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12. 11. 09

こんなん

このあいだ五島美術館のところでかな書道の名品の話を
しました。

高野切、寸松庵色紙、継色紙、
本当に五島美術館でそうした作品の
現物の数々を見ることができたのは
何物にもかえがたいことでした。

五島美術館、ここ2年ほどずっと改装のため休館していたので
久しぶり、ということもありましたし、美術館側も
展示品にこれでもかあぁぁぁ、と館蔵の逸品を一挙に並べて
展示していて、いやあ、気合の入った展示だなぁ、と
感じました。

それはそれとして
ですが、正直なところ、かなを書道で書く、
ということについて話を聞いていると、
誤解をしている人が結構いることに気づきます。

ひらがな、というのは、漢字を崩して
次第に作られていったものですから、かなの字、
全体がくにゃくにゃしていて柔らかいものだ、と
思いこんでいる人がすごく多いのです。

ひらがには確かに漢字にはないカーブがありは
します。ですが、漢字にある折れ、とか
曲がりだってちゃんとあります。漢字にはない
カーブと、そうした元の漢字の折れ、とか曲がり
両方がかなにはあるのです。
かなの字を単に「くにゃくにゃした続け文字」としか
認識していないのであれば、それは誤解です。


こないだも引用した寸松庵色紙です。

Sunshoan

読んでみます。

   としゆ支(き)

あ支(き)者(は)支(き)の花さ支(き)

尓(に)介(け)利(り) 堂(た)可(か)佐(さ)この

を能(の)へ尓(に)い万(ま)や 志(し)

可(か)者(は)なくらん

 あきはぎの はなさきにけり たかさごの
         おのへにいまや しかはなくらん


と書いてあります。

ちょっと字を分析してみましょうか。
としゆき、という作者は別として
歌の1行目最初の字は「あ」ですが、この1画目
最初は軽く入って、筆の弾力を使うように途中から
太くなっていますよね。そうして1画目の最後は
またその真ん中で使った筆の反発力をそのまま
生かして、筆を持ち上げて軽く抜いています。
その次の縦画も下まで一気に下がると
一旦そこで筆は止まって、今度はその筆の反発力
を使って方向転換しています。そのほか
花という漢字の人偏の部分、堂の最後の画
全部画が方向転換するときは、一旦停まって
その筆の反発力をそのまま逆の方向に
そのまま使って書いています。

文字の一画一画を詳細に分析していくと
筆に込める力の強弱による筆の上下動が
頻繁に使われています。

画の折れの箇所では一旦筆を押さえて
筆の穂先にたわみを作ります。
筆の穂先の反発力が自然に生まれます。
そのたわみからの反発力を利用して画の方向転換を
行っているわけです。 

スポーツでも楽器の演奏でも書でもそうですが
下手な人間って、どこもかしこも力が入っているように思います。
ですが上手な人は、フォームでも試合運びでも
余分な力は抜いて、本当に力が必要な部分だけに
集中して力を込める、ということをしていると思うのです。

力の入れ方には緩急をつけて
全部同じような力の入れ方には
なっていないはずです。
謙介、運動なんて全然しませんが(笑) 字を書いていたら
それくらいのことは分かります。
運動だって書だって身体全体を使う、
ということには変わりありませんから。

この寸松庵色紙、
そうした緩急のついた筆の動きが
よく出ています。

そして線自体も紙に彫りこむような鋭い線です。
決してくにゃくにゃとした柔らかい一方だけの文字
ではありません。
線のすばらしさ、と、字の配置。
最後の行に行くほど、行が右のほうへ傾いています。
右手で書いていますから、これも自然な動きです。
空間処理、筆の墨の濃淡、本当にため息が出ます。


謙介、かなを習い始めた最初の段階で高野切を習いました。
五島美術館には今回、高野切の第一種と
第二種が展示されていました。
高野切は、元は100メートルくらいあった
和歌の巻物です。高野山が持っていたのですが
お金に困って、ちょっとずつ切り売りをしました。

なので高野切、というわけです。
この高野切は、筆跡から第一種から第三種の
三人の筆跡が分かっています。

謙介、第一種も第二種も第三種も全部それぞれ
勉強しましたが、やはり第二種はそれこそなんだか
くにゃくにゃしすぎで、ちょっと好みにあいません(笑)でした。


やはり一番練習をしたのは高野切と寸松庵色紙
でしたねぇ。まぁご指導を受けた先生が
その二つの作品をことに好きだった、ということも
あるかもしれません。

大学を卒業して、就職してから
別の先生にかなを習いました。

その先生に習った期間がやはり長かったせいか
自分自身の書風ががらっと変わってしまいました。

それまでは、書く速度も遅くて、割とゆっくりゆっくり書いて
いっていたのが、縦の直線を主体にした
きっぱりとした字体へと大きく変化しました。

とはいえ、どんな字を書いているのか


ということで、こんなん書いてます。

Baiko

表装して額なんかに入れたら、上手そうに見えますね。(笑)


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Comments

 書の方は,素養がないのでなんとも言えないんですが,料紙にはすばらしい出来映えのものがたくさんありますねえ。
 繊細に散らされた野毛や,墨流しで染めたものとか・・・墨跡そのものよりも目が行ってしまったり(冷汗)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 12. 11. 15 at 오후 9:06

---Ikuno Hiroshiさん
さすが! ですね。料紙に目が行かれるなんて。 今も書道用品店に行くといろいろな紙を売ってはいますが、ああした昔の紙のようないいものが今ではなかなか手に入らなくなりつつあります。買ってもすぐに使えないで、しばらく寝かせておかないといけません。加えてそのあいだに紙に風邪をひかせたら(紙の変質が起こることをそういいます)もうだめです。なので、いい紙については、保存状態には本当に気を配っていたものです。そういう紙が今ではなかなか手に入らなくて、、これも本格は疎んじられて、なんでも簡便に済ませる、という世の中の流れなのかなぁ、と思ったりします。

Posted by: 謙介 | 12. 11. 15 at 오후 11:13

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