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10. 10. 20

瀬戸内国際芸術祭(その5)

オンバファクトリーに来ました。
おんば。正式には「おんばぐるま」です。
そのおんばぐるまのぐるまが省略されて
単におんば、と言うのが普通です。それから
「おんば」は「乳母」(うば)の発音が音便化したものです。
ですから「おんばぐるま」とは、乳母車のことなのです。

乳母車、子どもが育って要らなくなった後は、
お年寄りの手押し車として再利用されていたわけです。
そうした手押し車をいろいろと再発見して今のセンスで
作りなおす、というのがオンバファクトリーの
目的なんだとか。

Onba5


いろいろなおんばがあります。
ラブリーなおんば。
Onba4

ウッディなおんば。
Onba3


このおんばは日テレ系のズームイ○に出たので、一躍全国規模で
有名になったおんばです。

Onba1

さまざまなおんば、あれこれです。

Onba2


このオンバファクトリーの近くに、この島に居たとき
同じ職場で働いていた人の家があります。
その人、あのころ、50代なかばだったと思うのですが、
自分の最小限の仕事だけやって、
後は何もしない人でした。

朝は、まぁ普通に定時までには出勤はしてくるんですけど。
仕事しながら耳にイヤホーンつけてて、
何聞いてるのかと思ったら
勤務中ずーっと株式市況聞いてる、って。
○○証券の支店長の何とかさんとは非常に親しい人で、
いろいろ情報をもらって、とか、、。機嫌のいいときに
その人が話していたのを覚えています。

面倒な仕事は全部まわりに
「ほな任せますから、やってください。」って言って
何にもしなかったし、
で、午後の3時くらいになったら、
「ほな、帰ります。」って管理職に言って家に帰っていました。
ちなみに勤務時間は5時までだし、自分のことを言うのも
なんですが、8時とか9時までその人の分も仕事してたんですけど。

で、その人は家に帰ってずーっとカラオケやっていました。
大声でカラオケで歌うんだから、そんなもの島の人だってみんな知っています。
あの人、勤務時間だって済んでいないのに、さっさと家に帰って
カラオケ歌ってる、、って。
でもみんな知ってたって、島だから何にも言いませんでした。

管理職は言っても仕方がない、と思ってたのか
その管理職と以前若い頃からずーっと一緒に同じ仕事をしてきていて
「お友達」だったせいなのか、もうどうせその人は長いこと仕事しないと
思っていたのか、それは分かりません。何も注意しませんでした。

で、最初にお出迎えにきてくれてお話した
Sさんに、その人、元気ですか? って聞いたら
今も毎日港のところで、奥さんと一緒に元気に釣りしてる、って。

やっぱり、ストレスフリーな生活って長生きできるんですねえ。(笑)


おんばファクトリーを出るときに、ふっと上を見たら
その人の家が見えていて、それとともにそんな以前の記憶が
よみがえってきました。

あの時の管理職、このあいだ死んでしまいましたけれども
俺はあの人間を未だに許せないでいます。

独身の職員というだけの理由で、週の半ばに伯母が亡くなったときも
その葬式に出るために実家に帰るのを許してくれなかったことと、
片方でこんないい加減な勤務をしている人間を平気で許しておきながら、
他方、何も言えなさそうな弱い立場の
職員には平気で厳しいことを要求していたこと。

妻帯者は用事があるから、週の真ん中に家に帰ることが
許されていました。でも、独身者はダメなんだそうで。
だけどね、毎週毎週帰る、って言ってるんじゃなくて
親族のお葬式なんです。
一人しかいなかった伯母の葬儀にも帰れなかった。
それでいて、「ほな帰ります」の人には何の注意もせず、です。


すいません。話が妙な方向に行ってしまって。


これはお蔵のアートでした。

Harigami3

お蔵の中はこんなふうに変身していました。
新聞記事と、そこから製作者が印象を受けて描いたイラストが
一組のものとして展示されていました。

Harigami1

久しぶりに島の中を歩くと、また空き家が増えていたように
思いました。
Hukei4

集落のそこここから見た景色は
あっけらかんと明るかったです。

Hukei5

島の中の展示、まだいくつか見るものはあったけれど、
灯台道の入り口まで来ていたので、
灯台に行くことにしました。

集落を出たところにこんな表示がありました。

Hyouji


かまわず灯台目指して歩いていきます。

Toudaimichi

どんどん歩きます。
すると次第に浜が近くなってくるのがわかります。
潮騒の音が大きく響いてきました。


Toudaimichi2


ようやっと灯台が見えてきました。
もう少しです。
Toudaimichi3

灯台に、到着です。
Toudai3

ここに灯台記念館があります。
元燈台守の方の住んでいた官舎を
記念館に改装したものです。
何度も入ったのですが、もう一度入っていろいろな灯台の
写真を見ていました。
そうしたら管理人のおじさんが来たので、
ちょっと立ち話になりました。
「やっぱり芸術祭中ですから来る人多いですか? 」
「そりゃ違います。もう1週間で言ったら何百人という人が
きます。」
そんなのんびりとした話をしていたのですが、、
そうしたら大学生くらいの若い人が、
後ろから突然管理人のおじさんに声をかけてきました。
「ここって、携帯の電波入らないんですか? 」
「あんたの、ひょっとして○フトバンクの携帯と違う? 」
「そうですけど、、。」
「○フトバンクは、この辺では電話ができんので。」
「え、ほ、ほんまですか? 」
「それがよ。ちょっと前に何人かの漁師が、○コモから
○フトバンクの携帯に変えたんや。そっちの会社の
何とかコースのほうが安い、とか言うて。
それでこの島で使おうと思って、かけたんやけど、
電話が全然つながらんでな、しようがないから、
みんなまたもとの○コモに戻したんで。」
「へ? そんなことがあったんですか。」
「それで乗り換えたときに、しばらく
契約を続ける、とか言うんで安してもろとったのに
すぐにこらいかん、言うてまた変えたじゃろ。
何かえらい金取られて損した、損した、言うて皆怒っとったぞ。」
「だけど、つながらない携帯だったらそんなもの、
何の役にも立たないじゃないですか。」
「そうよ。そやからここの島の人間は
あの犬の携帯屋に怒っとんで。はよつながるようにせえ、言うて。」

その大学生、記念館の固定電話を借りて
連絡を取って何とかなったようです。


帰ってからうちのパソコンで○フトバンクの
サービスエリア見てみたんですが、
この島はちゃんと通話可能地域になっていました。
でも実際問題として、全然つながらなくて、
また入ったばかりの契約をわざわざやめて
高い違約金払って元に戻した、って、、厳然たる事実が
片方であるわけです。

どこの会社がお得だの、
スマートフォンがどうした、こうしたとか言ったって
地元で電話がつながらない、使えないでは、
そもそもお話になりません。

ましてや、持ち主は漁師さんです。
仮にも船の無線が何らかの理由でダメになり、
携帯で助けを呼ぼうとしたとき、
通話できませんでは、生死にだってかかわってくるじゃないですか。
そんな役立たない携帯持ってたって
しようがないです。

しかし、サービスエリアの地図、あれが頼りにならん、と
なったらどうしたらいいんでしょう。

で、そのサービスエリアの地図、
それぞれの携帯電話の会社ごとに
ちょっと見てみたんですが、田舎は
まだまだ通話不能な地域が多いんですね。
そのことにも改めてびっくりました。

都会では問題なくどこででも話せるから
どの会社のどのプランがいいとか、
機種はどれがいいかとか、って
選択できる余地がいろいろ
あるんでしょうけれど、

田舎の人間にとってみれば
少々月々の支払いが高かろうが、
機種のデザインが気にいったのが
あろうがなかろうが、
そんなことより、
どんな場所ででも携帯電話が使えることのほうが
ずっと大切です。
まぁ考えてみれば電話としたら、一番基本の、
通話ができない、というのでは、、ねぇ。
困ってしまいます。


灯台の前の浜に出てみます。
Hama

やはり季節のうつろいは確実だと思いました。
島の木々や草はまだ繁っていて夏の感じだったのですが
海の色はもうすっかり秋の色になっています。


前にも言いましたが、
就職してすぐの頃、晩にこの浜に
同僚になった人と3人で来たことがありました。

夜、航路を照らす灯台を見ながら
これから自分はどういうふうな人生が
待っているのだろう。
どういう経験をするのだろう。 
そんなことを思いながらここに立った記憶が
あります。
早いものであれからもうウン十年経って
しまいました。
今、またこうして自分のスタートの場所に来て、

あの頃に較べて今の自分はどうなのか。
少しは成長したのか
相変わらずなのか
それとも悪くなったのか
しばらく海を見ながら自問自答してみました。

ですが、やっぱり自分としては
やった仕事に後悔の残らないようにだけは
しないとなぁ。それだけは思いました。


灯台を眺めながら横のベンチで買ってきた
おにぎりと水で昼食にしました。

ご飯を食べて一服したら、港に戻ります。
時間を見たら、12時すぎ。
1時発の船に間に合いそうです。
でも、あのすんごい人だしなぁ、、
果たして船に乗れるかどうか、、
まぁここで悩んでいても仕方がないので、
出発です。
集落のほうに戻ろうとしていると、
何人ものこれから灯台に行こうとする人と
出会いました。
「こんにちは~」みんな挨拶をしあいます。
やっぱり島にいる、という気持ちが
そういう挨拶を、という気持ちにさせるのでしょうか。

再び集落に戻ってきました。
相変わらずのすごい人です。
住んでいたころなんて島の端から端に行っても
せいぜい出会う人は2人までだったのに
今日なんて100人くらいの人とすれ違いました。
道路に人があふれています。
一体この人口密度の濃さはどうしたんだ、
とか思ってしまいました。

今度は集落の中の坂を駆け下りていきます。
途中道に迷っている人がいたので
これはそっち、これはこの道を上がって、4軒目の家の角を右
というふうに教えて差し上げます。

島の道は迷路みたいで、隣の家に行くにも
ぐるっと大回りをしないといけなかったりします。
でも大体の方向だけ見失わなければ大丈夫です。
豊玉姫神社に行きたい、というときは、道なんて
分からなくても目の前にある上に行く道をたどって
上に行けば、自然に到着するようになっています。

さて、再び港に戻ってきました。

先日の火事のあとです。
ここは前は公民館だったのですが、近くに
新しい公民館ができたので、しばらく空き家になって
いました。そんな空間を使って今回
ここにひとつ作品が展示されていたのですが、
その作品ともども焼けてしまったのでした。
隣に住んでいたおじいさんも一人なくなって本当に
悲しい結果になってしまいました。

Minato6


やっぱり船の乗り場はすでに長蛇の列ができています。
でも来るときの列に比べたら短そうなので、大丈夫(たぶん)
と思い列に加わりました。
やがて10分ほど遅れて船が見えてきました。

再び船に乗ります。
何とか乗船できました。
乗ってしまえばこっちのもの(笑)です。
船は着くのが遅くなっていた分、
島の滞在時間がなくなって、
乗客を乗せるやいなや、すぐに出航しました。
Kouro


島はまた遠ざかっていきます。
今度芸術祭が終わってまた静けさを取り戻した島に
来たいなぁ、と思いました。

Akatoudai

船旅は終わり、再び戻ってきました。
駅です。
ちなみにこの前の池は海の水です。
そうして瀬戸内海の干満にあわせて同じように
この池も潮が満ちたり干いたりするようになっています。

Eki3


これで瀬戸内国際芸術祭の話はおしまいです。
いつもながら長々としたお話に
おつきあいくださったこと、どうもありがとうございました。
お読みいただき本当に
ありがとうございました。

(今日聴いた音楽 瞳を閉じて 荒井由実
 1978年盤 音源はカセットテープ)


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Comments

謙介さん、こんばんは。一体これだけの人はどこから来たのでしょうか。関西ですか。TVで大宣伝やったのでもないのでしょうに。関東でも、NHKがニュースでやる、旅温泉番組と雑誌が取り上げるで、結構知名度はありますが、やはり遠いので、行った人はまだ知りません。一過性のブームだとすると、祭りが終わったら、恐らく誰も行かないか、客は相当減るでしょうから、その時の住民の虚脱感の方が心配かもしれませんね。

Posted by: まさぞう | 10. 10. 20 at 오후 11:57

---まさぞうさん
本当に以前の島を知っている人間から見れば、この異様と言っていいほどの島への訪問者の数は一体何? としかいいようがありません。事務局の正式な調査はまだですが、やはり近畿・四国・中国方面が多いんじゃないですかね。大阪から高松へは高速バスが10分から30分おきに出ていますから、そうアクセスが悪いということもないですし、、(ただ高松から島嶼部への交通が問題ですが)フェリーに乗っていて人の話す方言を聞いていましたら、やっぱり近畿圏の人とか四国一円からの人が多いように思いました。この間も島の自治会長さんに、11月に入ったらみんなこれまでの疲れが出て、バタッと倒れてしまわないようにしていただきたい、という話をしたところです。俺もおそらく今でこそ気候がいいですから来島者も多いと思いますが、これが来年の1月2月になったら、、おそらく(直島以外の島は)静かになるんではないかと思います。ただまぁ今回のこの行事を経て、瀬戸内にはこうした島があること。そこではこういう暮らしがあるんだ、ということを知ってもらったら、、それも大きな収穫ではないか、というふうに思います。

Posted by: 謙介 | 10. 10. 21 at 오전 5:52

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