« なつやすみのこと | Main | 瀬戸内国際芸術祭 »

10. 07. 16

復元と復原

火曜の晩、例の「いきなり」友達から電話があった。
「奈良いつ行くんや。」
「あ。」
「まさか忘れとったんか。」
「うん。」(きっぱり)
「覚えとってくれよ~~。わし、どうしても行きたいんや。」
「だって、8・9月のどこかだったらええんやろ。」
「まあそうやけど。」
「日帰り? 」
「一泊はしたいがー。」
「奈良のどこかで? 」
「そらそやろー。 奈良まわるのに、大阪や京都で
泊まったら時間のロスやし。」
「で、奈良のどこ行きたいん? 」
「いろいろ。」
「ようわかる説明や。」
「今、大極殿がどうしたこうした、せんとくんが何たら、言うていよるやろー。」
「ああ、あれなぁ。」
「あれもええかなぁと思うんやけど。」
「でも、あの建物、全部想像でしかないぞ。」
「へ? 」 
「ホンマにああだったんと違うん? 」
「うん。まぁそら、一応の研究はしとるけど、研究者によったら朱雀門は
ああいう二階建てでなくて、単層構造(平屋)だった、っていう人も
居るし、、。あれ、想像でとりあえず作っとるだけやからね。」
「え、そんな程度の建物なん? 」
「だって、あの建物の中で、はっきりした事実、っていうのは、基壇と
そこに置かれた礎石だけやもん。この二つだけが事実で
後、その上にどんな建物が建っとったか、っていうのは、
ホンマのところは何にも分かってないんや。」
「え? そうしたら、全部想像? 」
「そうよ。 だから、最初からちゃんとそう書いてあったよ。」
「どこに? 」

Daigokuden2

「『文化庁平城宮跡第一次大極殿正殿復原整備事業』
言うて書いてあったもん。 この「ふくげん」の
「げん」は、原っぱの原の字なんや。復活の「ふく」に原っぱの「はら」で
復原、って書いてあったんや。」
「それで? 」
「あのな、歴史学では、ふくげん、って二つ表記があるんや。それでな、
一つは原っぱのほうの「復原」。」
「ふん。」
「そうしてもう一つは、元の字を使ってある「復元」」
「おんなじなんやろ。え? 違うんか? 」
「全然違うよ。 あのな、元のほうの復元っていうのは、設計図が
残されてあった場合で、その設計図に基づいて、忠実に
もう一度再建する場合を言うんや。それから
はらっぱの復原は、設計図どおりに再建するんとは違う場合。
こう建っていたのと違うかなぁ、、と想像で
作るときが原っぱの復原。そやし、この大極殿は
最初から原の「復原工事」って書いてあったで。」
「まぁ、設計図なんか残ってるはずはないわな。大分
想像が入ってんの? 」
「そう。 だからことによったら、それこそ不比等が見てた
建物とは違うかもしれない、、。」
「そういう程度のもん?」
「うん。だって、精密に再現した、言うたって、建築史の連中の
参考にしてるの、法隆寺だったり、平安の巻物やもん。
小学生に言うような話やけど、飛鳥時代とか
平安時代と奈良時代は違うでしょ。だから理屈で言うたら、
そんなもの、近代建築の参考言うて
戦前の昭和の建築研究でもって、平成の今の建築スタイルを
想像してるようなもんやで。 」
「無理やん、そんなの。」
「でも、その無理の比較研究の建物が
奈良市佐紀町のあれなわけよ。だから謙介、あれ見に行きたいとか、って
テンション全然上がらんのや。」
「ふうん。その程度のものかぁ、、。」
「まぁでも、せんとくんの行事は今だけやし、
見に行ったらええん違う? 」
「でも平城宮跡、って、野っぱらなんやろ? 」
「うん。」
「夏なんか暑いやろ? 」
「そら直射日光かんかん照りよ。おまけに奈良なんて盆地で暑いし。」
「9月に入ったら、ちょっと涼しくなると思う? 」
「どうだろ。 さすがに8月とは多少は違う、とは思いたいけどやね、
残暑はやっぱりきついと思うよ。」

その話はそこで何となく終了して、最近のお互いの仕事のことに。
まぁなぁ。お互いヒマ、なんて有り得へんし、、。
最後は、まぁ何とか日程調整して
旅館とって、計画しとくわ、ということで
電話を切ったのだけど。


しかし、それにしても。
平城宮跡のあのイベント、どうして自分は
全然テンションが上がらないのだろうか、
奈良に行く、行かない、ということより、
あのイベントを全然興味の対象外だと、というところに
「自分の感情がそれを振り分けてしまっている。」
ということのほうが興味深いことのように思えた。

うーん。やっぱり気持ちのどこかに
どうせつくりものだし、という気持ちがあるのかもしれない。
本物ならば、どんな断片とかかけらでも
行って見てみたい、とか見よう、という欲求が
湧くのだけど、あれってどうせ模型だしなぁ、、
という気持ちがあるのだと思う。

別に野っぱらだったら、野っぱらのまま
置いておいてくれたほうが、まだしも
思考を邪魔されないで済むんだけどな。
変に建物なんか建てられてしまうと、その建物に
引きずられてしまうではないか。
どうもその辺の意識が、イマイチあのイベントに
行ってみよう、という気にはならない、原因か、と思う。


さて、ちょっと予定表を見て、と。

あ、そうだ。もう一度アイツに聞かなきゃ。
キミは一体奈良のどこに行きたいの? って。

|

« なつやすみのこと | Main | 瀬戸内国際芸術祭 »

おべんきゃう」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 復元と復原:

« なつやすみのこと | Main | 瀬戸内国際芸術祭 »