« 日の丸みかん  | Main | さすがに今回は、、 »

11. 12. 15

字と書をめぐるいくつかのお話

こないだ、年賀状のお話をしました。
その後、友達から、年賀状の市販の
毛筆年賀状デザインソフトに
ひとつもかっこよさげな字のものがないんだけど、
どうしたものだろうか、
というメールがきました。


手書きだったら全くそういう問題は
起こらないのですが、毛筆フォントを
含めてひらがな漢字のフォントには
どうしても解決が難しい問題があります。

それは何か、といえばそれぞれの前後の文字
に応じて次に来る文字の大きさを微調整
できないということです。

比較的画数の多い文字は
やや大きめに書きます。
対して画数が少ない文字は
やや小さめに書きます。

どうしてかといえば、同じ字を並べたとき
画数の少ない字のほうが大きく見えるから
画数の少ない字は小さく書いてバランスを
取るのが鉄則なのです。
同じような画数であっても漢字と
ひらがなであれば漢字をやや大きめに
ひらがなをやや小さめに書きます。
そうしたほうが読んで読みやすいのです。

1991

(勝手にコラボさせて遊んでいますが、、。笑 祝 再結成! )



手書きだと前後の字によって
そういう書き分けを判断して瞬時にしてしまいます。

ただ、上のコンプレックスの歌詞を書いた作品は
意図的にいくつかの漢字を印象づけようとして
さらに大きく書いてあります。作品なので当然
デフォルメとかもやっています。
ただ基本的にかなを小さめ、漢字を大きめ、
という線は守っていますが。

上の作品からはあまり感じられないかもしれませんが
つまり字の大きさを全くそろえないでおいて
しかしあたかも整ったように見せるのが
本当の技術なんですけどね。

でもフォントっていうヤツは
字の大きさが全部決まっていますから
こうした微調整が全くできないわけです。
だからどうなるか、といえば、、、。


↓これって目が疲れません? 俺、こんなの
見ていると、ものすごく疲れます。目が痛く
なりませんか? 俺だけですかねぇ、、。

Font

筆文字のフォントで字がいっぱい書いてあったら
見づらい、読むのが嫌、ということが起きます。

目が疲れるのです。それとこれもデザイン関係の
人が作ったフォント、っていうのが一発でわかります。
↑このフォントの文字って横広いでしょ。
 
縦書きに適した文字というのは、縦長の文字です。
そのほうが断然見やすいからです。

なぜかといえば、縦書きは、視線が上から下への移動ですから、
縦長の文字だと視線の妨げが少なくて済むからです。
視線がスムーズに流れるのです。

だから横に張った文字を縦書きにされると
目が疲れます。それは、文字の構成とか
目の生理を無視した文字の形になっているからです。

書を習った人なら、作品の中での文字の流れ
ということはまず考えます。

どこにどんな字を配置するのか
そういうことは真っ先に考える要件です。
書道の作品というのはただ単に字を書いているだけでは
ありません。作品のどの位置にどの字を配置したら
よいのか、その字の大きさは大きいほうがいいか
小さいほうがいいか、太く濃い墨で書いたらいいか
かすれを利用して書いたほうがいいか、そういうことも
すべて計算して作品を作ります。

文字群の全体の構成、前後関係を
すべて考慮に入れて作品を作ります。

そんな「計算」をすることは、書道の作品作りで
あれば基本中の基本と言うのか、
ごく当たり前のことです。

ですが、おそらくはデザイン関係の人というのは
一字一字の文字のデザインはするけど、
ただそれだけじゃないですかね。

縦書きに適した文字は縦長のほうがいいとか前後関係で
文字の大きさを微妙に変える、というような
ことは一切考えないんじゃないのか、と思います。
このとても見づらいフォントを見ていると
そんなことを想像してしまうのです。


それから2つ目。友達の言っていた筆文字の年賀状で
かっこいいやつがあるかどうか、ということでした。

どれどれ、と思って
パソコン関係のお店とか
家電の量販店で年賀状用の筆文字素材の
ソフトを置いてある店で毛筆のソフトを片っ端から
何種類も見てました。
 

なるほどなぁ、、。
友達の言葉に納得しました。
見た限りでしかありませんが
俺の目を惹くようなほれぼれとするような文字の
ソフトはひとつもありませんでした。
フリー素材だからですかね。これなんかすごいです。
うんこみたいな字です。

たぶん俺が「かな」を習った上嶋茂堂先生であれば
これを見たとき、絶対そう言ったでしょう。
だって練習中に学生が
腐ったような線の字を持っていったり
紙の余白の割合と墨の黒さの割合で
墨の割合が多いような作品だったりすると、
「うんこみたいな字や」「うんこうんこ」って
連呼していましたもん。
でもせんせい、、あさからうんこ、って、、、。


たぶん、これを作ったのも、デザイン畑の
毛筆を持ったことのない人が考えたもの
なのだろうな、って思いました。
最初に文字のデザインがあって
なので、それぞれの文字の骨格・構成を
無視したような書体です。

たとえばどこでそれがいえるかと言うと「新」を
見てください。左側。「立」に比べて下の「木」が
ものすごく貧相です。「木」のほうをやや大きめに
書かないと字の安定感が出ません。
謹の言偏の一画目の点、 新の「立」の点
年の一画目の左はね、一画目に太く汚い線を
持ってきています。 字を習ったことのある人間は
字の構成ということを勉強しますから、
最初にやたら目立つような線は持ってきません。


最初は地味に大人しい線から始めて、(起)
次第に大きく大胆な線を使って     (承)
そして変化を持たせて          (転)
再びもとのように静かに収める。    (結)
これが字を書く上での基本です。

この「謹賀新年」にはそれが全くありません。
だから書の人の字ではなくてデザインの人の
作った字だろうな、と思ったわけです。

市販のものだってソフトの使い勝手については開けて確認して
いないのでどこまで便利なのかは知りませんが
毛筆年賀状ソフト、と銘打っている以上は
そこに書かれている筆文字がやはり一定水準に
達していなければ、そもそもダメだ、と
思うのです。

 
これは俺のサイト「百の扉」用の
お年賀で使ったものです。

Gasho


結局友達には、俺が文字を書いてそれを加工する
ということにしました。


それから。
11月から12月の今頃、
あちこちで書道の展覧会をやっています。
謙介が習っていた頃は、毎年2月の終わりから
3月にかけて京都市美術館でうちの学書展を
やっていました。
以前は書の団体に属していたり、
書の作品集団の個展へよく行っていて
今もおつきあいもあります。
そういう関係で今もこの時期になると
何通かの展覧会のご案内をいただきます。

今もたまに
謙介はどうしてああいう書の会派に属して
いないのか、ということを聞かれます。

俺もいくつかの会派に属してみたのですが
その会派流の書き方でなければダメ、という
ところがあまりに多いのです。

いや誤解のないように言っておきますが、
なんでもかんでも自由に書いたらいい
と言っているのではありません。

なんでもかんでも自由に書く、と言い出した
前衛書道は今や惨憺たるありさまになって
いるではありませんか。

有望な後継者が誰もいません。

そりゃそうです。基礎基本をないがしろにして
好き勝手な字を書いたって、すぐに壁にぶつかるのは
明らかです。 

ベースとなる基礎基本をしっかり練習して、
その上で、自分の、自分だけの
書の書き方を創る、というのが書の正しいあり方だと
思うのですが、会派に入ってしまうと
その先生の書き方をすっかり真似しなければ
ならない、と、言われます。

結果、どうなったか。展覧会を見てみてください。
誰が書いたか、なんて知りやしませんが
誰の門下生なのか、というのは一目瞭然な作品ばかりです。
先生の真似をして同じような作品を作ってばかりです。
真似した作品が作りたかったら
コピー機に任せたら? って俺は思います。

それが正しい書の作品制作の在り方なのかどうか。
俺は、そんなの間違ってる、としか思えないのです。

さて、この楷書です。

Nihongi

岩波の古いほうの日本古典文学大系本です。
各作品のタイトルの文字。
書いたのは柳田泰○さんです。
柳田さんも書道界ではどこの会派や
流派に属することなく、自己の作品、
特に楷書作品を追求された書家でした。

独自の道を歩まれた方ではありましたが
前衛書道の人たちと違って、
中国の書の古典に対する研究もされて
古典に対する幅広い学識が
おありだったために、創作に行き詰ってしまう
ということはありませんでした。

この方の息子さんもやはり楷書を専門とする書家です。
ついでに言うと、この息子さんに師事しているのが
須藤元○さんです。

須藤さんの書については常々言っているように
中国の古典がベースにあっての創作で
俺は素晴らしいと思っています。

字とか書について思っていることを
まとまりなく並べて書いてみました。

|

« 日の丸みかん  | Main | さすがに今回は、、 »

おげいじゅつ」カテゴリの記事

Comments

書道についての知識がほとんどないので、「文字」について深く考えたことがありませんでした。

フォントについてはいろいろ悩みます。
僕はMicrosoftの標準フォントである「MSゴシック」と「MS明朝」が好きではありません。
至極貧相な形に見えるからです。
特に指定がない場合は「教科書体」を使っています。
Macの「ヒラギノ明朝」は好きです。

自分でロゴやポスターを作る際には、仮名を心持ち小さなフォントサイズにしています。
漢字を24ptにしたら、仮名を20~22ptぐらいとか。
上手くは言えないのですが、“どっしり感”が出てくるように思います。

謙介さんの字、素敵ですね。
僕は字が下手すぎて……。
ちなみに「お」と「ま」が好きな形です(^^)。
「介」という字、僕にとってはバランスを取るのがとても難しい漢字の一つです。
上下の文字とのバランスが難しい漢字には「日」「川」「一」「二」「身」などがあります。
画数が少ない字が書きづらいように思います。

Posted by: タウリ | 11. 12. 16 at 오전 9:37

あっ、書きそびれました。

祝ブログ復活!!!

お身体をいたわりながら、やんわりと続けて下さい。

Posted by: タウリ | 11. 12. 16 at 오전 9:40

---タウリさん
タウリさんのところにも数字を半角にするのか全角にするのか、ということで悩む、ということがお書きだったですよね。俺もそれいつも文書の時に悩みます。すごく共感できるお悩みでした。 そうですね、MSゴシック、あれは本当に貧相な文字です。 フォント、帯に短し、たすきに長し、で、自分がこれ、と思うのがありません。 漢字とかなの調和、すごいです。ちゃんとお考えだったのですね。俺、実物をみたことがないのでよく言えないのですが、車の沖縄ナンバー、って沖と縄を比べたら、沖のほうが大きく見えませんか? 画数が少ないですから。 それから、画数の少ない漢字、難しい、というのは、みんなそうなんです。難しいんです。というのが、字の白い空間が大きく空きすぎるので、位置関係をどうするのか、ということが難しいです。画数の多い漢字より、少ないほうが難しいのです。ありがとうございます。今年は気温・気候の変動が激しいですし、身体をいたわりつつのんびりやっていきたい、と思います。

Posted by: 謙介 | 11. 12. 16 at 오후 6:28

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91870/53359073

Listed below are links to weblogs that reference 字と書をめぐるいくつかのお話:

« 日の丸みかん  | Main | さすがに今回は、、 »