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12. 09. 20

奈良へ(その7)

古墳を見学して、まだお昼までにちょっと時間があったので
今度は橘寺に行くことにします。

もう明日香村なんて右を見ても左を見ても
見るべきものがたくさんありすぎて、
却って取捨選択に困るのです。
橘寺に行く前にコンビニがありましたよーん。


711


明日香村の建物すべては瓦葺でなければいけない、
という決まりがあって、普通の鉄筋コンクリートの四角な
ビル建築というものはほとんどありません。
(皮肉なことにコンクリートの箱型建築は
明日香村役場だったりしますが、、)
南都銀行もわざと古い家を真似たつくりでしたし、、
コンビニも上のようにしないといけないのでしょう。

車でちょっと東にいって小高い岡が見えたところが
橘寺です。
お寺の前に車を置きます。
ヤマトタケルの国思歌の中に「たたなづく青垣」
と出てきますが、本当にその通りの景色ですね。


Tatanaduku


ここが聖徳太子のご誕生の地といわれています。

Tachibanatera

また大きくなって後もこの橘寺で聖徳太子が
何度となく仏法を説いた、と記録にあります。


ここには二面石という古い石の彫刻があります。
片方が善人の顔、

Nimenn2


片方が悪人の顔。

Nimenn1


人の持つ心の内面をあらわした、とあります。
善人と悪人。
時々「本当の自分を探したい」という人がいるのですが
あれが俺、よくわかんないんです。
そうしたら目の前にいるあなたは一体何なのですか?
何か人と約束したときに、あれは本当の自分ではなかった、とか
言うのですか?
何か本当の自分、って、言っているのは
自分の中のイメージどおりの自分を探しているだけなんじゃ
ないか、って思います。

でもね、そんな自分のイメージどおりの自分なんて
探してもなぁ、と思います。
ちょっと考えてみてくださいね。
謙介のイメージだって、相手によるでしょ?
○○さんが持つ謙介のイメージと
××さんの持つ謙介のイメージはまた全然違います。
人によって謙介の印象だって全然違うのです。
人間なんて最初から多重人格なんだ、って
思います。 場面場面によっていろいろな考えを
するわけでしょ? 時には理屈に合わない
考え方だってします。 人間ってそんなものでは
ないですか? 
本当の自分を探す、たって、どの自分だって
本当の自分だと思う。
自分がそうしよう、って思ってやったんだから。
人間にはいろいろな面がある。
ウソツキな自分だってあるし、
怠けてばかりの自分だってあるし、
仕事したくないなぁ、って言ってるのも自分だし、、。
かと言って、やっぱりまじめに仕事をしなきゃなぁ、と
前向きに反省しているのだって自分だし、、。

人間っていろいろな側面があって
だから人間なんだ、って思います。
決まった面とか、自分のイメージしているような
自分しかなかったら、俺はそっちのほうが
よっぽど怖いし、そんなのおもしろくない
と思いますけどねぇ。

第一に、文学なんてそういう人間にはいろいろな
面がありますよ、ということを知らせるために
あるようなものですからね、、。

橘寺を見学したらお昼になりました。
再び石舞台の近くまで戻ってきました。
地元の婦人会の人が作っている
産直市の上にできたレストランでお昼にしました。
これが古代米御膳、というお昼の定食で
値段のことをあからさまに言うのもいかがか、とは
思いますが、これで1050円です。 おかずの品数も
多いですし、野菜がいろいろな種類、たっぷりと
添えられていて、本当にいい定食だと思います。

Teishoku


おなかがいっぱいになったところで、
今度は次のところに行きます。
どこに行くかと申しますと
昨日行けなかった長谷寺です。
お昼しっかり食べておいてよかったのです。
昨日も太安万侶さんのお墓で登山を(笑)
しましたが、今日も今日とて
今から登山をしなければなりません。


長谷寺はもう言うまでもなく古くから
さまざまな人の信仰を集めてきた由緒の
あるお寺です。「はせのくわんのん」といえば
源氏物語、枕草子、更級日記、、
本当にいろいろな古典の中に出てきますよね。

ですが、この長谷寺のある「初瀬」という場所で言えば
万葉集に 「隠国の初瀬小国(こもりくのはつせをぐに)」
と出てきます。

それがこんな歌なんですけどね。

  こもりくの 泊瀬(はつせ)の国に 
  さよばひに(左結婚丹) 我(わ)が来(きた)れば
  たな曇り 雪は降り来(く)  さ曇り 雨は降り来(く)
  野つ鳥 雉(きぎし)は響(とよ)む   
  家つ鳥 鶏(かけ)も鳴く
  さ夜は明け この夜は明けぬ   
  入りてかつ寝む この戸開かせ 」
                   巻13 3310番歌 作者未詳

( 山々の奥深いこの初瀬の国に 妻どいにやってくると
 急に曇って雪が降ってくるし さらに雨も降ってきた。
 野の鳥、雉は鳴き騒ぎ  家の鳥、鶏も鳴き立てる。
 夜は白みはじめ とうとう夜が明けてしまった。
 だけど中に入って寝るだけは寝よう。 
 さぁ、戸を開けてくださいな )


こもりく、は初瀬にかかる枕詞です。
初瀬(奈良桜井市)は古来特別な聖地とされ、
国とよばれていました。
遠方から妻問いに来た男が途中悪天気に遭遇し、
雪を避け、雨がやむのを
待っているうちに空が白みはじめたのです。

妻問いは月が出ている夜に訪れ、
明け方の暗いうちに帰るというのが当時の暗黙のルール。
男はそのルールに反して強引に開けてくれと言っています。
対して女は家の中から応えます。


  こもりくの 泊瀬小国(はつせをぐに) よばひせす 
  我が天皇(すめろき)よ
  奥床に母は寐寝(いね)たり 
  外床(とどこ)に父は寐寝(いね)たり
  起き立たば 母知りぬべし  
  出(い)でて行(ゆ)かば 父知りぬべし
  ぬばたまの 夜は明けゆきぬ 
  ここだくも 思ふごとならぬ 隠(こも)り妻かも 
                    巻13 3312番歌 作者未詳

 山深いこの初瀬の国に 妻どいされる 天皇(すめろぎ)よ
 母は奥の床に寝ていますし 父は入口の床に寝ています
 体を起こしたら 母が気づいてしまうでしょう
 出ていったら 父が気づくでしょう
 そのように躊躇う(ためらう)うちに夜が明けてきました
 なんとまぁ こんなにも思うにまかせぬ隠り妻であること。
 この私は )

と、やんわりと求婚を断っています。 が、それはあくまで
最初だからであって、1度は断わるというのが作法なのです。
決して本意ではありません。その証拠が次の3313番の歌です。

 
  川の瀬の 石踏み渡り ぬばたまの
  黒馬来る夜は 常にあらぬかも  
             巻13 3313番歌 作者未詳

  黒馬に乗り、川の瀬の石を踏み渡って
  お出でになる夜は
  毎晩あって欲しいものです

初瀬という場所は、こういうひそやかな恋の交歓
あった場所、というイメージが謙介の中にはあります。
そうそう万葉集巻頭の歌、これは雄略天皇の歌、と
いうことにはなっておりますが、、。

  籠(こ)もよ み籠(こ)持ち 掘串(ふくし)もよ み掘串(ぶくし)持ち
  この岡に 菜摘ます子 家(いへ)告(の)らせ 名(な)告(の)らさね
  そらみつ 大和の国は おしなべて 我れこそ居(を)れ
  しきなべて 我れこそ居れ  我れこそは 告らめ 家をも名をも
                      巻1-1 雄略天皇

早春のある晴れた日に、初瀬の丘で数人の乙女が
竹籠と竹箆(へら)を持って若菜を摘んでいます。
おりしもそこに雄略さんが通りかかります。
たぶん雄略さんの好みの女の人だったのでしょうね。
雄略はお名前は? と聞くのです。 お名前は、というのは
重い意味があって、これはナンパ求婚を意味します。

 あなたが答えてくれないなら私の方から名告りましょう。
 私はこの大和の国一円を治めている雄略というものです。
 さぁ、私の身分も名前も名告りましたよ。
 今度はあなたが答える番ですよ。

という歌ですね。
おそらく古事記の中に入ったヤマトタケルの伝承歌と同様に
元々この大和のどこかで歌われていた民謡が、歌の内容が
おめでたい子孫繁栄と農作物の豊かな稔りを予祝した内容の
歌でしたから万葉編纂の時期までに天皇の歌というふうに
変化をして、その内容のおめでたさから巻頭の歌に
なったのではないか、と思います。


これもこの初瀬で歌われた歌です。

初瀬というと、謙介の場合は、源氏物語よりやはり
どうしても初瀬小国のほうに行ってしまいますね。

万葉集から2012年に話を戻します。
門前町の中にあるコインパーキングに
車を置きました。ちょっと長谷寺の入り口から
離れていたので、料金もやや安めの1回500円です。
これが長谷寺の入り口に近くなるにつれて
700円というふうにお値段も上がっていくわけです。

さっきも言いましたようにこのお寺は
古い伝統と人たちの信仰に支えられてきたお寺ですから
門前の商店街があります。
昨日の室生寺でもあっちこっちの店で草もちを
売っていましたが、ここも草もちを売っている
店がたくさんありました。


ただまぁ今の時期、
ボタンの時期でもなく、紅葉の時期でもないし
夏休みも終わってしまった、
というちょっと中途半端な時期なために
日曜でしたが観光客は少なめでした。

さて、長谷寺の一番下の仁王門のところに着きました。

Hasetera1

今日はここで一旦措くことにいたします。


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Comments

奈良の旅行記続いていますね。橘寺も懐かしいです。定食盛りだくさんで良いですね。次はいよいよ長谷寺ですね~!

Posted by: ともぞう | 12. 09. 20 at 오후 10:45

---ともぞうさん
えーっと最初、適当に端折ります、って言っていたのですが、書き始めたら、あれもこれもになってしまって、、まだもうちょっと続きそうです。どうぞ我慢して(笑)読んでやってください。よろしくお願いします。

Posted by: 謙介 | 12. 09. 20 at 오후 11:06

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