おっさん放談@○亀製麺(その1)
午後6時過ぎ。帰ってきて洗濯物を取り込んだり、
仕事に持っていっていた弁当箱を洗ったり、が終わった頃。
部屋のドアがすごい勢いで叩かれた。
どんどんどんどんどんどんどん。
(あけんかこらー われ、おったら、さっさと出んかこらー)
生活が逼迫しているとはいえ、今のところ借金はないので
「ゴルアァァァァ、借金返さんかぁぁ」と言ってくる人間は
いないはず、なのだけど。
そう思ってドアを開けると、
先日の「いきなり不比等」がドアの向こうで
「ひさしぶりやのー。元気か? 」と言って
立っていた。一応までに説明しておくと
彼は高校の時の同級生で、今年の4月
高知から謙介の仕事場の街に転勤になってやってきた。
そのせいで、今まで電話なんて彼から1年に1度
あるかないか、だったのが、ここ数週間は
一週間に一度、と言う急激な電話回数の増加になった。
彼の専門は土地の登記なのだが
なぜか(というほどでもないけど)日本の古代史に
興味を持っている。自分の周囲で古代史の
質問ををして答えられる人間、というと俺しかいないのだそうだ。
加えて高校の同級生という間柄ゆえ、もう遠慮会釈などない。
人が家にまで仕事を持ち帰って、ああだこうだ
とやっているときに、「持統天皇やけどのー」
「長屋王やけど、、。」と
電話がかかってくる。
彼がついあれこれと聞いてくるので、気がついたら、自分の
仕事の本の上に、上代の資料を山のように持ってきて
彼の質問に答える。「ほんならの。」と言って彼が
電話を切るのが2時間後。
俺、仕事はその時点で止まったまま。
机の上は資料でごちゃごちゃ。
もうそのために睡眠不足になったことが四月以降で何度
あったことか。
「ようここが分かったのぉ。」
「グーグルマップじゃ。オマエの住所入力してクリックしたら
すぐ出てきたわ。」
「は、さよですか。」
「おまえ、ドアのチャイム、直してもらえよ。なんぼ
押しても鳴らんが。」
「ああ、あれ、コツがいるんや。」
「こうやったら、ほら。」
俺が白い出っ張りを押すと、ぴんぽんでもなく、ぴーん
でもなく、「ぴ」と、チャイムが鳴る。
「なんや、このぴ、は。」
「一応鳴っとるやん。,,,ま、入れだ。」
「いや、ええわ。オマエ、メシ済んだ? 」
「あ、まだ。」
「来たときに見たら、うどん屋があったが。」
「ああ,,,,,うん。」
「丸亀、言うてあるけど、あれ、丸亀のうどん屋か? 」
「ちがうちがう。丸亀でのうて、神戸資本。」
「こ、こうべ? 」
「何かようは知らんけど、神戸のトリドー○いう
会社が讃岐うどん屋する、とかで
やっりょる店げなよ。」
「神戸やのに讃岐うどんいうて、それインチキじゃが。」
「いや、まぁ、会社の方針とかいろいろあるんやろ。」
「それで、うまいんか? 」
「行ったことないんや。わざわざよそで
食べんでも、いんだら(帰ったら)近所になんぼでもあるし。」
「まぁ、の。,,,,,,そやけど、どんな店やろ、何かこだわりのなんたら
言うてようけ書いてあったぞ。」
「まぁ、最近は何でもこだわり、いうん好いとるげなけん。」
「よっしゃ、そこ行くぞー。」
で、あわてて車のキーとかばんを持って
俺は彼の後をついていったのだった。
車の中でも友達は質問しまくり。
彼の中に沈黙という言葉は無い、ようだ。
1秒たりとも黙る、ということをしないヤツ。
「オマエ、オレと奈良行く計画どうなっとんや。」
「行くよ。そやけど、その前に、行く場所絞らないかんわ。
法隆寺行きたい。吉野行きたい。平城宮跡見たい。
明日香村行きたい。東大寺見たい、言うて、
それを1泊2日で、なんて無理やもん。
一点に絞らんといかん。どこがええんや。」
「ほんならのー、明日香村じゃ。」
「分かった。そうしたら、案立ててみるわ。」
「ほんでの、額田王やけどのー。」
「え? 」
「伊予の岩湯の行宮(かりみや)てどこにあるんや。」
「分からん。」
「それは、オマエが知らんのか、それとも、どこか
分からんのか? 」
「どこか分からんの。 まぁ常識的に考えたら道後やけど。
温泉が出るん、そこだけと違うしの。それにちゃんとした記録が
残っとらんのよ。」
そんな話をしているうちに、車はそのうどん屋の駐車場に。
午後6時半。駐車場は3分の2くらい埋まっていた。
長くなったので、今日はここまでにします。
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