール帳とか日誌・手帳は結構バリエーション多く置いてありました。ということはやはり、必要で買っていく人間が少なからずいる、ということだろうな、と思ったのです。
スケジュール管理、まさぜっとさんのお噺にもあるように今やスマホとかタブレット端末でもできますが、その反面、いまだに手書きの人も多いのだ、と分かりました。書く習慣もぜひ残してください。書いた字を見て、後からあの時はあわてていたから字が斜めになっている、とかこの時は、こうだった、って思い出すことだってできますからね。フォントの羅列だと無理ですが、手書きだとそういうことだって思い出せます。そうして案外そんなことから思い出す思い出もありますよ。ぜひぜひ。

Posted by: 謙介 | 13. 01. 08 at 오전 12:04

謙介さん今年もよろしくお願いいたします。

毎年恒例の年末年始の忙しさでなかなかこちらに来れませんでした。

この話題本当に耳が痛いです。
何が嫌いと言って字を書くのが嫌いです。
だって下手なんだもの。
おばさまの私がワードで文章をつくれるのもひとえに字が下手だから。

還暦あたりに60の手習いで絵手紙でも習いに行こうと企んではいるのですが。

個人的には妙に絵文字の多いメールにうんざりしています。
時代は変わったんですね。

罪なのはその問題についてそんなに知らないのに何かの文を書いたり、発言する人々と、それを信じてまわりに強要する人たちでしょう。


Posted by: ラジオガール | 13. 01. 08 at 오전 8:43

年賀状240枚以上にポスター書きまで大変でしたね。
一度「字を書ける方」と認識されてしまうと、事ある毎に都合良く依頼されてしまいます。
僕の職場にもそういう方が以前いました(苦笑)。
忙しいからと断ったりしていたようですが、「字汚いからお願い」と言われると受けざるを得なかったようです。
僕が書く年賀状は40枚ぐらいですから、謙介さんが勘を取り戻す頃には書き終わってしまう枚数です。
昨年末はちょっと手抜きして、使い古した筆ペンを使ったため、さらに崩れた字になってしまいました。
やはり年賀状のときには新品を用意したほうが良いと反省。

フォントの記事、僕も読みました。
筆字フォントはかなりイイ線いっているなと感じていたのですが、記事を読んでから僕の毛筆に対する認識が低かったのだと思っていました。
確か、母も筆先が割れたり掠れたりするのは良くないと言っていました。
アレが綺麗と言うのかしら?と記事を読んで思いました。
いろいろな方から毎年いただいて思うのですが、裏面も宛名面も印刷のみというのはかなり殺風景です。
僕も裏面は70%印刷ですが、二言三言のコメントを必ず添えるようにしています。
宛名も手書きにしています。

毛筆フォントだから受け取った側が良い印象を受けるのかと言いますと僕自身はあまりそう感じることはなく、謙介さんが送って下さったような自筆のほうが圧倒的に好印象ですし、受け取ったときの嬉しさが何倍にもなりますよ。
量にもよると思いますが、年に一度の挨拶ぐらいはPC任せではなく、自分自身で行うのが本来の在り方ではないかと思います。

Posted by: タウリ | 13. 01. 08 at 오전 9:17

---ラジオガールさん
 うーん。ラジオガールさんの文字、拝見していないので、そんなにおっしゃるように下手かどうかわかんないのですが、、。中には自己要求水準が高い方もおいでで、謙介が見て、いいなぁ、と思うのに、私は下手、っておっしゃる方もおいでですし、、。
 それでは字が整って見えるポイントを2つご紹介します。縦書きの場合は文字を縦長に書いてください。その縦長の時は、文字の下半分を長めに書きます。
 横書きの場合は、それぞれの字の下の端を揃えましょう。 そうすると安定して見えます。 結果、一続きの文字列が整って見えます。 それだけでもずいぶん見た目にさっぱりします。癖字だから、っておっしゃる方もおいでですが、癖字もいいんですよ。それがその人の個性だと思います。
一度お試しください。

Posted by: 謙介 | 13. 01. 08 at 오후 12:09

---タウリさん
 おかあさまもやはりそういうことをおっしゃっておいでだったのですね。やはり、筆が割れていたり、かすれたりする箇所があるのは、はしたない、ということだと思います。
 当節のような何かと忙しい時代ですから、年賀状の印刷もパソコンで作った原版と住所録から、2クリックすれば、裏の印刷も、表の宛名差出人の印刷も1枚できちゃうでしょう。
 でも、それだけでは、、ちょっと悲しいですよね。プリンターが、ぎーこぎーこと動いている間は、他のことをしていてもいいわけですし、、。
 手書きだと、1枚1枚、相手の気持ちを考えて、どんな文章がいいかなぁ、と、考えたりします。この時間はその相手に向き合っている時間ですよね。(それが面倒だからプリンター、という人もいますが。笑)相手のことを考える、って、やっぱり大切なことじゃないか、と思います。そこから自分以外の人間に対する想像力とか、相手のことをおもんばかる気持ち、っていうのもできてくる、と思うのですが、、。
 最近、他人に対する想像力が無くなってきた、ということを聞きます。自分以外の他者に対する気持ちとか想像力、っていうのは、以前はこういう作業の中からできていたと思うのです。だからタウリさんのおっしゃるように、年賀状くらいは自分の言葉を添えて、って俺も思います。

Posted by: 謙介 | 13. 01. 08 at 오후 12:27

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