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09. 08. 21

616

今日のお話は616。
え? この616は、郵便番号です。

そうです。 616ではじまる番号の区域のことです。

616という番号はどこかと申しますと、
京都市右京区。

(みぎきょうく、って読まないでね。「うきょうく」です。
「上京区」は「じょうきょうく」じゃなくて、「かみぎょうく」ですけど。)

北が上の今の地図では、右京区は京都市の左(西)に
ありますが、天皇の住まいだった内裏
から南を見ると、右側に来るから右京区、
ということですね。有名な観光名所で
言うと、右京区は嵯峨野、それから太秦の映画村、
嵐山、なんかも含まれます。(でもホントの右京区って、
もっと広くていろいろあるんですけどね。紅葉で有名な
高尾とかもそうですし。)

謙介は、大学のときに、書道の先生5人に指導をうけました。

楷書と中学の書写授業の先生
行書と草書の先生
金文と甲骨文字、それから隷書の先生
かなの先生
調和体(漢字かな混じり文)・書道製作の先生

やっぱり教えていただく先生ですし、こちらもどの先生も同じように
接しようとは思うのですが、それでも人間ですから
どうしてもウマが合う、合わない、っていう部分が
出てくるように思います。

そういうことで言うと、一番合わなかったのが行書・草書の先生
でした。こちらは一生懸命書いて持って行ったのに、
ろくろく見もせず、「下手糞やな」「全然できていない。」と
いつも散々言われていました。
まぁねぇ、今だって出来ていませんけれども、
あの頃なんて、謙介が禅学を習った入谷義高先生の口癖では
ありませんが「お話になりませんな。」というようなありさまでした。


かなの先生は、自分なんて今から思うと、大して書けてないじゃないか、
というような俺の書いた字をえらく気に入ってくれまして、
この先生もろくに見もせず「うまいうまい」と言っていつも丸をくれました。

バ○もおだてりゃなんとやらで、下手だのア○だのと
言われたら練習する気だって
起きませんが、うまいうまいとおだてられたらやっぱり
もっと上手になろう、と思うわけです。
上手くなりたい→練習する→向上しようとする熱意だって起こる
→自分なりに工夫・努力をする。→上手くなる、といういい循環ができます。
しかしやっぱりけなされると、そんな熱意がそもそも起きません(よね。)

確かにねぇ、俺の習ってた教室、みんな程度が高かったんですよ。
20歳そこそこで日展、毎日展に入選してるヤツが
ゴロゴロいましたから。かなの先生にはやたらほめられ
行書草書の先生にはケチョンケチョンに言われ、で、
なんかすごくアンバランスな時期がありました。

そのかなの先生の家が○城高校の正門前にありました。
(と、話がここに来るわけです。)
こないだ亡くなった山城新伍さんはここの卒業生でした。
この高校、学校の敷地の中に3つ区の境界が通っているんですよ。
高校の敷地の約南半分が右京区、北が上京区、おまけに少しだけ
中京区が。(笑)


○城高校の正門の前の道をずーっと南に下がると丸太町通りに出ます。

ここを右折して、丸太町を西に少し行くと、道の左側に「よし○」という
リサイクルショップがあります。
今はリサイクルショップになってしまったのですが、
以前、ここは質屋さんでした。そうして道の右側(北側)に
店がありました。

山城さんと一緒に日○の「どん兵○」のコマーシャルに出てた
のが川谷拓○さんでした。今もそのコマーシャルは
ようつべで見られます。

川谷さん、ずっと大部屋の俳優さんで、
だから役者としてなかなか認められなくて
生活に困っていた時期が長かったんです。
売れたのはピラニア軍団以降ですもんね。

川谷さん、生活に困ってどうしようもなくて、とうとう
この「よし○」さんに自分の履いていたパンツ
を持っていって1000円貸してもらった、という
話を現像所でアルバイトしていた時にそこのおっちゃんから
聞いたことがありました。そんなもの(ごめんなさい)でも、
よっしゃ、って言って貸してくれる、っていうのは
やっぱり撮影所に近かった質屋さんだからでしょうね。

この通りを西へしばらく行くと、JRの花園駅が
あります。
その手前(駅から東)にカレーのcoco○番屋一階に入ってるビルが
あるんですが、以前はそのビルの上に勝プロダクションがありました。
映画俳優の勝新太○の事務所でした。
勝さんと言えば、あの人、マリファナとコカインを、
確か自分のパンツの中に入れて
税関を通ろうとした事件がありましたよね。(笑)

破天荒な役者さんでしたけれど、そのムチャクチャ加減がいかにも
あの人らしくて、何となくみんな許していた、という役者さんだったなぁ
と思います。

勝プロダクションは、そのビルのガラス窓に大きく「勝プロダクション」って
書いてあったので、丸太町を自転車で通っていたら、外からでも
事務所は分かりました。
でもある日、とうとう勝プロダクションが倒産してしまいました。
それでもしばらくはガラス窓にその字が残ってはいたんですが、
やがてその字もなくなってしまいました。
字がなくなったのを見た時、改めて「勝プロは倒産したんだなぁ。」
と思い、寂しい気持ちになったことを今も覚えています。

そうしてそのビルから西に少し行くとJRの花園駅があります。

Hanazonosta2

山城さんの元奥さんの花園ひろ○さんは、
若い頃、山田五十鈴の実娘の嵯峨美智子(のちに瑳峨三智子と改名)
に似ていたとか。
上の写真で見ていただくと分かるのですが、以前は山陰線、
「花園」の次の駅は「嵯峨」でした。
(今は花園の次に「太秦」という駅が出来ていますが。)
「嵯峨」に近いから、「花園」というシャレで、芸名を「花園」にした、
ということを山城さんが話していたのを聞いたことが
ありました。だから花園ひろ○さんの芸名はこの花園
が関係しているんですよね。

この花園駅の南に、今は京都市右京ふれあい文化センター
というなんだか変な名前の施設が建っていますが
ここに以前は東洋現像所があって映画の撮影された
フィルムの現像を行っていたわけです。俺はここでアルバイトを
していました。


さっきも言ったように、右京区には太秦に映画の撮影所が
ありました。謙介はそのころ実家が常盤にあったので、
買い物は撮影所近くの三条通とか、京福電車の
帷子の辻(かたびらのつじ)駅の近くで買い物をしていました。
そんなあたりのスーパーとかお店に行くと、
映画に出ている俳優さんが
ごく普通に買い物に来て出会う、ということもありました。
たまに大きな風呂に入りたい、というので
太秦の広隆寺から下がったところにあった銭湯に
行ったりすると、そこでも何やそういえば、あの人テレビの
時代劇で出てはった人やわ、という人を見かけたことも
ありました。

撮影所にバイトに行っている友達とか知り合いも結構
いましたから、そんなわけで映画に出ている役者さんの
話も聞こえてくることがありました。

そんな噂話の信憑性はともかく、
そうして道徳的であるかどうかもともかく
俺はそんな親や友達から聞くことで
人間って、いろいろな人がいるし、
ホント、性格が破綻しているとか
もう全然法律的には「そんなものあかんやろ。」
という人でも、たとえば演技とか、その人の持ち味
とか、どこかに人としてすごいところがあれば
それはそれでいいかもしれない、ということも
自然に理解していたように思います。

ちょっと前に用事でその常盤に行くことが
ありました。「あのころ」ピカピカだったものは
いくつかのものは、そのまま時間とともに古び、
またあるものは、とっくの昔に姿を消していました。

人も同じで、最近、あのころお世話になった
方々の訃報を聞くようになってしまいました。

時は移り、人の生も移ろいます。
時間は決して止まりはしません。

久しぶりに嵐電の常盤の界隈を歩いた時、
本当にウラシマタロウみたいに思いました。

山城さんが亡くなった、という話を聞いて
久しぶりにそんな右京区の常盤で過ごした
時のことが一度に浮かんできたので
ちょっと書いておこうと思いました。


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Comments

謙介さん こんにちは。

生と死のサイクル。人生のサイクル。人間のサイクル。
若い頃には考え及ばなかったテーマでした。
僕もお盆休みにお墓参りをして、両親の後姿を見たり、今年中学に上がった甥っ子の逞しい横顔を見た折にそんなことを考えました。

「この世に何か残したい」そんな大きなことは考えていなくいて、ただ「叶うなら、自分が納得の行く生涯を全うしたい…」と思うだけなのです。
そんな僕も今年36歳です。そろそろ折り返し地点が見えてきそうです。

Posted by: DOG☆EAR | 09. 08. 21 PM 9:05

---DOG☆EARさん
 そうですよね。10代20代前半くらいまでは、そんな自分の「先」のことなんて全然考えもせずにただただ目の前のことを片付けていく、という感じだったのが、やっぱりいろいろなことを考えるようになったり、その考えも少しずつ深まっていくようになりますよね。俺ね、時々先のことを思うと夜、本当に寝られない時があるんですよ。でも結局あれこれ考えて行き着くところは、自分が自分で納得できる人生を歩んでいくしかないだろうなぁ、というところに逢着します。(とはいえ、これがまた難しいことではあるんですが。笑)
自分の人生とはいえ、外の影響をもろにかぶったり、上手くいかないことだらけで、嫌になることも多々ありはするんですが、
あせらず、投げ出さず、で進むしかない、ですよね。

Posted by: 謙介 | 09. 08. 21 PM 10:34

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