« 酒瓶林立の部屋 | Main | 焦りまくりの練習開始と音樂會 »

09. 10. 30

漢字表

Kanjihyo


この真っ赤な表紙の本が「常用漢字表」
謙介の場合は業務上、一応この表を見て
文字の字体を確認することがあるので、
こうして持っています。

よく聞く話が、常用漢字表に入ってない漢字が
あって、それは問題だぁ、というニュース。
確かに今の漢字表、できたのが1981年ですから
もう28年も前の話です。
その間、世の中の移り変わりは大きくて、
漢字表記もずいぶん変化をしてきたように
思います。表記が変わってきた、ということは
使われる漢字もまた時代の変遷で違ってきた、
ということなのでしょう。

ただ、この常用漢字表、大きな矛盾を最初から
抱えていたように思います。
そしてその矛盾は今も解消されていないのです。

この常用漢字表を開くと次のような告示が載っています。

     一般の社会生活において現代の国語を
     書き表すための漢字使用の
     目安を、次の表のように定める。    
     (以下法律の改廃についての記述は省略)

                     昭和56年10月1日
                      内閣総理大臣 鈴木善幸

と、あって、前書きの一番最初にはこう記されています。

    この表は、法令、公用文書、新聞、雑誌、
    放送など、一般の社会生活において、現代
    の国語を書き表す場合の漢字使用の目安
    を示すものである。

と、書かれています。もう気がつかれた方もおいでと思いますが、
漢字使用の「目安」と2度も書かれているわけです。
目安、っていうのは、大体この程度は知って使うんやったら、まぁ
スタンダードやなぁ、という標準、ということだろうと思うのです。

しかも、前書きの2、3項目にはご丁寧にこうも書かれています。

    この表は、科学、技術、芸術、その他の各種
    専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうと
    するものではない。

    この表は固有名詞を対象とするものではない。

 

ってあるんです。実は、常用漢字表の大きな特徴が「目安」という単語でした。
この常用漢字表の前に使われていた当用漢字というのは、目安ではありませんでした。
拘束力を持っていて、通常の漢字使用は、この漢字を使え、仕方なくこの漢字以外の文字を
使う場合はやれ振り仮名をつけろ、だの、ああしろ、こうしろ、と結構うっとうしいことが
書いてありました。

実はこの表をつくるときにももめたのだそうです。
東京の学者さんたちは、当用漢字を踏襲して
拘束力のあるものにしよう、と言い、
京都の学者さんたちは、そんなもの、個人の自由でええやないか。
いちいちお堅いこと言わんでも、、と言ったとか。
で、まぁ例の玉虫色の解釈で「目安」という言葉が出てきたわけです。
(国語学者の会だから、そんな言い換えは得意中の得意。笑)
で、目安になった、と。

目安、って言ったら、個人の裁量でこの漢字表にない漢字を
使ったって、いいんじゃないの? って思いません?

ねぇ。そうしたら、ですよ。
人の名前だって、そうじゃないですか。
常用漢字表に載ってない字だってええやんか、
ということになりません?
だって「目安」なんだもん。

ところが、ご存知のように市役所とか区役所に
子どもができて名前を届けるときに、
難しい漢字を充てて凝った名前をつけて出すと
あきまへん、と拒否されるんですよね。
常用漢字表及び人名漢字表にこの漢字はありませんから、
とか言って。

だって、「前書きに「目安」って書いてあるんやし、
別にその通りでのうてもええやんか。」と思うのですが
お役所は許してくれないのです。

ここなんですよ。俺の言う矛盾、って。
目安、とか言いながら、適当でいいのか、と思ったら、
実際はこういうふうに拘束力を持っていたりするのです。
つまり看板と実際の運用状況が全然違うわけです。


それからまだ大抵の人は、前の当用漢字の
イメージがそのままあって、これ以外の漢字は
使っちゃダメなんじゃないか、っていう刷り込みが
あって、なんだか強制的にこの漢字以外は
ダメ、なんて思ってる人も結構いるようです。

東京って、やっぱり中央政府がある場所だから、
そういう拘束力をかけてしまう、とか、
「きちんとしないといけません。」
っていうのが好きみたいですね。(笑)
目安、を拘束力のあるものにしようとしているのも
「東京のほう」です。
京都は例によって「そんなもん、どっちかてええがな。」
です。


でもね、本当に常用漢字表の字で
しょっちゅう使う字なのに入ってない字って結構あるんですよね。
早い話が、俺の苗字の字だって入ってません。
だから名前を届出するときに、常用漢字表にないからダメ
なんて言うのは、
「目安」のくせに拘束力を持ってる、と、矛盾している上に、
「そんならうちの苗字は常用漢字にないやんけ。それでも
遣ってるで。」でさらに矛盾しているわけです。
矛盾の二乗状態です。


新聞の投書で書かれているのでよく見るのが、
「日常的に使われるはずのあの字もこの字も
常用漢字表に入っていない。問題ではないか。」

という投書です。最初に言ったように、
使われる字、って、やっぱり時期によって
流行があります。だから30年前と今では
やっぱりそういう遣われ方に差がどうしても出てきます。
それでまぁそういうふうに使われているのに
入ってない、っていう問題が起こるのですが。
そこで大事になってくるわけですよ。「目安」っていう言葉が。
別に入ってなくたって、目安なんだから、
これは最低限、というかまぁスタンダード、
っていうことだから、入ってなくてもいいんだよ、と。

それに3項目に固有名詞には当てはまらない、
と書いてあるじゃないですか。
地名の字が常用漢字に入っていない、って
言ってる人がいますが、たぶん、そういう人って
ホントは、常用漢字表を見たことない、人だと
思います。見てたら、ちゃんとそう書いてあるわけで
そういう地名だから入ってない、って、文句を言うことには
ならない、って思うのですが、、。


しかし、この基本方針と実際の運用上の矛盾は
何とかして欲しい、と俺は思います。

目安とかいいながら、
そのくせ、審議会委員のオオノスス○さんが
案を見て、「わたくしの名前の漢字が入っていない。」
と言ったら、次の改案ではちゃんと入っていたり。
いやはやできる途中から、なんじゃこりゃ、と
思っていたのですが、、、現在もなんじゃこりゃ状態は
継続中です。

本当に見直さないといけないのはその前文にある
漢字表自体の正確な位置づけ、だと思うんですが。
だって本音と建前が遊離してるじゃないですか。
目安とか言いながらダメ、って言うし。
目安でかまわないのなら、目安、に徹して、
これ以外でも全然問題ないですよー、と周知すれば
いいし、拘束力を持たせるんだったら、それはそれで
もっと周知させて欲しいし。さっさと正確な位置づけを
定めて欲しいと思います。
そうしてその上で字を再検討するなら分かるのですが、

性格が曖昧模糊ですから、こうしたダブルスタンダード
状態はまだまだずっと続きそうですね。
あーやれやれ。


×     ×     ×

今日のこので今までにアップした文章、
600本になりました。
長々と書いて、しかも重複だって多い文章です。
読みづらい文章を読んでくださって
どうもありがとうございます。
なんとかここまで来ることができて
うれしく思っています。

これからも、何とか体力の許すかぎり書いて
いきたいなぁ、と思っていますので、
どうぞよろしくお願いします。


                    謙介拝

|

« 酒瓶林立の部屋 | Main | 焦りまくりの練習開始と音樂會 »

おべんきゃう」カテゴリの記事

Comments

600本!頭が下がります、続けることは大変ですもん。毎日楽しみに待ってますので、これからも色々なお話を聞かせて下さい。でもくれぐれもご無理のないように。
漢字、私は全く専門外のお話ですから、とても興味深く読ませて頂いてます。娘たちの名前をつけるときには真剣に考えましたが、今時平凡な○子って名前がついてます。私の祖母は全部変体仮名の名前で、私には書くこともできませんでしたが、普段は普通のひらがなで書いておりました。今ではありえませんが、色々困ったことだろうと思います。
ご迷惑とは思いますが、これからも時々コメントさせて下さいね。謙介さんがいつも丁寧にお返事下さるので、本当にうれしいです、でも何度もうるさいですが、ご無理のないように。体調の悪い時は寝てるんですよ!!

Posted by: アリクイ | 09. 11. 01 at 오전 8:27

謙介さんおはようございます。
600本なんて本当にすごいことです。

漢字もそうですが読み方はさらにいろいろで桑原さんを「くわはら」さんと読むか「くわばら」さんと読むか、「ゆきこさん」なのか「さちこさん」か日々悩んでいます。
まあ名前を間違えられてうれしい人なんていないと思いますが。
そして言葉遣いはさらに難儀です。

以前に某新聞に「お疲れ様です。」も「ご苦労様でした。」も目下に対して使う言葉であるという物書きさんの文章が載っていたことがあります。
そのあとたまたま仕事関係の人に「お疲れ様でした。」といったばかりに公衆の面前で手首をつかまれて罵倒されたことがあります。
「ああ某新聞のあの記事を読んだんだな。」と思ったのですが。
上司に相談したところ「犬にかまれたと思ってあきらめなさい。」といわれたのですが納得できません。
日本人を何十年やってもいまだに日本語って難解です。

Posted by: ラジオガール | 09. 11. 01 at 오전 10:45

----アリクイさん
 やはり名前も流行があるんですよね。俺の父方の祖父が、「蔵」のつく名前でしたが、いまどき「金蔵」なんていう「蔵」のつくような名前の若い人はほとんどいないでしょうし。子も、今は「桃子」さんが唯一「子」のつく名前で、多い名前だそうですね。韓国も以前、日本の植民地時代に生まれた女の子には「美子」とか「博子」なんていう名前の子がいましたけれど、今は、なんかきどった(笑)名前が増えてきたようです。
ご迷惑なんて、、どうぞ、ご遠慮なくお書きください。アリクイさんのお話を伺うのも楽しみにしています。これからもどうぞよろしくお願いします。

Posted by: 謙介 | 09. 11. 01 at 오후 12:04

---ラジオガールさん
言葉って、なかなか遣い方で難しいときがありますよね。シュチュエーションとか文法的に言えば、明らかに変、っていう感じでも、日常的にそういう言い方をしていたら、それは決して間違いではない、というようなものがあります。たとえば「ぼく、日替わり定食。」と、注文を聞きにきたおねいさんに言うのは、前後関係から見て普通ですが、じゃあ、あなたの名前は「日替わり定食さんですか? 」という人もいない、ということですよね。(笑)そういうふうに文法的に見たら、それは間違いかもしれないけど、日ごろの日常の関係から見たら、あながちまちがいではない、ということだってあります。なので、本当に難しいですね。急に「ご苦労様」とか「お疲れさま」で怒ったその人は、言葉遣いというほかに何かしら心理的ないろいろの葛藤を抱えていて、それがたまたまそういう言い方、ということを隠れ蓑に爆発したのかもしれないですね。でもそんな暴発の被害に遭うなんて、本当にたまったものではありません。俺も前に、普通に道路を走っていたら併走してきた車に停められて、何か知らないけれども、ありったけの文句を言われたことがありました。いまだになぜ怒られたの分かりません。不条理のきわみです。なんだかたまにそういうことに遭遇してしまうんですけど、、。お互い、負けずにがんばりましょう。

Posted by: 謙介 | 09. 11. 01 at 오후 12:14

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91870/46588564

Listed below are links to weblogs that reference 漢字表:

« 酒瓶林立の部屋 | Main | 焦りまくりの練習開始と音樂會 »