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13. 01. 22

ある意味画期的な写真集

今日のおススメ本は写真集です。
鉄道の写真集です。

と、言っても、ちょっと普通の鉄道の写真集とは
違います。

え? 

そりゃ、謙介が紹介するんだから
まともな写真集ではないだろうよ、って?

ふふふ。

これです。

Kotoden1

実は謙介の実家の街を走っている地方私鉄の写真集
なんですけどね。

ことでん 仏生山工場 という本です。
仏生山ですが、「ぶっしょうざん」と読みます。
ここには 法然寺というお寺があります。
実はこの仏生山というのは、この法然寺の山号
なんですね。この法然寺は、文字通り浄土宗の開祖の
法然さんと関係があります。
法然さんは晩年、讃岐に配流になったのですが、
その時に、居た寺がここ、なのです。

謙介は法然、というより、源空、と呼ぶほうが
しっくりくるんですけどね。源空教団の成立史に
ついて、謙介の恩師が本を書いたのですが、
謙介、その編集をずっとしたんです。
そういうこともあって、法然、というより
源空のほうがしっくりきます。 まぁ世間的には
法然のほうが通りもよいのですが。
その法然上人のいらっしゃったという
そういう由緒のある寺ですし、江戸時代は
高松藩の松平家の墓所もここに造営されました。
歴代の藩主も参詣していた、格式も高いお寺です。
以前は秋になるとここで菊人形をしたりしていました。
その頃、菊人形を見にいったことがあります。

あ、そうそう。女優というのかモデルの藤澤絵○さんの
ご実家の着物屋さんは、この仏生山工場からちょっと
西に行ったところにあるんですけどね。

と、その仏生山にことでんの電車の車両工場があって
ここで電車の定期検査とか修理を行っているのです。
そうしてその仏生山工場の写真集がこの本、
というわけなんです。

この本がほかの鉄道関係の本と大きく異なっているのは
普通鉄道の本といえば、その鉄道会社の所有車輌の紹介とか
その鉄道の車輌が走っているところを写真に撮った、
という写真集だと思うんです。

しかし、この写真集には、走っている電車の写真は1枚もありません。
というのか、電車の写真ではないのです。
電車の修理工場の写真集なのです。

Kotoden2

おそらく今まで何冊の鉄道関係の写真集が出たのか、は
知りませんけど、「鉄道工場」に焦点を当てた写真集、というのは
初めての試みなのではないでしょうか。

そういうことで「ある意味非常に画期的な鉄道の写真集」では
ないか、と思うのです。

しかも、車輌工場と言いながら、メインはそこで働く「人」が
テーマです。

電車に乗るとき、謙介の意識にあるのは運転手の人と
車掌さんくらいのものです。後は、駅員さんとか。

都会の新交通システムなんかになると、無人運転の
ものさえあります。人の存在がどんどんなくなっている、
とさえ感じます。

しかし、電車が故障もなく、ダイヤどおりに走るためには
当然、それを裏で支えている人の存在があるわけですよね。
こうした工場で電車の安全運行を目だたないところで支えてくださって、こそ
電車は走ることができます。

ましてこういう地方の中小私鉄に来る電車というのは
元々都会で走っていて、耐用年数がきた電車です。

普通電車の寿命は20年くらいと言われていますが、
その20年経った電車を中古で買って、さらに細かくメンテナンスをしながら
さらに何十年か使用する。 これが大抵の中小私鉄です。

この会社も、京王とか京急、名古屋市交通局、阪神から電車を買って
走らせています。(阪神のお古はもう無くなりましたけど。)

古い車輌ですから余計にメンテナンスが必要です。
そうした車輌の修理、点検を引き受けている、スタッフと車輌の
写真集、なのです。

Kotoden3

車輌工場ですから、さすがに女性はいなくて
全部男。

え? だから買ったのか?

この写真に出てくる中に確かにイケメンのような人は
居ません。(オマエが言うな、っていう突っ込みはなしでね。)

でも、現場でたたき上げてこられた人の顔は、
そんないまどきすでに手垢のつきかけた、
いけたの、いけてないだの、というような表現など
軽く超越して、さらにその上を行くような
味のある顔をしているなぁ、と思いました。
職人の顔つきです。
たるい顔をした自分は、 
ああ、自分もこういう顔になりたい、とあこがれてしまいます。

会社の危機にも負けずに30年間ずっと働いてきた人。
京急の電車が好きで好きで、入社して車輌の点検をするようになった
3年目の人。 そういうそれぞれの人の人生さえも
その写真の表情の中から少し垣間見ることができます。


実はこの鉄道会社、ひところ、ものすごく批判されました。
正直言って、乗務員の方々の愛想が悪かったのです。

サービスが悪い。客を一体なんだと思っているのか。
そういう批判がしょっちゅうでしたし、この会社の併営していた
バスを日常的に利用していた自分も、運転は荒いし、
運転手さんの言い方だってすごくきついし、、で、正直あまりいい
感情は持っていませんでした。 

そういうこともあったし市内の中心部にこの電鉄会社が作った
デパートがこけてしまい
この電鉄会社全体もそのためにこけてしまったのです。

それまでこの会社の社長をしていた人は責任を取って
辞めました。(本人は辞めたくなさそうでしたが、周囲が
責任を追及して無理に辞めさせた。)

後を任されたのが、自動車のディーラー会社の社長さんでした。
というのか、謙介が乗っている車の会社の社長さんだったので
この人を知っていたりします。
この方は地元では経営の手腕のある方として知られていました。


その人が社長になってから、この会社、何が今までダメだったのか
乗客からアンケートを取ったり、今までできていなかった点、などの
問題点を洗い出して分析をしました。

結果、やはり「人を大切にした経営をしていなかった」
ということに気づいたそうです。
乗ってくださる人がいて、それを走らせることができる。
そうして改善計画を立てて、この会社は新生の電鉄会社として
スタートしました。

そうして、一昨年この会社は創業100年を迎えたのです。

かつてこの会社の60周年の時は、60年のあゆみ、という
どこの鉄道会社も出しているような、会社の回顧録のような
出版物を出したのですが、、、。

今の社長さんはそういうありきたりの出版物を出すのではなくて
うちの会社を支えているのは
人間の力なのだ、電車の運行の下でこういう人間が働いているんだ
そこを見てほしい、という主張の元に、この写真集を出すことに
なったのだそうです。
元、自動車の技術屋さんらしい言葉だなぁ、とおもいました。

最後に社長さんの「ごあいさつ」が載っていますが
それを読んでみてずーっと最初から写真を見てきて、
ああ、だから「工場で働く人」がとらえられた写真集なのだ、
と納得をしたのでした。

謙介、ここの電車にたまに乗ります。
ですが、これからは、この人たちが修理点検した電車なのだ、と
思うことができるなぁ、と思いました。

人間、食べ物だってそうですよね。作り手の顔が見えたら
安心できる、って、あるではありませんか。
あの人があの畑で作った大根、と分かれば、どれだけ安心か。
それと同じように
「あ、この人がパンタグラフの修理をしていて、この人がモーターの
点検をしていて、、。」ということが分かると、
なんだか今までとは違った気持ちで電車に乗れるように思います。

やはり電車に乗ったときの安心が生まれたような気がします。

そうして今までよりももっとことでんの電車に乗ってみたい、
と思ったのでした。
(結局、それがこの会社の深謀だったのかもしれませんね。笑)

(今日聴いた音楽 Fun and Games 演奏 チャック・マンジョーネ
 1990年盤)


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Comments

この本に着目した謙介さんの視点は、後任社長さんと同じようなものであったからだと思いますので、書いていらっしゃるように「人を大切にする」ということを常に心のどこかに携えていらっしゃるのだと思います。
とても素晴らしいです!!!
僕にとっては課題です。
人に厳しく自分に甘い、ダメなタイプなのですよ(^_^;)。
職場でも昨年度からの課題が「人を大切にする」ということになっています。
初の職員旅行が昨年開催されましたが、その一環でありました。
始めたばかりで難しいことが多いのですが、短期的なものではないので、いろいろ探りながら続けていこうということになっています。

鉄道は安全に運行されて当然、という意識がどこかにあると思います。
でも、そういった意識が出来上がったのは、技術屋さんという部類の職人達が積み上げた実績なのですよね。
華やかな部分の出来が良ければ良いほど、裏方や支えを行っている方々の努力が大きく深いのだと最近は少しずつ感じるようになってきました。

働くオトコ達、ということで「ライフカード」や「消防士」、「海猿」とかの写真集も良いと思いますが……。
スミマセン、、、(+_+;)。

Posted by: タウリ | 13. 01. 23 at 오전 8:19

---タウリさん
 ライフガードや消防士、海猿の方々、本当、かっこいいですね。なぜにかっこいいのか、と考えたことがありますが、やはり使命感というものがあってその厳しさが身体の中を一本貫通していて、そうしたものが身体作りにもあらわれているからではないか、と考えたことがありました。
 この写真集に出てくるおにいさん、おじさんたちというのは、仕事が終わって家に帰ったら、普通のおっちゃんになると思います。でも、青の作業着を着て、電車の車体と格闘しているこの写真の上でのみなさんは、本当にかっこいい。一つのことをこつこつとまじめに取り組んでこられた、その意識が、この写真を通じてよくにじみ出ているように思いました。 こうした人たちによって、あの会社の電車は走っているのだ、と、改めて分かった次第です。
 実家の街の電鉄会社の写真集なのですが、謙介の仕事とは全く違うので、知っているはずの場所でありながら、景色の見え方も全然違うんですよね。ああ、やっぱり世間って、広いなぁ、と、この本の写真を見てそう思いました。
 職場でのさまざまな改革、それぞれ人の考え方も違いますし、変えようと思ったら、いろいろと言ったり反対する人も出てきて、決して思うようにはなかなかいかない部分もきっとありますよね。それでも、少しずつ、変えていかれようとするお気持ち、すごいなぁ、と思いました。息長く、どうぞ取り組んでください。

Posted by: 謙介 | 13. 01. 23 at 오전 10:18

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