« やっぱりかげが薄いんだ。 | Main | 体脂肪低すぎの問題 »

08. 08. 01

『ゲイ・マネーが英国経済を支える!? 』 を読んで

Athicosan


この本について論じる、ということ、
そうしてその行為が、こうしたブログという
第三者を対象とした公開の場所で
客観的にその書評を行う、ということであるなら、
俺はその任ではないと思う。
客観的に冷静な目で見て論じる、ということは
おそらくできないだろう。

なぜなら、著者と友達だから。


そんなもの、俺がどう書いたところで、とどのつまりが
「おもしろいから読んでね」
で俺の言いたいことは完結してしまうし。

ただ、この本を読ませていただいて、自分自身として
うすうす気がついてはいたのだけど、著者の報告によって
やっぱりそうだったのか、ということと、新しく
へえぇ、なるほど、っていうことが多々あった。

そうした俺の気持ちや感想を
ここでお伝えする、というのであれば、さらに
自分が読んで、こうしたところが面白かった、っていう
話をするのは、してもいいんじゃないかしらん、
と思い直すに至った。

そういうことを中心に少し今日はお話したいと思う。


よく国政選挙があった後で、政治評論家の人とか
新聞の記事で、

「〇〇党が躍進した」といういうふうに
でていることがある。
だけど、俺、それは本当にそうなの?
といつも疑わしく思っている。

そりゃあ、結果としてそういうことになった、とは
思う。数字はそう表してはいる。

だけど個々の選挙区を見たら、候補者を見たら
果たして本当にそうなのか? と思う。

たとえば〇〇党と××党からそれぞれ候補者が出た、と。
ところがどう見ても××党の候補者はマニュフェストに
さっぱり具体性がなくて、「格差社会を変える」とか
「福祉をがんばる候補」とか、いまひとつ一体何をどうして
くれるのか、それが分からない、と。
ところが片方の〇〇党の候補者は政策に具体性があるし、
演説もよく分かる、と。
そうして現実的に自分の選挙区でどちらがより現実的にまともな
候補か、という観点で選んだら、
とても不毛なことに××党はさっぱりダメで、〇〇党のほうが、
「まだまし」という選択しかできないことになる。たとえ、
その政党が嫌いでも、××党のほうが好きでも、あの候補者では、
さっぱりダメ! っていうことなんてしょっちゅうある。


だけど、新聞とか評論家は、△県選挙区から立候補した
××候補は、さっぱり頼りないからダメだった、
とはまさか記事に書けない。本音はいくらそうでも
それは書けない。

そういう事情でいつも選挙後の分析を読んだら、
実際の投票者の気持ちと評論家の分析の間に
ものすごいギャップがあるなぁという気がすごくする。

新聞の記事を読んだら、思わず、「政党の問題やないわ!
そんなん、あんな対立候補では、全然頼りなくて
あかんかったからやないか。」って
いいたくなるようなことがしょっちゅうある。
実感と分析が乖離しまくっているのだ。

もっと言えば、客観的、客観的と言い募るばかりで
人的な事情というのか、そういうファクターを
さっぱり欠いた分析になっている。
だから、現実の感覚からものすごく離れてしまった分析になっている。

俺がこの本を読んだときにまず思ったのがこのことだった。
確かに英国経済を分析した本はあれこれ出ている。
しかし、それはあくまでも貿易のデータとか、外貨準備率とか
経済発展の数値とか、そういう統計から得られた数字を
分析したり、過去の経験値からの予想だったりする。

だけど、そういう数字が果たしてかの地に住んでいる人の
実感に沿った分析ができているか、といえば、俺は
「?」としか思えない。なぜならそこに「生活」とか
「実感」というものを一切排除させているから。

俺は経済のことは分からない。
だけどさ、経済のことをよーく学んで専門として分析している人だって
10人いれば10通りの将来予想結果を出しているじゃないか。

たとえば原油価格の動向。
この先、あくまで先物価格段階のことだけど、
200ドルまで行くだろう、という予測する人もいれば、今年後半から
腰折れして、値段がもっと下がる、という人もいる。
みんな好きなことを言って、澄ました顔をしている。

思うに、専門家や評論家だってまともに予測できないのだろう。
評論家でさえ、分からないものが、シロウトにわかるはずもない。
だけど、シロウトには、リアルな日々の生活の実感はある。

確かにこいつが実はクセモノで、実感だって、いい加減じゃないか、
そんなもの10人いたら10人必ず違うよ、ということは
あるだろう。
だからこそ、そういう「実感を排して」客観的な数値だけで
データを見て、論を組み立てているのだろう。

だけど、それでは全部客観的なデータを集めて分析した
ところで、それは全然実態と異なっているじゃないか、と言う
ことだって言いたい。
それに数字だって嘘をつくことだってあるじゃないか。

この本でもさまざまなデータを用いて話はされている。
だけど、それ以上に大きいのは、生活者の視点で文章が書かれて
いるところだ。かの地に暮らして、実感として思っていることが
あちこちに出てくる。
この著者には「京都の暮らし」を書いた本が多々あるのだけど
俺は著者の本を今まで全部読んできて
そうした著作群と今回のこの本と、決定的に違うなぁと
思ったことがひとつある。

今回のこの本、文章をものすごく楽しんで書いている、ということ。
逆に言えば、自分のフィールドだし、勝手知ったる場所だから。
おそらくこの本を書きながら著者は
ああも書きたい、これも入れたい、と思っていたのでは、
と想像する。

そんなあふれんばかりの思いが
もう本の行間からにじんできている。俺が想像するに、
あれもこれも入れたい、とは思ったけれど、紙数の関係で
やむなく割愛せざるを得なかった
事柄もすごく多いのではないか、と想像する。
そうして勝手知ったる自分のフィールだ、任せなさい! そんなふうに
リラックスした雰囲気が文章から読み取れる。

先日も某運動用品のメーカーの広告が、同性愛者の視点に
照らし合わせて、問題があった、ということで広告を引っ込めた、
というニュースがあったよね。

俺が今、ぱたんぱたんと文章を打ってる「おなべ」さんも
じつはIBMのパソコンでさ。(レノボ移行前の、純然たるIBM)
IBMなんかもそういう同性愛者のことについては非常に高い
関心と問題意識を持っていて、ゲイの人からもすぐれた会社、
と一目おかれた企業だよね。

俺ね、根が下品だから、どうしても
ゲイフレンドリーな会社ですよーとか言いながら、本当はどうなの?
ってつい考えてしまうところがある。
あんた、本心からそう思ってる? とりあえず
建前で「ゲイフレンドリーって看板を出しておいたほうが
儲かるやないか。」っていうスケベ根性があるんじゃ
ないか、とかつい文字通りの下司のかんぐり、をしてしまう。


この本を読んでいると、そうした欧米の大企業の中でも
まぁ、そういう本音と建前をうまく使い分けている会社もあるし、
中には本当にゲイ・フレンドリーな
会社もあるようで。そうしたさまざまな会社のスタンスが
あらためてこの本を読んでいてよーく分かった。
今までは、たぶんそういうことじゃないか、と想像していた
ところが、あ、やっぱりそうだったのか、と分かった。
それから、後は生活者の側面から見たイギリス政治と
その世論の流れ。これはたまに聞こえてくるイギリスからの
経済レポートとか状況報告とはまた違って、ひとつの
流れをずっと追ってくれているので、断片的にしか入って
こなかったイギリスの政治状況なども、俺の中では
はじめて線につながって、あ、そういうことだったのか、
と思ったことが多々あった。

もちろんそれからヨーロッパ、とりわけイギリスにおける
ジェンダーに対する取り組みとか運動の現状も
系統的に理解することができた。
日本に入ってくる情報は、どうしても断片的でしかないから。


そうした意味で、この本はイギリスの今を知る点でも
おもしろいレポートであるし、経済のことが分からない人間が
読んで、ああおもしろかった、という本だった。
ぜひ、一度、とおすすめしたいと思う。

 

(今日聴いた曲 ヨハン・セヴァスチャン・バッハ作曲
 イギリス組曲 第一番イ長調 ピアノ演奏 グレン・グールド
 1977年 トロントにおける録音)


|

« やっぱりかげが薄いんだ。 | Main | 体脂肪低すぎの問題 »

おべんきゃう」カテゴリの記事

Comments

面白そうな本ですね、興味がわきました。

Posted by: holly | 08. 08. 02 at 오후 11:51

---hollyさん
イギリス経済、って言われても、なかなかピン、とこないんですが、この本は、イギリスで暮らしている方が、日常見聞きしたことがベースになっていますから、すっ、と頭の中に入ってくるんですよ。
おススメです。是非是非。

Posted by: 謙介 | 08. 08. 03 at 오전 8:26

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91870/42016767

Listed below are links to weblogs that reference 『ゲイ・マネーが英国経済を支える!? 』 を読んで:

« やっぱりかげが薄いんだ。 | Main | 体脂肪低すぎの問題 »