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10. 06. 29

次はどうなの?

このあいだある人に「今回の大河ドラマの字って、
あれ、なんて言う書体? 」と聞かれた。


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「隷書と楷書の間じゃないかなぁ。」
「え? そんな間なんていうのあるの? 」
「まぁ書道史の中ではあるけどね。
例えば木簡なんてそう。正式書体は隷書なんだけど、
いつもいつも隷書で書いてたら面倒だから、っていうんで
書いた役人によったら楷書だったりする字もあるから。」
「ふーん。そういうのがあるんだね。」
「だけど、これ、書いた人は、そこまで考えて
書いたかどうかは、、わかんない。たぶん。」
「何、その、たぶん、って。」
「-------」
俺としては、あんまりさー、この件について
言いたくなかったから黙ってたんだ。
「前回のタイトルの字も、ひどい、って謙介言ってたけど、次、
っていうのか今回はどうなの? 」
「-----ねーぇ。」
「ねぇ、って何よ。」
「じゃあ、さ、○○さんは、この題字見てどう思うの? 」
「なんだかタツノオトシゴみたい。」
「たつのおとしご」
「だってぺっちゃんこじゃない。----謙介はどうなの? 」
「えええ、言ってもいいの? 」
「え? 何? 」
「言ってもいいのか、って聞いたの。」
「まぁいいわ。許すから言ってごらんよ。」

「貧相な文字だな、って思う。 それと、これ、書いた人って、
たぶん正式な書道の勉強した人の字じゃないな、とも思った。」
「どうして? 」
「字の基本点画の書き方ができていないから。 」
と、そういう話をしてたわけ。

そう思ってて、6月27日の日曜の朝。
NHKの「ようこそ先輩課外授○」を見た。
あれ、うちのオフクロは嫌いだ、っていうの。
「そやって、その先生役の人は好きで陸上の選手に
ならはったり、お笑い芸人にならはったかもしれへんけど、
卒業生やから言うて、母校にやってきて、
全然体育が好きでもない子に、無理やり
走れ走れ、とかやったらかわいそうやないの。
あんなん、強制やわ。」 と言ってすこぶる人気が悪い。

俺はそれでもまぁ子どもがどんどん変容して
行く中で先生のほうもそれに合わせてどんどん
変容していく、っていうのも興味深いので、
まぁまぁ、とかいいつつ見てる。
結局、三銃士見て、週刊子どもニュース見て、
と、ずーっと日曜の朝はNH○見てるんだけど。

今回がちょうど、というのか、たまたま、というのか
その今回の大河ドラマのタイトルの文字を書いた
本人が、母校に行って、というのをやっていた。
最初、その人が字を書くシーンが映った。
ああやっぱり、と思った。
筆の使い方を見たら、ああやっぱりこの人、書道の
勉強をちゃんとやったことがないんだ、と
分かった。

どうしてか、って言うとね。
この人、昨日の番組の中で長鋒(ちょうほう)って言って
穂先の長い筆を使ってた。それはいいんだけど。
行書や草書になったら筆の軸が回転するから
それに合わせて筆を持つ部分(筆管)が斜めになることだって
普通にある。
だけどね、筆の穂先全部がべたーっと紙に接する、ということは
書道の筆の場合有り得ない。
字を書くときに筆が紙に接して使われる部分というのは
筆の穂先の長さの3分の1くらい。
どうしてそうするのか、と、言えば、後の余った部分で
筆を撓ませてその反発で線を書いたりするときの
力点・支点・作用点 にそれぞれなるから。

その部分は表立っては使われないけれども、
いろいろな表情の線を出すために、その一見
無駄とも思われる使われない部分がどうしても必要なの。
そこが線を書くときの力の「溜め」になるから。

でも、その人の筆づかいはそうではなかった。
全部べとーっと、筆が紙に接していて、、。
それは、字を書く筆使いではなくて、
墨で紙を塗る、絵を描く筆使いだ。
紙の上に筆で墨を塗ってるだけ
あれじゃ字を書いてる、っていうんじゃない。

この大河ドラマの題字、線は弱いよ。
特に馬の字。本当に弱弱しくてひょろひょろだ。
大きな時代の変わり目に立って、
その流れを大きく変えようとした人間の
スケールのでかいドラマなんだからさ、
あんな弱弱しい線でどうするよ、
って思う。

線が弱い、というマイナス要素のある分、
やっぱりインパクトだって弱くなるから
前回の天地人同様、字の形を思いっきり
異様な形にしなくちゃなんない。
形をデフォルメさせることで、
線の弱さをごまかしている、と。
そう言ったらきつい言い方になるのかなぁ。
だけど、全然そのタイトルの字の横画なんて
何の思慮もなくパランパランと書かれているだけでさ、
見る側に伝わってくるものがないのよ。

それとね、もうひとつ言うと、
書道をきちんと習った人なら、
こういう字を書くのであれば、
(仮に俺がその立場であったとしたらよ)
その字の元の形。つまり、「龍」なり
「馬」なり「傳」のそれぞれの甲骨文字の
字体をまず見て、その字の成り立ちが
どうだったのかをきちんと調べる。
そうして字の骨格をまず調べた上で、
ドラマのイメージに合わせてデフォルメさせる。
でもそれをやってないもの。

「どうしてそれが分かるの? 」
「この字の縦画・横画の処理が
むちゃくちゃだから。 
特に「龍」と「伝」の形がひどい。

どうして龍の二画目の横画が
あんなにでかくなるの?
で、上を大きくしようとして下を小さくしようと無理をしたから、
その下の「月」の部分がべちょっとしてしまって、画が
判然としないでしょ。うちのセンセイだったら
「うんこの字」って言うと思う。


どうしてそういうふうにうんこになるのか、
といえば、はじめにこういう形で字を書いてやろう、という
意識がまずあって、それに字を無理やり合わせて
いっているから。だから、文字中の
基本点画の処理が犠牲になってしまってる。」
あの伝のシッポだってあざとい、というのか
わざとらしくて、、だから字全体が安物に
しか見えない。
なんであんなものつけたの?
なんで、字そのものの迫力で勝負しようとしないの?
なんでもっと彫りこむような線で書かないの?
おぢさん、聞きたいことだらけだ。


題字にこの人を選んできた、っていうのは
たぶん「アートディレクター」というのか
「トータルデザイン」みたいなイラストとか
美術の人が字、そのものを見ないで人選した結果
そういうことになったんだと思うけどね。

確かにね、今の書道っていうのを見てたら、
問題も多々あるんだけどさ。

有名な先生について、
その先生にお手本を書いてもらって、
それを忠実に写して、自分の作品~、って
いって展覧会に出してくるような人がすんごく
多いしさ。(そういう人が圧倒的に多い。)
だけど結局それって、自分の作品を創ることを放棄して
人の字に頼っている、っていうことでしょ。
その人のオリジナリティってどこにあるんだろう??

かと思ったら、全然基礎の勉強はなくてさ、
虚仮おどしみたいな派手な字を書いて
おげいじゅつ、って言ってるの、とか。

確かにね、今の書道の世界見たら
そんなこんなで、本当に嫌になることは
多いし、構造的な問題だってずーっと
解決されないまま、今に到ってるし、、
問題も多いのは確かなんだけどさ。

だけどね、本当に少数なんだけど
ちゃんと古典をいろいろと勉強して
そういうエッセンスを全部取り込んで自分のものにして
そうして、自分の字を創ってる、っていう人だって
いるんだよ。
(もちろん俺はもうハナから除外だけど。)

展覧会行って、字を見てたら、そういうちゃんと
やってる人、ってすぐ分かるものだよ。
だって、そういう作品って、やっぱり目を惹くから。
最初の第一印象は必ずしもよくはないかもしれないけど、
そういう作品、って1日ジーっと見てても見飽きないの。

若い人でもそういう努力して必死にがんばっている人は、
いるんだからさ、俺は、そういう人にこそ、頼んで題字を書いて
もらったらいいと思うんだけど、、。

でもそうじゃなくて見せかけばっかで
派手だったらそれでいいような
ニセモノに惹かれる、っていうのは選んだ人間の
見識も疑うし、見ていても見せられるほうも哀しい。


今回のお話はお眼汚しだったかもしれませんね。
ご不快な部分、失礼の段がありましたら、お詫びいたします。

ですが、公に発表された作品については、
Critiqueもあっていいかな、と思ってここに記すことに
しました。
正直、大河ドラマの題字、
立て続けにちょっとひどいな、と思ったので。

そういうことを今回の題字を見ていても
思った謙介なのでありました。


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Comments

 ああ,確かにタツノオトシゴそっくり(笑)

 なんだかべたーっとした字だなと思ったら,そんな書き方してたんですねえ。

 今,書は「道」から「アート」へ!(あーあ;;;)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 10. 06. 29 at 오후 11:10

---Ikuno Hiroshiさん
タツノオトシゴをねらったんですかねぇ。(笑)もうね。彼女の筆づかい見たときには、正直、目が点になりましたですよ。松田優○の台詞じゃないですけど、「なんじゃこりゃー」って思わず画面に向かって叫んでしまいました。 うーん。前回の天地人もそうですが、今回の字のようなものがもてはやされるのは、ある意味時代の転換点なのかもしれないですね。一時のあだ花と思いたい、んですが、、やれやれなことでございます。

Posted by: 謙介 | 10. 06. 29 at 오후 11:45

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