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12. 02. 06

遺作展

謙介がかつてかな書道を習った先生が
昨年亡くなったのですが
その先生と他の二人の先生の合同の展覧会が
県立美術館ではじまったので土曜日に行ってきました。

入り口のピロティのところに
弟子たちから各先生への
お祝いの生花が飾ってあったのですが
俺の先生は昨年亡くなったので、
お花はありませんでした。

これが生きている、亡くなった、という違いなんだな、と
改めて気付かされました。

先生に習った期間は10年ほどでした。
京都からこちらにきた時、折角習ったかな書道の
技術を錆びさせてしまうのも、、と思って
こちらで先生を探していたのですが
たまたまオフクロの知り合いだった
こともあって、その先生に師事することに
なりました。
ところがです。
先生の稽古場に行って、俺は「あ!」と
あわててしまったのです。
肝心なことの詰めができていなかった、と
気づきました。

俺もうっかりしていたのですが、
かな書道という「くくり」だけで
先生を探していたのですが、
考えようによっては一番大切な「書風」ということを
詰めていなかったのです。

その先生の線は「かな」にしては
非常に伸びやかで、また筆の当たりも厳しい
(と言っても専門以外の人間が聞いたら、なんじゃそれは
というようなものでしょうが。)字だったのです。
先生は女性なのですが、非常に男らしい大胆な筆致のかなの
作品をお書きでした。
謙介は高野切第1種、とか寸松庵色紙でかなを勉強してきたので
ちょっと線のニュアンスが違うのです。
あ、困った、と正直思いました。
どれくらい違うかと言えば、
陸上の指導者を探している、
で、先生がいた。きいたら砲丸投げだった。
ボクは走り幅跳びなんだけど、、。
というくらいの違いすら正直ありました。

Michikosan1

出展図録集から。(字がさっぱりわかりませんねぇ、、。笑)


Michikosan2


下の色紙を散らした屏風仕立ての作品、俺の好きな作品でした。

文字では男の書く字と女の書く字では、はっきり違いが
出ます。 男はどうしても男の字になってしまうし
女は女の人の字です。 
書いた字にはきっちり性別が出ます。
IKKOさんの字なんてどう見たって典型的な男の字です。


書風を詰めていなかったことについて
あ、まずい!と思ったし、その書風について
先生ときちんと話をしておかないと後で本当に
困ったことになります。
習う側は書風が違うと、どうしても無理が出ます。
無理に無理を重ねて字を習っても、上達しません。
それどころか嫌になってしまうでしょう。
先生もそんな弟子の指導は嫌だと思います。
どちらも不幸です。

なので思い切って先生との面接の時に
その話をしました。
で、話し合った結果、
毎月作品を出すようになるけれども
その時の小作品は先生の書風を生かした作品を出すこと。
年に一度大作を書いて展覧会に出すときは、謙介の
持っている書風の作品で書くこと
ということで行くことになりました。

先生は「いろいろな書風の作品を書いてみたらいいのよ。
展覧会で指導者と違った書風の作品があるのは
バラエティに富んでいて結構なこと。」とおっしゃって
くださいました。
実はこれが俺も当たり前だと思うのですが、
実際はこうではありません。お手本どおりに
書かないといけない! と言われて
先生のように書くことを強制されるのが普通です。
(だから俺が常々、そんなお手本どおりの作品でないと
いけないのであれば、高性能のコピー機を買えばいい、
と皮肉を言うわけです。)

違う書風の弟子を受け入れてくださった先生の度量に
本当に感謝しました。

この展覧会に出陳されていた作品の多くは
ちょうど俺が習っていた時期に書かれた作品が
多かったように思います。
当時先生は60代の後半から70代ではなかったかと
思いますが、本当に活き活きとされていて
大作もどんどん製作されていました。

作品を拝見しながら、あ、そういえばあのころ
先生が練習の合間にご自身の作品製作について
こんなことを言っていたなぁ、ということが
断片的に思い出されてきました。

そうかそうか、この作品を作っていて、それで
あんなことをおっしゃったのか、と、いまさらになって
言葉と作品がつながったように思いました。

それにしても。
こうして遺された作品を見ると
先生のことを思い出すことができます。
先生の筆遣い、作品の構成、
今も先生に作品を直していただいているような
錯覚さえ覚えます。

こんな日が来るなんて、ついぞ思いませんでした。
今も信じられない気持ちです。


生きていれば死は必ず来るもの、ではありますが
弟子は勝手に先生はいつまでも指導してくださって
死なないもの、と思い込んでしまっていました。

そうして今更ながらに先生の亡くなったことが
哀しく、大きな穴が開いてしまったように思いながら
会場を後にしたのでした。

      ×       ×       ×

亡くなった、といえば、


坊さん友達のところの犬が亡くなりました。
名前はエルメス。
なんだか馬具屋のような名前ですが、
命名の由来は電車男、からでした。
柴犬で、飼い主の坊さん一家にしか
なつかない犬でした。
俺が行ったら吼える吼える。

前々から次第に調子が悪くなっていたそうですが、
ふらっと最期居なくなったと思ったら
ご近所の人の納屋の傍らで亡くなっていたとか。
亡骸をバスタオルにくるんで持ち帰って
裏の山に埋葬したそうです。


Kyushoji

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Comments

なるほど、先生によっても書が違うので習うときは選ばないとってのもあるのですね…バラエティに飛んだ字を書くのもその人の力量になるのですね…書って奥が深いですね。
僕も今から書道はじめたらikkoさんくらいは10年後に書けるようになるかな…。
う~ん。
どこか習いにいくところ見つけようかな…。

Posted by: holly | 12. 02. 06 at 오후 11:53

---hollyさん
そうなんです。書風というのがあるのと、ほらやはり人によってなんとなく合う合わない、っていう相性もありますし、、。でも地方は書道の専門の方の数も都会に比べたらずっと少ないですしね。さしあたって地方で大きな展覧会(県主催の展覧会)を見に行って、そこで自分の好きそうな字を書く先生を見つけて、、っていうのが一番いい方法かもしれないですね。

Posted by: 謙介 | 12. 02. 07 at 오전 12:00

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