« 「その後」のこと | Main | 福島から新米到着! »

11. 11. 01

新しい薬だってさ

昨日は月曜だったので
恒例により
がんセンターに行ってきました。

診察室に入ると、まず血圧測定と
体重測定があります。
昨日の血圧、上が98 下は56でした。
はい。血圧低いです。
体重は62キロでした。
体重を見る理由は体重の急激な変化はないか、という
こと。もう一つは薬の量を考える必要があるからです。
増えるにせよ、減るにせよやはり体重の急激な変化は
身体のどこかに異常がある、という可能性が
大きいですし、肝臓の治療法のひとつとして
身体の血を抜いて、人工的に貧血状態を作る
瀉血療法という治療法さえあるくらいで、肝臓病では
太っている状態というのはそもそもダメなようです。
太ったら脂肪肝の可能性だって出てきますし。


うちの主治医も以前謙介がちょっと太ったとき(2キロくらい)
痩せてください、とご指示がありました。
178センチで64キロになったら痩せろ、って言われます。
62キロくらいにしておかないといけない、んだそうで。
肝臓の病気の場合、体重管理も神経質にチェックしないと
いけないようです。


次には診察台に横になって、先生が肝臓の辺を触って
息を吐いたり吸ったりします。そうやって肝臓に硬い
部分はないかどうかチェックするわけです。
何せ「肝硬変」という病気がありますから、肝臓が
硬くなっているかどうかは大切なチェックポイントに
なるわけです。

それから診察台から降りて、主治医の前に座って
前回の採血の結果を見ながら、治療指針の確認を
したりします、が、今回はまた新しい薬の話がありました。

新しい、というのか、薬そのものは以前からあったもの
らしいのですが、それを肝臓の病気に使用する、
というのが新しいのだそうです。

プロテアーゼという酵素の働きを阻害する薬だそうで、
このプロテアーゼが体の中のウイルスを増殖させる
働きをするので、その働きの邪魔をして増加させないように
する、と聞きました。今年の初めに申請が出て
承認されたか、近く承認されることになる薬なんだとか。

この薬と従来のインターフェロン注射、リパビリンの服薬
の3段攻撃で肝臓の状況を改善しようというもの
なのだそうです。
謙介、実はこの薬、既に知っていました。
というのがこの本を読んでいましたから。

Kanzo


ただこの本のタイトル、不誠実で
嘘つきなタイトルだと思います。
このタイトルだけ見たら、肝臓の病気は
治る病気だ、と錯覚してしまうじゃないですか。

このことについては
いい加減なことは言いたくないので
前に何度かお話して
繰り返しは承知です。でもなぜこの
タイトルが不誠実で嘘つきと謙介は思うか
その理由について言わないといけないので
もう一度きちんと書いておきたいと思います。

C型肝炎だけに限ってみましょうか。
20年ほど前、
最初インターフェロンの注射だけの治療のときは、治療をして
ウイルスが消えるのは、5パーセント程度でした。
それがインターフェロンとリパビリンの併用に
なって30パーセントから40くらいになりました。
でも逆に言えば、6割から7割は効かないわけです。
さらに、インターフェロンの改良があって
従来は週3回の注射だったのが週1回で
済むようになりました。これとリパビリンの併用で
6割が効くようになった、とあります。
でもここには数字のトリックが潜んでいます。

一つは、この治療法があまりにしんどいために
途中で脱落する人が結構います。
つまり分母が100ではないのです。
100人が治療開始して、最終的に効いたのが
50人だったとします。 しかし、その間20人が
脱落して、分母が80人になったと。
そうしたら50÷80だと、すると数字上は6割を超えて
効いた、ということになりますよね。

でも、正しくは50÷100でないといけないでしょ?
そうしたら半分しか効いていないのです。

しかもです。効いた、という表現に俺は異議があります。
インターフェロンとリパビリンを飲んで
場合によっては途中で肝炎のウイルスが一時的に
消えた、と。しかし、治療が終わってしばらくしたら
またウイルスが出てきた。これも医学的には
効いた、という数に入ります。 俺なんかは
結果的に消えてないんだから効いてないじゃ
ないか、って思うのですが、「反応があった」のは
医学的には効いたんだそうで。
こうした人も効いたうちに入れられます。

ですから本当に効いて、ウイルスがいなくなった
というのは、やはり100人いたら40人程度だねぇ
というのが肝臓専門医のうちの主治医の意見です。
とすると100-40で残り60パーセントは
結局効果がなかった、ということです。

これで肝臓病は治ると
断定してしまっていいのですか?
6割に効かなかったのに、治る、って、、。
だから不誠実で嘘つきなタイトルだ、と
言ったのです。
俺の考え方って間違ってますか?


まぁそれはともかく。
この本の中にはその新薬、MP-424という名前で出てきています。
この本の中にはもうじきこの薬を使用した
治療法が開始され、その効果が期待されている
とありました。


「で、この薬が承認されたら、すぐに治療開始、
というのですか? 」と主治医に聞きました。
「いや、すぐにははじめないです。というのが
承認されても1年くらいは様子を見たほうが
いいからね。その間に副作用がどんなふうに出るかとか
危険な症例が出なかったか、そういう部分が明らかに
なってきてからでいいです。ただ、来年に向けて
こういう治療法があるよ、ということで、、。」
と主治医の先生はおっしゃいました。

この治療法は、従来薬の効かなかった人に
さらに2割くらい効果があるということです。
数値上は50+20で70パーセントまでカバー
できる、ということになります。

それだけ聞くとこの治療実施したら? ということに
なりはしますが、やはり問題点が大きいのです。
一つは副作用です。

ものすごい疲労感があるそうです。
前の治療の時も、本当にしんどくてしんどくて、、。
注射を打った日には、寝床から立ち上がることさえ
できないありさまで、それでもようやっと体調が
ましになった後でも、
階段で2階に上がることさえ、5段くらい上がっては
休み、5段くらい上がっては休みで
行かないといけないくらいのしんどさでした。
これがまた起こるわけです。

それから身体中に湿疹が出ます。
人前に出られないようなぼこぼこと大きな湿疹
が体のあちこちに出るのです。
前の治療の時も出ました。
それから脱毛。
頭の毛がばっさばっさ抜けていきます。
お医者さまは治療が終わったらまた
毛が生えてくるといいます。
ですが、自分の経験から断定しますが
年をとってくるとそういう
再生はありません。ごっそり抜けたら
抜けたままです。
自分で自分のこういう状況を見るのは
本当に嫌です。でも死ぬよりはマシだから
耐えたけど。

まぁこうした副作用があります。

加えて今度は薬の服用が非常に
難しいのです。
必ず食後に飲むこと。
しかも食事と食事の間は8時間あけること。
これをお読みのみなさん、それ、きっちり守れます?

つまり8時間おきに規則正しく食事をし
その後できっちり薬を飲む、ということを
しないといけないのです。

8時間おきに食事というのは
例えばこういうことです。
朝5時に食事、 昼1時に食事 夜は9時に食事です。
食事の時間は1度決めたら動かしてはいけません。
朝の5時が嫌だ、朝は6時がいい、となったら
昼は2時、従って晩御飯は夜の10時です。
今日は、朝の7時に、となったらお昼は午後3時です。
晩は夜の11時です。

朝の7時前に食事をして、12時くらいに
お昼を食べて、晩の6時か7時くらいに
食事、というのは薬の効果がなくなるから
許されません。


ですが薬を飲むのはあくまで人間です。
決して機械ではありません。
普段の生活だって、そんな食事時間が
きっちり決まって、なんているわけでは
ないと思うんです。今日は会議があるから
昼が遅くなった、とか、来客続きで
食べ損ねた、なんて俺もよくあります。
でも、それはダメで、きっちり8時間おき
なのだそうで、、。

例えば定年退職して家にいる人であれば可能かも
しれませんが、普通に働いている人だと
無理な話です。


もうちょっと生きている人、生活をしている人に
寄り添った、というのか、そういう生活実態に
即したような薬とか、そういう服用法でも効果の
あるような薬を考えて欲しいと思うのです。

それはお前の切迫感がないからで
どうしても死にそうだったら、その方法でも
試してみるはずだ、と言われたらそれまでなのかも
しれません。

そりゃ効果はあるのかもしれません。
でも、欲目で見た効果で7割です。
ということは依然として3割の人はやはり
効果がないのです。肝臓病が治らないわけです。
で、肝臓病は治ります、って言われてもなぁ、、。

一番謙介が言いたいのはもうちょっと人間的な薬
を作ってくれよ、と言うことです。
きっちり朝の5時、昼の1時、晩の9時に食事しろ、
っていわれたって毎回毎回そうやって1年半
それを続けられる自信なんて
ありません。


そんな人の基本的な生活を無視して
しまった治療法なんて無茶じゃないか。
患者の立場で
そう考えてしまうことはダメなのでしょうかねぇ?

たぶんよほどの急激な悪化がないかぎり
この薬の治療法は、、ちょっとなぁ、、
と思いながらがんセンターを後にしたのでした。

(今日聴いた音楽 昨日と同じです。
 今日は♪あっれ めんしぇん べるでん
 ぶりゅーでる ぼーだいん ざんふてる
 ぶりゅーげる ばいると のところのれんしゅうを
 しました。)


|

« 「その後」のこと | Main | 福島から新米到着! »

心と体」カテゴリの記事

Comments

謙介さま
 
おはようございます。昨日、抗癌剤治療に東京まで出てきました。帰りの小田急線で、若者に、普通席を譲られてしまい、慌てました。頭に毛がないし、いかにも抗癌剤治療の病院帰りに見えたんでしょうか。(まさか。)生まれて初めての経験で、なんだか嬉し悲しの心境でした。

今の抗癌剤(ドセタキセル)が効かなくなると(主治医は半年かな、とあっさりしたものです)、後は治験薬しか私の病気の場合にはないのと、治験も殆ど募集していないので(大体がドセタキセル使った人はだめとか)、薬がまだあるというだけで、羨ましい気持ちになります。とはいえ、きつい薬の副作用に耐えるか、生活の質を選ぶか、難しいですね。お気持ちは良く理解できます。無理はなさらず、但し、長生きして、イケテルお兄さんにどんどん席を譲ってもらいましょう。(でも、四国じゃ電車乗りませんね。乗っても、混んでいないかな。)

Posted by: まさぞう | 11. 11. 05 AM 6:05

---まさぞうさん
お医者さん、って患者のわれわれをどういう目で見ているのでしょうね。薬ができて、一応説明はあって効きます、ってとりあえず説明は受けるのですが、治療が終わってもう一度聞いてみたら、あれ? というようなことがあったり、、。うちの主治医も薬の負担額のことを全然知らなくて、「先生、経費がこれだけかかるんです。」と俺が言ってはじめて「え? こんなに? 」って絶句していました。主治医は主治医の立場でしかものをいわないのであれば、その意見を聞きながらも自分の身体は自分で守る、ということでやっていかないといけないのだ、ということを改めて思いました。

Posted by: 謙介 | 11. 11. 05 AM 9:47

食事と薬の時間が拘束されるのは、治療というより、データ取りを優先しているのでしょうか。

以前、ある病気の治療で、抗生物質を飲む必要があった時、その時の医師は、食後に薬を飲めというのは、患者に定期的な摂取を守らせる方便であって、食事が不規則だったら、薬は規則的に飲んだ方が良いし、夕方酒を飲む必要があるのだったら、薬が効かなくなるので、アルコールを摂る前に、抗生物質を早めに飲むように、と説明していました。医療という立場ならそうなるのでしょう。でも、同じ条件の下で、データを揃えたい、エビデンスとして論文を書いたり、国にデータとして出したいということだと、摂取の条件がうるさくなるんでしょうか。患者の治療のためというよりも、医師のため、製薬会社の都合、商業主義という感じなのでしょうかね。 

Posted by: まさぞう | 11. 11. 05 PM 7:30

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 新しい薬だってさ:

« 「その後」のこと | Main | 福島から新米到着! »