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08. 07. 16

批評を求められるのも困るんです

今日は、同僚がニコニコ顔でやってきて、
「これ。」 って書かれた書の作品を差し出してきた。
「どう思う? 」って言うから、、
「ちょっと見せてね。」
って、こちらに受け取って、その字を拝見。

誰が書いたの?
って聞いたら、とある歌手の方の書いた字だそうで。
”なんとか○○を” さんのようなお言葉が書いてあってさ。
ちょっとコメントできずにじーっと見てたら、
「この字ってうまいの? 」
って聞かれた。

実はこの質問って、実はものすごく困るんだよね。
どうお返事していいものか。うーん。

あ、そうそう。
そういう字のいいのわるいの、とか、上手下手って
どうやったら分かるようになるのか?ってたまに聞かれるんだけどさ。
字の上手、下手っていう目を養う方法って、そう難しいことじゃないの。
基本的に、これはいい作品だから見ておくべきでしょう、って
言われているような作品をたくさん見ておくこと。

ただ、それから見るときは必ず実物を見ること。

そりゃまぁ日本の印刷技術は世界で指折りだとは思うよ。
特に京都の四条中新道(しじょう なかしんみち)にある
印刷会社の技術は世界屈指、と言っていいと思う。
(○木さん、お元気ですか? また一緒に仕事しましょうねー。)

でも、写真ではやっぱり本物の質感がわかんないから
必ず実物を見る。

東京の上野か、京都の東山七条にある
国立博物館に行けば、書道史に出てくるような有名な作品の
実物が常設で必ず何点かは展示されているから、そういうのを
見てみる。

いいものをたくさん見ておいた後で、変なのを見たら、
すぐに「あ、これはダメだわ。」って分かるよ。


ただね、今時書家です、って言ってたって、
「あんさん、ホンマに基本点画練習しはったか? 」
っていうような人もいるので、書家がちゃんと基本点画の練習して
書いているのか、といえば、一概にうーん、、ではあるんだけど。

で、たぶん、素人の人が期待するのは、
たまにそういう書のテクニックとか
基本技法を超越して、線のおもしろさ、とか
すべてがむちゃくちゃなんだけど、
何だかおもしろい、っていう作品がある。

その人の生き方がそんなテクニックなんてスコーンと
超越して、それなりの作品のレベルの高さをあらわしている、
なんていうやつ。
まぁね、確かにそういう作品がありはする。
すべてむちゃくちゃなんだけど、だけどおもしろい、
っていうの。

で、世の中にはたまにまぐれで
そんなふうなのがあるから、
そういう全然書、なんてやったこともない人が
スケベごころを出して
書いてみる、なんていうこともあるんだけど。

だけどね、全然書をやったことないのに、すごい! 
っていうような作品って、実際は、
なかなかお目にかかれない。

いや、そうそうあってもらっても、こちとらの商売あがったりに
なるから困るんですけどね。(笑)

じゃあ、もっと具体的にそういうすごい! っていう作品って
どういうものなのか、って言えば
黙ってたって、そこにあるだけで、人をひきつけるような作品。

どこにあっても、そっちへ目が吸い寄せられていくようなもの。
それから、ぱっと見には大したことなさげ、って思っても
静かにじっくり見ている間によさがじわじわ分かってくる、っていう作品。
そういうのだったら、すごい、って思うよ。

で、その書いた字を見せてもらったんだけど、
はぁ、字ですね、って正直それだけの感想しか持てなかった。
こう書こう、っていうようなわざとらしさが表に出て
作品を作ってしまっているので、すぐに飽きがくるし、
筆の線がくにゃくにゃ、かくかくしていて、全然自然じゃない。
こいつ、絶対、性格悪いヤツやわー(笑)って思ったり。

もし、この字がたとえば書いた人の名前を伏せて、
字も、街角のフリースペースとか露店に並んでいたとして、
果たして、買っていく人がどれくらいいるだろうか?


ちょっと意地悪な実験ではあったんだけど、
その人のファンだ、っていう別の人に、「この字、見て
どう? 」って聞いたら、
「何これ、ミミズがのたくったみたいやわ。」だって。
ところが、その人の名前を知ったら、えええええ、すごいー
っていうようなことになっちゃった。(笑)


伺うところ、書いた本人は、なんだか急に書のおもしろさに
目覚めた、と、それで書いてみた、って。


目覚めた、っていうその人には悪いけれど、
最低限、字を書くための基本がまるでできていない。

基本、って言うと、面倒そうに聞こえるのだけど
スポーツだってさ、試合をするときに、ルールは一応あるでしょうに?
ルール? そんなもの守る必要なんかねぇ、って試合できる?
何でもありさ、で許される?

バスケットやってて、ラグビーみたいにボール抱えて、
どんどん走っていってもいいの?
それくらいのことは、知っておかなきゃ、何もはじまらない、でしょ?

基本点画とか字を書くときの約束って、まぁそういう
一番のベーシックなルール、と思ってもらったらいいんだけど、
その字にはそれすらなかった。

かといって、そういうこまかな約束とか、テクニックを超越して、
それでも見る側をどうだ! ってねじ伏せるような
怒涛の迫力もなかった。
単に墨をのたくった字らしきものがそこにあるだけ。

だから、どうしてもすぐに見飽きてしまう。
魂を締め付けられるようなものがない。

でも、これをいい、っていう人がいるんだ、って
後から聞いた。
その有名な方がお書きになった、というので
売れる、と。
その名前のおかげ、っていうことかねぇ。
まぁ、藝術品が売れる、っていうことのひとつに
そうした作品そのもののよしあし、と、もうひとつ
有名な何とかさんが書いた、っていうことだって
あるものね。その人が書いたから、売れる、って。

で、俺思ったんだけど、
こういうの、って、お茶のお家元の書いた掛け軸と
似たところがあるな、って。
だってさ、字だけ見てうまいかへたか、って言ったら
正直言うともう、、、な字なわけですよ。

だけど、茶道をしている人にとってみれば
お家元の字は、そりゃあもう、なかなか手に入らない
すごいものだ、と。
その芸能人の方の書いた字も
ファンで、その人の書いたものがどうしても欲しいと
なったら、それはもうとてつもない価値があるもので
そんなものかな、って思う。
その「共同体幻想」を支える人にとっては
もうその作品は、すごいものだ、と。
そういう評価で流れていく作品もあるから、
一概にそれが悪い、とかは言えないのも
分かりはするけどね。


俺、見てて、黙って字を見てる間に
頭でそんな「計算」をしていたわけですよ。
そうしておいて、果たしてここで
どう返事をしたらいいものか、
迷ってたわけで。

本人はその人のファンだしさ。
正直に客観的事実をはっきり言うわけにも、、ねぇ。
本人が気に入って、「どうどうどう? 」って
言ってきてるのに
「お話になりませんね。下手すぎ。」 って正直なコメントを言うのも
ちょっとねぇ、、。
で、「まぁ、きばって書かはってんのと違いますか? 」と
いうような感想で措かせてもらったようなわけですね。
(こういうとき、京都弁って、すんごい便利。ふふふ。)
お答えするほうも、なーかなか苦心がいるのでございますよ。
あーしんど。


だけど、よくよく考えてみたならば、
このファンだからうまい、好き、という感情って、
結構、大きな考える要素をはらんでいるように
言った後で、謙介は思ったりしたんだ。
大きなテーマになり得ますね。
また話が長くな、(ここまででもずいぶん、と長いぞ、おっさん
と言われそう。笑)

おほん。
長くなりましたので、今日はここで一旦措きます。
それではまたぁ。


(今日聴いた音楽 アルノルト・シェーンベルク作曲 浄夜
 弦楽合奏版 1943年 リヒャルト・デーメルの詩集
 『女と世界』より ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏
 指揮・ヘルベルト・フォン・カラヤン 1973年暮 ベルリンに
 おける録音。 本日はカラヤンさんの命日なので、という
 ことでございます。)

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おげいじゅつ」カテゴリの記事

Comments

どどど、どうしようw
基本点画、まだまだ勉強中な立場である自分は、先日書いたものをメールで見てもらったりしちゃいましたね…

そうだよね。もっと練習しなきゃですよ。
軽い気持ちで見せたりしたら、一生懸命見てくれる謙介さんにも失礼になっちゃいますもんね。

今日のゼミでも、先生にダメだしたくさんもらいました。
繰り返し練習ですね。

ちなみにタイムリーではありますが、今週末に書展を見にいこうと計画中です。
書家の方が書いた作品を見て、完成を磨いてきます。

Posted by: | 08. 07. 16 at 오후 10:15

そういえば、エグ○イルのボーカルの子(若い子の方)は、書道八段だそうですよ。
とは言っても、書道っていくつも団体がありますし、上級になればなるほど差がわかりにくいと言うか、人生経験とか人格とかが重視されて、門外漢には理解しづらい世界ですね。

Posted by: mishima | 08. 07. 16 at 오후 11:42

---陸くん
こんばんは。

こないだは作品をどうもありがとう。見せていただいてよかったです。いや、これは細かいことになりはするんですけど、字を習う、っていうのも、ホラ、人によっていろんな練習の仕方っていうのがあると思うんですよ。一人で黙々と書くだけ、というのもあるとは思いますが、練成会に参加して、作品を作って、後で、合評会をしたりしますよね、そこからいろんな人のコメントなり、批評なり、感想をもらって、、それをまた、自分の中で生かして、、っていうことだって優れた練習の方法だと思います。誰かに感想を聞く、って、実は一番大切なんですが、あんがい恥ずかしいとか、ちょっとなぁ、、ってしない場合が多いけれど、陸くんは、ちゃんとそういうふうに見せてくれました。これはすごく勇気のいることでもあると思います。
 あ、それと謙介は陸くんの字を書く姿勢(気持ちのこと)なら、何の心配もしていないんですよ。
 いいなぁ。いいなぁ。その調子で書いていってくださいね。

Posted by: 謙介 | 08. 07. 17 at 오전 12:41

----mishimaさん

 いや、まぁ俺も習ってた書道の会の中では段をとってはいます。そういう会の中で字を書くのを勉強していって、、っていう
字の練習方法としてはいちばんオーソドックスな方法だと思います。
 ただ、それをじゃあ、資格として、履歴書に書くのが、、となると
ちょっとためらいがあったりします。
 というのが、mishimaさんもお書きのように、書道の場合は、その決まった会の中だけの段位であって、よその会にいけば、そのまま通用するものでもありません。たとえば、剣道とか柔道みたいに大きな全国・国際組織で、統一された検定の方法があるのであれば、○段って言われても、なるほどなぁ、って思えるんですが。
 なので、書道の資格を問われたとき、謙介は高校の書道の教員免許を持っています、ということを言うようにしています。それだったら、全国で共通の資格だから通用範囲も広いって思うんですが。ただ、国語とか数学っていう教科と違って、書道なんてやっぱり少数だから、え? そんなのがあるんですか、国語と違うんですか? なんていわれたりはしますが。(あ、でも、書道のほうは、もう期限切れになっちゃいましたですが。笑)

Posted by: 謙介 | 08. 07. 17 at 오전 12:47

友人から「相変わらず不思議な字書くね」って言われる俺です^^;
とらえどころが無くて、ダラケたトコロが俺の性格ピッタリだとか(ほんっと、失礼しちゃいます;;)


俺は全くの無知なのでサッパリ何もわかりませんが、やっぱり見る人が見るとわかるんですね!すごぃっすw

俺なんて、とある知り合いの関係で書展に行き、有名らしい人の作品を見させてもらったんですが、「ふーん・・・」としか思いませんでしたもん(爆)
うーん、難しい!(苦笑)


あ、そういえばやっと初コメ出来ましたw 謙介さんの記事は、俺のヘッポコブログと違って一つ一つがすげー立派で、読んでると自分がヒジョーに情けなく感じてくるのでコメントにもなかなか勇気が要ったんです(笑)
これからもちょくちょく見させていただきます♪
それでは~w

Posted by: リト | 08. 07. 17 at 오후 9:21

墨田区の江戸博物館に、「史上空前の傑作書が来る」
という触れ込みで、王羲之「蘭亭序」が公開されていますね。
日本初上陸らしく、能書家の物も併せて公開だそうで。
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2008/0715/200807.html

西側に来てくれると助かるんですけど、公開後は、
なんか故宮に帰っちゃうような感じ…。
どうしよー、あんまり時間がない(笑)。

綺麗な字って、綺麗さだけを求めるなら、
文字の形をきっちり知れば、綺麗な字を書くことが、
できるような気がします。でも、それだけでは…。
2千年以上の文字の歴史は重いですよね。

Posted by: ヒシ | 08. 07. 17 at 오후 9:43

---リトくん
こんばんは。
このあいだ、リトくん、自分の字を写真に撮って、出してたじゃないですか。
あの字見て、謙介は、あ、男の子の書いた字だな、って思いました。端々まで力がこもってて、(決意表明だったし、それもあったのかもしれないけど。)点画を端折るというのか、最後のほう、ごちゃごちゃっとごまかすようなところがなくて、うそとかごまかしができない性格の人だろうな、って見てて思いましたよ。筆圧も結構強い感じだったから、そんなだらけた、なんてことは思わなかったけれど。
 字なんだけど、数多く見る、っていうのも要るかもしれません。そうしたらそのうち、これはいいなぁ、とか、何だよーこれは、なんていえるようになってくるんですよ。
 俺のほうもリトくんのブログ、更新楽しみにしています。またいろいろな話を聞かせてください。

Posted by: 謙介 | 08. 07. 17 at 오후 11:07

---ヒシさん
 ねぇ、来るんですよね。俺も友達から教えてもらってはいたのですが、、。お金と時間が要ることなので、無理に、とは申しませんが、できたら一度ごらんになるのもいいのではないかとは思います。(まぁ行っても、恐らくものすごい人出になってて、ほんの少し、ちら、というくらいしか見られないかもはしれませんが。)王羲之さんの作品は真筆というのが実はなくて、(中国の王様が死ぬときに全部お棺の中にいれさせてしまった!!)双鉤填墨本(そうこうてんぼく)と言って、石碑にあった王羲之さんの字を拓本にとって、それを墨で囲って、お手本に仕立て直した、っていうものが、今展示されているものなんです。(あーややこし。笑) だから本物、ということではないのですが、元のものの持つ全体の雰囲気とかは、あるように思います。ヒシさんのところからだと、東京へ、というよりもいっそ、台北の故宮博物館に飛んだほうが早いかもしれませんね。

Posted by: 謙介 | 08. 07. 17 at 오후 11:20

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