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10. 05. 11

人はいつも

えーみなさん。
こないだIkunoさんに、謙介、目下、続日本紀を
読書ちう、とお知らせしました。

続日本紀(しょくにほんぎ)って読んだことありますか?
(「そんなもん知らんがな。」って言うようなものですかね。)


Shokunihongi2

謙介は、実はこの続日本紀が修士論文の研究文献
のひとつだったので、読む、というより何度も
何度も見ては使った資料です。なので上の写真を
見ていただいてもわかるように、
処々方々に線が引いてあったり書き込みが
あったりします。

何でこの本を出してきたか、といいますと
この続日本紀の巻の5、時代としては
和銅3年の正月から和銅5年の
12月までのことが書かれているのですが。
(天皇で言えば、女性天皇の元明天皇の時です。)
この和銅3年3月10日の記録に

 辛酉。始遷都于平城。以左大臣正二位石上朝臣麿為留守。

これが平城京遷都の記事です。
もちろん、平城京造営の工事はずっと前から行われていて
そうした上で、和銅3年のこの記述になったということです。
併せて旧京になった藤原京の留守居役として
左大臣の石上朝臣麿を任命した、と。

でも平城京遷都の記述としては
たった10文字すらないような記述。これだけです。
それが西暦で言えば710年のことであった、と言う
わけです。

続日本紀は、文武天皇から聖武天皇の時代の
記録ということです。ですから、最初の辺は
平城京遷都の草創期の
記録でもある、ということです。

今、奈良はその平城京遷都1300周年記念のイベントとかで
で賑わっています。いつも夏の書道展の連絡係を
してくれている奈良市雑司町に住む友達が
今年の作品の要項の連絡とともに、
「今の間に一度おいで」と電話をくれました。
「人の多いん嫌やし。」
「でもちゃんと作品は出すねんで。」
「ひえええええ。」
「出さなあかん。」
と叱られてしまいました。(笑)


まぁいいや。話を元に戻します。
なぜ俺が1300年のイベントにあんまり興味が
ないか、と言うと、こういうことです。

確かにこの平城京、「咲く花の匂うがごとく」と
歌われていて、そういう華やかな一面もあったかもしれません。

この頃の庶民は竪穴式住居に住んでいましたから、
そんな竪穴式の家から見たら、青い瓦に赤い柱
白い壁の巨大な建造物群なんて、見た人誰もが驚くほどの
当時の最先端の都市建築群であった、と思います。

ですが、ずっと続日本紀の記録を見てきた人間としては、
その最新の都市建築群を造営するための庶民の負担や
犠牲というのも、相当なものがあった、と思うのです。

続日本紀は統治者側の記録です。
なので、一般の庶民の暮らしを見るときは
そうした記録に書かれていない「背後」を想像
することが必要になってきます。

謙介はそうした記録の背後に垣間見える
当時の庶民の暮らしのしんどさ、をどうしても
考えてしまって平城京遷都1300年のイベントイベント
と、お調子よくは決して喜べないわけです。

たとえば、和銅5年の12月29日に出た詔(みことのり)
の中の一節には
 「諸国役夫及運脚者。還郷之日。糧食乏少。、、」
とあります。
平城京の造営工事の賦役に従事するために
田舎から刈りだされてきた人が、
日が満ちて故郷に帰ろう、としても、帰路の
間の食べ物さえ満足になかったのです。
おそらくは旅の途上で飢え死にした人も
いたでしょうし、都に来ていてその工事現場で
病気で亡くなった、という人も少なからずいた、と
思われます。

こうした当時の国民の多くの犠牲があって
平城京は形を整えていった、という
ことです。
まったく、昔も今も庶民というのは、
税はごっそり取られるわ、生活は踏みにじられるわ、
こき使われるばかりで、本当に生きていくのが大変です。
これは1300年経っても、全然変っていません。
やれやれ。


それから、話は変って、これまた続日本紀を見ていて
興味深いことなのですが
今と同じような日本人の宗教観というのが、
もうこの時代にあるんだ、ということが分かります。
というのが、新しく天皇が即位したら、
「宣命」が読まれます。 以下、文武天皇の後に即位した
元明天皇の宣命です。 実は文武天皇さん、期待されて
天皇になったのですが、あんまり身体が頑健ではなくて
病気になって、天皇を譲位することになったのです。

文武天皇の陵墓は、去年、明日香に行った
時に寄ったのですが、高松塚古墳のすぐそばに
あります。

誰に譲位したか、と、言えば、文武天皇のおっかさんの
元明天皇でした。元明天皇の宣命にもそういう
ことがちゃんと書かれています。
「前の天皇が病気になって、わたくしに天皇になってくれと
言われたのだけど、私はできません、って言って
辞退をしたのです、だけど、どうしても、ということですので
お引き受けすることにしました。」


現神(あきつかみと)八洲(おほやしまぐに)
御宇(しらしめす)倭根子(やまとねこ)天皇詔旨勅命
(すめらがおほみことらまとのりたまふおほみことを)
親王(みこたち)諸王(おほきみたち) 諸臣(おみたち)
百官人等(もものつかさのひとたち)
天下公民衆(あめのしたのおほみたらからのもろもろ)
聞宣(きこしめさへとのりたまふ)
関母威岐(かけまくもかしこき)藤原宮(ふぢはらのみやに)
御宇(あめのしたしろしめしし)倭根子天皇(持統天皇)
丁酉(ひのとのとりの)八月爾(はづきに) 此食国
(このをすくに)天下之業乎(あめのしたのわざを)
日並所知(ひなめしの)皇太子(みこ=草壁皇子)之
嫡子(むかひめばらのみこ) 今御宇豆留(いまあめのしたしろしめしつる)
天皇(文武天皇)爾授賜而(さづけたまひて)
並坐而(ならびいまして)此天下乎治賜比諧賜岐
(このあめのしたをおさめたまひととのひたまひき)
是者(こは)関母威近江(かけまくもかしこきあふみ)
大津宮(おほつのみやに)
御宇大倭(あめのしたしろしめししおほやまと)
根子天皇(ねこのすめらみこと=天智天皇)乃与天地(あめつちとともに)
共長(ともにながく) 与月日共(つきひとともに)遠(とほく)
不改(かはるまじき)常典止(つねののりと)
立賜比(たてたまひ)
敷賜覇留(しきたまへる)法乎 受被賜坐而
(のりをうけたまはりまして)行賜事止
(おこなひたまふことと) 衆(もろもろ)受被賜而(うけまたはりて)
恐美(かしこみ)仕奉利豆羅久止(つかへまつりつらくと)
詔命乎(のりたまふおほみことを)衆聞(もろもろきこしめさへと)
宣(のりたまふ)

実は、これ、まだほんの最初の出だしの部分だけなんですけど
打つの嫌になっちゃったので(笑)これくらいにしておきます。
読むほうだって、なんだこれは、というようなものかもしれ
ませんが。(笑)

この文章、漢字でかかれてはいるのですが、この中には
漢字の熟語はありません。純粋のやまとことばで書かれています。
この国の八百万の神に、新しく天皇になったことを報告し、どうぞ
その統治が平穏にみのりのあるものになりますように、と祈った
告知の文章なのですが、でも、こういう文章を書きながら、
ホラ、みなさん、ご存知のように一方では仏教を受け入れて
いたわけです。
片方では八百万の神に、、といいつつ、片方では
釈迦如来に祈りをささげる、ということをしていました。
神道と仏教がもうちゃんと並存していたのです。
こんなの日本以外の国では考えられないことでしょ?
外国であれば、どれかひとつの宗教です。
神道で行くのなら神道で。仏教で行くのなら仏教で。

でも、日本は神道もオッケー。仏教もオッケー。
何でもあり、です。今だってそうですよね。
お正月、祇園の八坂神社に行って、それから清水寺に
お参りに、なんて、ごく普通にみんなやっているではありませんか。
誰も変、とは思わないし、そんなの変じゃないか
と誰も言わない。

すでにもうこの時代だって、こんなふうです。(笑)
ごめんなさい。今日はえらく謙介の専門のほうに
入ってしまいました。
ただ、まぁ、ちょうど自分のやってた部分が
そういう平城京遷都の時期も入っていたもので。
ついでに書いてみたようなわけです。

歴史って、いつも言うように何年に何があった、
なんてただただ暗記するような勉強では決してないと思います。

そのときの人間が何を思って、こういう行動に
出たのか、ということを史料を元に客観的かつ
科学的に考えていく学問じゃないか、と思います。
もちろん人間ですから、相手に対する好き嫌い
だってあるでしょうし。(笑)

時代を経て変っていく部分。
何百年経とうと変化しない部分。

そうしたさまざまなものがないまぜになって
歴史を作っていっているのだ、と
思います。


インターネットのニュースを見ていて
文系人間が、やれやれ、と思うことは
なんか今までと違う変化とか事件があると
急に「それは異常なことではないか!!!」
と大騒ぎをすることがあることですね。
そんなもの、過去の歴史を見たら、似たような
事件とか事例なんて結構あるわけです。
過去は未発達、現代、未来と次第に発達していく、
という思い込みがあるんでしょうかねぇ。

人の変わらない営み。
変化してきた営み。

もうちょっと歴史のそういうところを
見たらいいのに。マスコミって
騒々しく言い立てるばっかりじゃないか、
と謙介は思っているのです。


さて、続日本紀も後半にさしかかりました。
久しぶりに、細かいところに気をつけながら
読んで行きたいと思います。

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