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10. 03. 10

通りすぎていくだけのもの、記憶に残るもの

文章でも何でもそうなのだけど、発表をして
一度作者の手を離れてしまったら
その作品は独り歩きをはじめてしまうものだ。

このブログもそうなのだけど、
一度アップした文章は、どんなふうに
読まれようと、もうそれは仕方のない
ことだ。

そうだということは分かってはいるのだけど、、

中学校の時の同級生でOくんという
ヤツがいる。彼のことも何度か
ネタにして(笑)しまったのだけど、、。

あの頃彼の家は家具屋だった。
そのまま行ったら彼も家具屋の若旦那
としてあとを継ぐ、というはずだった。

彼は最初、生物クラブにいて
ダンゴムシの研究をしていた。
来る日も来る日も校庭の隅の石を
ひっくり返してはダンゴムシを
集めてきては、その生態を研究していた。

生物クラブの先生は、彼と同じ苗字の
おばちゃんの理科の先生だった。
このおばちゃんの先生がもう怒ったら
とんでもなく恐ろしい先生で、、、
いきなり何の前触れもなく、「はい、今から
第二分野のノートを集めます。」と言いだして
それできちんと授業のノート整理ができて
いなかったら、一人ずつ理科室にお呼ばれ
されて、「あんた、(勉強)する気があるんな、
ないんな。」と鬼のように追及されるのだった。

その先生が生物クラブの顧問だった。
その鬼顧問が、生物クラブをいつも叱咤しまくって
いたので、うちの中学校の生物クラブは
市の科学体験発表とか県の文化祭では
1位とか2位が常連だった。
それどころか、以前はソ○ーの科学賞
っていうようなものがあって、(これは当然日本全体から
の応募)それにだって指導した生徒が
銀賞になる、というような先生だった。
友達のOくんは、そこで、一夏かかって
ずっとダンゴムシの研究をしていた。
そうして、その先生の「根性を入れた」指導の
ご成果もあって、そのダンゴムシの研究は
市の代表になって県の文化祭の科学発表部門で
銀賞になったと記憶している。

その発表が終わって、全校朝礼で彼に賞状が
伝達された後で、彼は言った。
「ボク、生物クラブやめる。」
「どうするの? 」
「ギターを習いたいんや。」
「どうして? 」
「生物クラブやっりょったら、空しいんや。」
「ふん。」
「女の子にもてたいんや。」
「おおっー 」
中学男子にとって、その退部理由は確かに一理
あるようにも思えた。

その後、退部を言いにいった彼と鬼の生物クラブ顧問との
恐ろしいやり取りがあったのは言うまでもない。

しかし、どこでどうしたのか、彼はとにかく
生物クラブをやめた。
そうして、念願のギターを習うことになった。

夏休み毎日校庭の隅の石をひっくり返しては
ダンゴムシを集めていた彼の熱心さは
今度は生物学方面から音楽方面に移行することに
なった。
凝り性の彼だったからねぇ、、。
何度か彼のギター演奏を聞かせてもらったことが
あったのだけど、最初は、「お上手お上手」という
程度だったのが、3年になった春には、
「ひえええ。どうしたん、その演奏。」
というほどになった。
そして幾星霜。
彼はプロのギタリストになった。
マキハラくんとかワタナベミサト嬢、
サザンのアルバムでも彼はギタリストとして
参加している。もちろんアルバムには彼の名前が
ちゃんと入っている。
最初の動機は不純だったけど、
でも日本国中にそんな不純な動機で
ギターを、バンドをはじめるヤツなんて
ざらにいると思う。
だけど、そんな中で、プロのギタリストになって
ここまでの技量を持って活躍する、というヤツに
なったら、あんまりいないんじゃないだろうか。
彼は今、ギタリストから音楽製作へもその
範囲を広げている。

俺ね、彼がこの前実家に帰ってきたときに
どうしても聞きたかったことがあってさ、
それを聞いたの。

「たとえばさ、ちゃんとCDを買って、とか
聴く態勢になって、音楽を聴いてくれる、
っていうのだったら、うれしい、って思えるよね。
だけど、音楽ってさ、そういう聴く態勢になって
いない場面でもあふれてるわけでしょ? 
うーん。早い話が、パチンコ屋に行った、と。
そうしたら、ヒロの(友達のこと)演奏した
音楽が流れてきたりすることだってあるよね。」
「ふん。」
「その時、どう思う? 」
「ああ、なぁ、、それ、うん。何度もあったけど、、
もうなぁ、その時の気分やわ。 こっちの気分が
あんまり良くないときは、何でこんな場所でかかるねん、
とか思う時もあったし、こっちの気分がええ時は、
おっ、流行ってるやん、とか思ったり、、。
でもまぁ、基本的にCDになってしもうたら、もう
しょーないやん? 謙介やってそやろ? 」
「まぁなぁ、文章を発表してしもうたら、もう
それは俺の手から離れてしまうからなぁ、、。」
「そやし、もうあれこれ思わんようになったわ。」
「まぁ、あれこれ思ったって、仕方ないか。」
「そやねん。」

という話をしていた。
うちのブログも(多分これは謙介の勝手な想像なのだけど)
毎回この長い文章を
我慢して(笑)読んでくださる方もいれば、
たまたま何かの検索でここにやってきたは
いいけれども、パッと見て、「なんじゃこりゃ、ダラダラ
書きやがって、こんな長いの読んでられへんわ。」
って辟易として早々に立ち去る、という人も
いるんじゃないか、と思う。

もう、それは文章をアップしてしまったら
書く側の手を離れてしまうものね、、。

彼とそんな話をしていたのが今年の正月だったのだけど
そんな彼のところに、今度新しくできる学校の校歌を
作ってくれ、という依頼が来たのだそうな。

(その学校は市内の学校がいくつか合併して
できる新設の学校。どこでもそうなのだけど
市内中心部の人口が減っていて、そのために
市内の学校を合併することになった。 彼は
その合併する中のひとつの学校の卒業生
だった。 )

校歌、となったら、どこからか流れてくる音楽
などではない。聴く、歌う、という態勢にちゃんと
なって(笑)しかも永く歌い継がれていく曲になる。
一瞬では終わらない。
そんな「作品」を残せるんだ。うらやましいぞ。

おそらく彼のことだから、「おっ」というような
曲を作るんじゃないかなぁ。
今から聞かせてもらうのを
俺はすんごく楽しみにしている。


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