« 明暗 | Main | Comida mexicana »

10. 06. 10

文字の「生理」

Tate


写真の文章は、アサヒから出ている雑誌の『AER○』、
いつもおしまいのほうに中田英○氏の連載があるのだけど、
その文章の一節を手許にあった水性ボールペンでささっと書いて
みたもの。

こうやって実際に自分の手を使って書いてみると、日本語の
文字の成り立ち、というのか、この国の文字のできあがってきた
過程が改めて自分の指先で感じられる気がする。

漢字もひらがなも、文字を書くときの大原則というものが
あって、その1が 上から下に書いて行く、というもの。
それから右から左へ、というのが大原則の2。

字の構成要素の中でも特に「縦画」の果たす役割は大きい。
この縦画がすっきりした線で書かれているかいないかで
文字の視覚的な印象が全く異なってくる。

特に手書きの場合縦画がすっきりした字に
なっていないと、読むのに苦労するのだ。
なので、字を習ったことのある人は、最初の基本点画の
書き方のところで、先生から何度も縦画の書き方の
注意を受けた人もいると思う。
縦画がすっきり書けているかどうかで
それほど縦画の「意味」は大きい。
だから指導する先生は縦画の線について
うるさく言うのだ。

縦書きのすっきりとした線が書ける、というのは、
もうそれだけで「才能」と思うくらい縦画のすっきりとした
線を書くのは修練が要る。

前に日本語の脳の中での言語処理の速度について
脳波の実験をしたことは何度か書いたと思う。
日本語の場合、縦書きの文章と、
横書きの文章(文はまったく同じ)を見せて
どちらの文章の脳の言語処理の速度が速いのか
比較対象実験をしてみたら、やはり縦書きのほうが文字列の
認識が早かった。
横書きの文章になると、やはり文字の認識処理速度が
縦書きに較べてホンの少しずつ遅れる。
最初はその遅れがホンの少し、で済んでいるのだけど、
それが長い文章を読まされた場合、となると、
元々微妙に遅かった横書きの文字の認識処理速度がもっと遅くなる。

短い文章であるとか、
図表とか数式を使ったものが中心で、
言葉は添えもの程度、というものであれば
横書きでもいいのだけど、長い文章になると
日本語の場合やはり「しんどい」ということ
の科学的な証明なのだと思う。

どうしてそうなるのか、といえば、
日本語の文字は「縦書き」の中で
出来てきて、完成された文字だからだ。
さっき縦画がすっきりしていないと字の印象が
異なってくる、と言ったけれど、
もっと言えば、文字群の字の認識速度だって
全然違ってくる。
読みやすい字であれば、当然文字認識の処理速度
だって早くなるのは当然のこと。
読むのに難渋するような字だと
さっさと読めるはずがないではないか。

ちなみにさっきの同じ文を横書きにしたのがこちら。

Yoko
縦書きの場合、どこに注意して文字を書いていけばいいかと
言えば、基準線だ。
(といっても、実際に引きはしないけどね。あくまで目測)
文字列を構成させるために基準となる線を考える。
それは文字の下端を合わせるのでもいいし、
文字の中央を合わせるのでもいいし、
上端を揃えるのでもいい。
どこか一ヶ所、字を揃える基準を置くこと。
そうしたら、文字列がグニャグニャとゆがんだりせずに
見える。文字列がゆがんでしまうと、視覚的に
見づらい。


で、俺の書いた縦書きのものを見てもらったら分かるけれども
文字の大きさというのは決して揃えたりはしていない。
画数の多い文字はうやや大きめ。
画数の少ない文字はやや小さめ。という原則があるのと、
さらにお互いの前後の字の画数の多少によって
微妙に文字の大きさをわざと変えている。

なぜ、そういう微調整の処理を行うか、といえば、
画数の多い文字と画数の少ない文字を同じ大きさで書くと
画数の少ない文字のほうがやたら大きく見えてしまうことになる。

それでは大きく見える字が必要以上に目立つ。
そうなると文字をすらすらと読めない。文字を読む速度が
落ちてくる。

だから、そういうことのために字の大きさを多少
変えて書いている。
でも、ワープロソフトのフォントは、字の大きさが
決まっているので、そういう微調整ができない。
せいぜいひらがなはやや小さく、漢字は大きく
という程度ではないかと思う。


ところが横書きで書かれた文章をすっきりと見せる方法は
ひとつだけ。 字の中心線を設定する。これだけ。
上下が他の字でふさがれてしまうので、字の大きさに
変化をつける、ということができにくいのだ。
それから、ペンの動きが/↓/↓/↓ というふうに
動くので非常に書きづらい。
俺が日常仕事で書いているのは圧倒的に横書き
なのだけど、これだけ書いてもやはり横書きは書きづらい。
やっぱり日本語の文字、というのが縦書きを原則に
完成してきたからだ、と思う。

だから、ハングルだと認識速度は俺の場合、横でも縦でも
あんまり変らない。ハングルは表音文字だから。

しかし漢字は表意文字だという決定的な違いがある。

横書きは、やっぱり読みづらい、
ということをここまで書いてきて、
なーんだ、ということに気がついた。

それはうちのブログを見たら
一目瞭然じゃないか。(笑)


うちのブログ、毎回の
文章が長いから、長い文章を読むことが
苦にならない人でないと、再び訪れて読んで
くださらない。(笑)

ほらね。

もうこれはすごくはっきりしている。
パッと見て、「何だこの長い文章は。読みづらい。」
と思う人は、二度とこない。で、そういう人が結構多い。
(まぁそこで謙介のブログ、再度読んでくださるか、もうええわ、
こんな長いの、と拒否するか、自動的に読む側を選別している
ということがあるんですけどね。笑)
だから長い横書きの文章ってやっぱり
読みづらいんだよ。

(それを分かってて横書きの長い文章を書いてる
困ったおっさんなのであった。)

|

« 明暗 | Main | Comida mexicana »

おもうこと」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91870/48564533

Listed below are links to weblogs that reference 文字の「生理」:

« 明暗 | Main | Comida mexicana »