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10. 04. 26

こんぴら歌舞伎(1)

更新が遅くなってしまって、、
実はついさっきまで加賀乙○先生の
講演会を聞きに行っていたので
帰りが遅くなって、更新も
遅くなってしまったのでした。

それでは早速。
土曜日、こんぴら歌舞伎を見てきました。

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Konpira104


見に行ったのは、うちの両親とこれを見るために帰ってきた
姉と俺の4人です。今回の席は、は列の4番という席でした。


Konpira1015


金丸座の花道は主の花道と副の花道と二つある、
というのは去年のこんぴら歌舞伎のご報告でしましたよね。
昨年は「新口村」の芝居で、両方の花道を効果的に使って
いた、ということをお話しました。
枡の席は、その主の花道の左側からい、ろ、は、となっていて
4番めというのは前から4番目の枡、ということです。

実は、今回この枡を買ったときに少し不思議なことが
あったのですよ。普通金丸座の枡は
一枡5人が座るようになっているのですが、うち一人分が
最初からここは、と、売らない席になっていたわけです。
もうここは「ないもの」として4人の定員で出ていた、
ということです。
今まで、謙介、何度かこの金丸座の歌舞伎を
見てきたのですが、その経験で、
こういうふうに「空席」にしている場合は
芝居の中で何か演出上で使われる、という
場合がある、ということが想像できました。
ましてやこの「天下茶屋」は、お客さんを「いじる」演目です。
お客をいじるというのは、公演中に客席の中に入っていくとか、
お客さんと掛け合いの会話をする、ということです。
ひょっとしたら、という予想があったので
大変なことがあったらご報告します、
と申し上げたのでしたが、
で、以下大変なこと(笑)のご報告です。

前回の文章で、俺はこんぴら歌舞伎の特徴として
役者と観客の距離が近い、ということを
お話しました。


でもそれは役者さんを1メートルくらいの距離
で見ることができるから、ということがあったので
そう言ったのでした。
実は今回は、そんな近くで見られる、なんていうような
生易しいものではありませんでした。

だって、澤瀉屋さんったら俺の肩に手を置いて
芝居をしたんですもん。
(あ、澤瀉屋さんというのは
市川亀治○丈の屋号です。)
市川亀治○丈の手が、すっと伸びておらの肩にポンと
つかまったわけです。
ひええええええ。

ええ。観客と役者の距離は確かに近いです。
横15センチです。しかも手が肩です。
もうむちゃくちゃ!※△■×◎φσβ?!!!

お話したように演目は天下茶屋村のお話
だったわけです。
あ、そうですね。正式な外題は
「敵討天下茶屋聚」といいます。
読み方は「かたきうち てんかじゃやむら」
まぁ比較的素直な読み方をするほうの(笑)タイトルですよね。
歌舞伎の外題の字数は縁起かつぎで4文字を避けて
奇数の文字、というのが多く、その奇数の中でも
比較的5文字と7文字とすることが多いのですが、
(例外もありますが。)今回は7文字でした。

芝居は進行して
いよいよ最後の場面。
あだ討ちを迫られる安達元右衛門(市川亀治○丈)は、
そのあだ討ちの
追手から逃げ回ることになるわけです。
亀治○丈が舞台から花道に来ました。
そうして、俺の筋のあたりで立ち止まりました。
升席には、一列おきに少し幅の広い板が渡されていて
そこを平均台のように歩いて、自分の席に行く、という
いわば通路の板になっているのですが
その板の上をつつつつ、と、亀治○丈が
歩いてくるではありませんか。
で、うちの枡に来ると、
うちのオフクロの持っていた道行コートをさっと取り、
かぶって伏せてしまいました。
で、その身体を安定させるために
俺の肩に手を置いたのです。

こういうわけで
俺の横、15センチのところに
澤瀉屋さんが座っていて、俺の肩に
澤瀉屋さんの手が来たわけです。
謙介、すっかり固まってしまいました。
どうしましょう。身動きなんてとてもできません。


そうしているうちに
追っ手役の二人が花道にやってきて
座席に向かって、「この辺に怪しげな奴が
来なかったですかい? 」とか聞いているわけです。
もちろんお客さんは首を横に振ります。
そうしたら「あにきぃ。どうも今日のお客さんは
元右衛門の味方をするお客さんばかりですわい。」
「困ったものですなぁ、」とか
なんとか。
そうこう言っているうちに亀治○丈、うちの
おっかさんのコートを脱ぐと今度は
枡席の区割りなんて全く無視して客席を出口に向かって
縦にどんどん割って歩いて行きます。
もうあらゆるところから握手の手は出るわ、さわりまくるわ、、

追手からこっそり逃げている奴が、こんなにきゃあきゃあ
騒がれて大人気だったらあかんがな、というような
大盛り上がりです。
そうして今度は副の花道から、はしごを渡して2階席に
あがって2階席を歩きまわります。
もう劇場中が「そりゃあもう大騒ぎさ」状態で、全館これ
「きゃあきゃあ♪ 」のるつぼです。


実は、この天下茶屋村って、
歌舞伎のお評論家連中にはすこぶる付きで評判が
悪い芝居なんですよ。
というのも、この芝居は、こういうふうな観客受けを目指そうと
するあまりにこの元右衛門(今回、市川亀治○丈の役)の
各場面それぞれの、人物の性格付けが
全然違って描かれているのです。
全く統一性がなくてちゃらんぽらんな描き方なんです。

二幕目の東寺裏貸座敷ではコミカルな
人物だったかと思うと、三幕目の天神森の返り討ちでは、冷血無比な
悪役だったり、大詰めの天下茶屋村では、先にあげたように
客席を走り回ってのドタバタ喜劇です。
かくの如しで全然人格に統一性というものがありません。

場面場面でお客さんから、どうしたら受けるのか、ということを
優先して、どんどん芝居を書きかえていったがために、
同一人物にもかかわらず、
その人間像が「さっぱり訳の分からないもの」ということに
なってしまったのでした。
それを歌舞伎の「お評論家」の方々は
「変」と言っていて、この元右衛門、本当に
「鵺のようなヤツ」ということになっています。

それから、お客さんをいじるのが下品、という声もあります。
あんな大衆演劇みたいなことをして、、。
と、露骨に嫌う人も結構います。

そういうところは確かにあります。
でもね、俺は敢えてこう思うんですよ。
歌舞伎って西洋の演劇とか
日本の近現代の芝居とは違うわけでしょ。
近現代の芝居のように、「心情描写」を深く掘り下げまくる
ということであれば、はたまたギリシャ悲劇のような
ものであれば、主人公のそうした心情を深く表現する
というところがきちんと描かれてあっても不思議は
ないと思うのですが、俺は歌舞伎というのは
前にも何度か言いましたけれども、能と近代演劇の
間にあって、その両方の要素を持っているものだ、
と思っています。もっと言ってしまえば
歌舞伎なんて俺は「何でもあり」の芝居じゃないか、って
思っています。

そもそも心情描写がどうのこうの、っていうのであれば
時代考証についてはどう考えたらいいのですか?
時代考証なんて最初からハチャメチャじゃないですか。
史学科の人が見たら、アホか、というくらい、
変なことなんて山盛りで出てくるではありませんか。
あの立ち回りだって、あんなもの、「様式」以外の何物でも
ありません。

むちゃくちゃなことがあったとしても、それでも、
この芝居はこういう話なんだから
と、言ってしまうのが歌舞伎です。
「しぇいくすぴあ」だって、翻案してさっと取り込んでしまうのが
歌舞伎です。

歌舞伎の演目の中には確かに心情描写を深く掘り下げる、
そういう芝居を求められる演目だってあります。
勧進帳の冨樫だってそうですよね。
去年の新口村だってそうでしょう。

でも、そうでない演目があっても、それはそれで
歌舞伎の幅の広さ、だと思うのです。
ハチャメチャで楽しい。でもいいじゃないですか。
そういう芝居があったって。

それだからこそ、
何も基礎知識がなくても、全然それまで歌舞伎なんて
見たことのないような外国の人でも
いきなり歌舞伎を見て、すごいーとか
オウ、カブーキィ、とか言って感心できるわけでしょ。

歌舞伎ってそうした「何でもあり」だからこそ感動できる、という
部分だってあるように思うんです。間口の広さというのか
何でもオッケーって言って、清濁併せてぜーんぶ
呑みこめてしまうところが
歌舞伎の身上だと思います。

何も「しんねりむっつり」ばかりじゃないですもん。
バカボンのパパのように、歌舞伎であるなら、すべてが
「それでいいのだ。」で押し切ってしまったところで
俺は別に問題ないと思います。
それこそが歌舞伎の魅力ではないのでしょうか。
俺はそう思っています。

きょうのところは一番ご報告したい部分に
限ってお話しました。
この次は簡単に順を追って
お話したいと思います。

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Comments

 ・・・明治の演劇改良運動とか?(苦笑)

 無造作に置かれた手から,ぬくもり,そしてかすかな湿り気が,肩に伝わってきた。
 整えようと潜めた息づかいが,道行きコートの下から耳に入ってくる。
 どうしたらいいかわからないまま,彼はじっと坐りつくしていた・・・

 なんちて(笑)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 10. 04. 26 PM 11:18

---Ikuno Hiroshi さん
↑でも何とか抑えて書いたんですが、、
もうねぇ土曜の晩は、興奮してしまって、、寝られませんでした。もう歳も歳なのであんまり興奮とか硬直とかしないふうになっていたのですが。いやはや。久しぶりで興奮・硬直してしまいましたです。

Posted by: 謙介 | 10. 04. 26 PM 11:47

なんとw(゚o゚)w
羨ましい限りです。普通の劇場なら、いくら花道横であっても1メートル近くは離れてますしね。
しかもタッチですって!!お母様のコートや謙介さんの肩には、白粉はついてませんでしたか?もし白粉ついてたら、洗わずそのまま取って置きますね、僕なら(笑)
こんぴら歌舞伎のマスコットキャラで、「こんぴーくん」なるものがいるそうですが、会場にいましたか?卵に隈取した顔を描いたキャラクターです。
良いお天気のもと、良い見物が出来て良かったですね。

Posted by: mishima | 10. 04. 28 PM 4:26

---mishimaさん
いえ、おしろいはついてはいなかったのですが、オフクロの道行コートは、もう洗濯なんてできないね、ということを帰りの車の中で言い合ったのは言うまでもありません。(笑) こんぴーくん、この日はいなかったのですが、地元新聞の報道によりますと、歌舞伎初日には、来て、しっかりお客さんをお迎えした、とのことです。俺の行った日の翌日がもう楽日、だったのですが、この日もきっときていたことでしょう。今年はみんな銀座方面に取られた分、亀治○丈が一人気を吐いた、というのか活躍に目を瞠りました。最後のカーテンコール(歌舞伎で、ちょっと変ですけどねぇ。)のときも、どうだぁぁぁ、という満足げな表情がお顔に満ちあふれていましたもん。
行くまではお天気いまひとつ安定していなかったのですが、大過なく行くことができまして本当によかった、と思っております。

Posted by: 謙介 | 10. 04. 28 PM 8:31

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