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08. 06. 18

もののねだん

「へ、ななまんえん。」
「そう、7万円。」
「そんなにするの? 」
「うん。」

驚きのあまり思わず声が裏返ってしまったのだけど、
例のスピード社の水着、一着約7万円だとか。
しかも、とてもデリケートな取り扱いを要求されるようで
ちょっと指の先がぐい、と入ってしまうと
生地が破れてしまう、と聞いた。

まぁ、普通の人が、興味半分で試してみようかな、
で買うようなお値段の水着ではないよねぇ。
そりゃまぁ日本だって広いから、中には、それでも
「よっしゃ、その水着7万でも、買うぞ!」っていう人も
居はするとは思うけどさ、でも、そんな人間が普通に
たくさんいるとも思えない。

だけど、それが0.0何秒の差を争う水泳選手にとってみれば
そんな7万の水着なんて、必要経費っていうことだと思う。
7万で世界記録が出せるのなら安い、っていうことになるだろうし。

そこで、俺、思ったのがさ、値段の価値観の違いっていうこと。
これはもう人によってすごく違ってる部分があるよね。
その違いが、案外その人のある面をはっきりと表していて
俺、見てておもしろいなぁ、って気がするときがあるんだ。


前回、隷書の字を書いてたんだけど、たとえば、あの紙、
1枚100円。手漉きの最上の半紙だから、結構な
お値段がする。
で、半紙は1枚だけ売ってくれ、ということはいえない。
たいていは20枚もしくは12枚が1帖(いちじょう)と
いってひとくくり。
とすると、100円x20枚=2000円ということ。


半紙に2000円なんてさ、プロの書家にしてみれば、
まぁそういう紙もありますね、別に? っていうような
値段ではある。
紙によったら1枚が2000円とか5000円なんての
だってあるし。

だけどこれが書道なんて全くしない人にとってみれば、
おそらく、
たかが紙に2000えええええんん? 何考とんや。
○ホちゃうか? っていうようなものだと思うんだ。
しかも、その紙1枚だけ書くんじゃなくてさ、
その紙を何百枚と使って書くときもある。


よく書家の人のことを、紙に1枚だけさらさらっと書いて
それで、書いたお代を何十万ももうけて、って言ってる人が
いるけどそれは何も知らない人のせりふだと思う。
(そんなことを言われたことがあって謙介も実の
ところ怒ってる。だからこの事実は
何度でも大声で訴えたい。)

実際書くほうは、そういう紙を何百枚も使って書いて
その中で一番出来のいいのを選んでるんだもの。
紙代だけで、何万円っていう費用がかかってるんだよ。
筆だって作品によったら新しく買わなきゃならない
場合だってある。
筆だって1本2万とか3万とかする。
墨代だってかかる。

で、作品の場合はそれを表装して軸にしたり、
額に入れたりするでしょ。
これでまた2,3万とかそれ以上もかかる場合が
あるからね。
実際書いて作品を作るだけでも、結構な費用が
かかってるんだよ。(笑)


まぁそれはともかくとして。
やっぱり20枚が100円の紙で書くのと、20枚が
2000円の紙で書くのとは全然違うんだよ。2000円の
ほうがそれはもう、すらすら書ける。
できあがった後のできばえもなかなかいい。
え? 2000円も出して下手にしか書けんかったら
怒るぞ、って?(笑)
まぁねぇ。

値段は伊達についてるわけじゃない。
いいものはそれだけの値打ちがあるから高い、って
いうことだと思う。
だけど字を書かない人にとってみれば、そんな紙なんて
ただただ高い、というだけのことだろうな、そんな気はする。

ガソリンの値段が今、1リットルが170円前後であると。
あちこちでもう車に乗らない、って言ってる人も結構多い。

だけどさ、1リットル170円って、ビールの値段と
比べたらどうだろう。
ビール、350ミリリットルで190円くらいでしょ。(笑)
1リットルもしないのに、ガソリンよりずっと高いぞ。

だからそんなビールの値段って、
ビールを飲まない人間から見たら、
えええええ、ビールなんて、そんなに高いの?
そんなものお金の無駄無駄。ガソリンより高いのに、、
飲むのやめたら、っていうことになるだろうけど。

だけど、これからの季節、ビールなしでなんて
生きていけないじゃないか
っていう人、これは結構多い、って想像する。
謙介は一切お酒は飲めないのだけど、それでも、
仕事終えて帰ってきて、冷えたビールをごくり。
ぷはー、って。
もうこれはお酒を飲む人の夏の醍醐味じゃないかなぁ。

そういう人にとってみれば、やっぱり「ぷはー!」は
絶対外せない、
って思うんだ。そのぷはーのために毎日働いている、
っていう人だって
いるかもしれないし、実際、そんな人は結構多いんじゃ
ないかなぁ、とも思う。

タバコだって1箱300いくらでしょ。
1年に1箱しか吸わないなんていう人はいないわけで。
年間に吸うタバコの量を考えて、いくらかかるか、って
考えたら結構まとまった金額にはなると思う。
でも吸わない人間から見たら、そんなのムダムダ、
ましてや身体にもよくないし、、。っていうようなものでしょ?


そういう値段の心理的な相場、っていうのがあって、
しかもそれが人によって、ものすごく開きがあるよね。

7万が高い、という人。 7万出しても買う、という人。
それが仕事で必要なものなら、どうしても買わなきゃ、
っていうことになるんだろうし、
そういう仕事以外でも、
自分の興味の中心のものとか、趣味とか、
好きなことについては
財布の紐、割と緩めやすいものね。


だから自分の好きな歌手のCDが出た、DVDが出た、
と言っては結構なお値段だけど、それは買う、と。
コンサートだって、少々遠くたって、行く、と。
チケットの値段、往復の交通費、場合によったら
宿泊費だってかかる。
だけど、それは全然痛くない。(いや、まぁ痛いけど、
その痛みより見られた、買えた、という喜びのほうがまさる、と。)


そんなことだってある一方で、、。
例えば、駐車違反が減らないのって、
まだまだ車を停めただけのことにどうして
金を払わなければならないんだ、っていう意識の
人がいるからじゃないか、って思ったりするんだ。

車には何百万とお金を
出してもいいけど、駐車料金の何百円は嫌。
なぜなら、車を停めることは、自分の興味の範囲の
外だから、っていうことだろうし、ことに田舎の人間にしてみたら
車なんかどこだって止めていいじゃないか、って思ってるから、
だからカネなんて出したくない、っていうことで、
そんなものに、どうして、駐車料金を
支払わなくっちゃいけないんだ、っていう意識が
その底にあると思う。


そういうのを見てると、
あ、この人は、こういうところにその人の興味の
中心があるのか、とか
あの人の興味は、こういうところなんだな、って、
その人の
興味のありかがわかってくる。
それはまた、その人の「人となり」にもつながっている
部分があるから、
あ、この人は、こんなことに興味を持っているのか、とか
普段の話からは分からなかった意外な一面が見えたりするし、
興味のありかなんて、人によってさまざまで、大抵の場合、
自分とは全然違うからさ、そういう人の話を聞いたりするの、
結構面白いなぁって思うんだ。
そんなことをあの水着の値段を見ながら俺は考えてた。


    ×        ×         ×

日曜、仕事場の街へと出発間際、テレビを見たら、
NHKの大河ドラマ、
篤姫がかかっていて、、。本寿院さま、顔のデッサン狂うくらい
怒り狂っていて、あまりの恐さに、ひえええ、と思った。
晩にトイレ行けなくなりそう。
おしっこちびりそう。
あんな顔に、夜道であったらどうしよう、とか。(笑)
イヤ、あの本寿院さま役の高畑さんの実家、うちの実家の近所なので
実際会わないとは限らないんだから。(笑) 
つい先日も帰っておみえだったし。


もし道で会ったら、ファンですぅ、とにこやかに言って、さささっと
離れることにしよっと。(ま、あれは、お役だから
あんな表情なのでしょうが。笑)

月曜、例によってがんセンターの日。
主治医とここ数回の採血の結果をもとに話をした。


今回も以前から問題のあった数値は安定せず、高いまま。
異常な状況は3月からなので、もう3ヶ月、そういう
状態が続いている、ということ。


主治医と、この先のとれる治療方法について
相談する。 インターフェロンの投与、もう一度
してみる? と 言われるけれども、
「先生、効果はどのくらいありますか? 」と聞いたら
数値を下げる、という可能性はあるんだけどね、とのこと。
数値を下げるだけ、というだけのために、副作用のすごくきつい
この治療方法を、選択して何年も注射する、というのは、
身体的にも経済的にもしんどいことなので、
ちょっと考えさせて欲しい、といって話を措く。この注射をすると
髪の毛はどんどん抜け落ちるわ、皮膚はボロボロになるわ
自分の体力の4割くらいをこの注射のために抜かれて
しまう、という感じになる。果たしてそこまでしんどい目をして
注射をして、、ということを考えたら、正直あまりしたくないなぁ、
と思う。

ただ、取れる手段は、もう本当に限定されるので、この後は
どうするかなぁ、、、って言ったって、もうあまり方法のないことも
分かりはするんだけどね。やった結果改善される成果と
しんどい犠牲にしなきゃいけない部分とをはかりにかけたら、、
そこでどうしても決心がつかずにぐずぐず悩んでいる。
ひとつのことはずーっと尾をひいて、その途中でまた別の問題が
生まれて、そんなふうにいろいろと問題が錯綜しながら
しかも片付かないで、ずっとある状態。
まったくぅぅ。

しかし、それにしても。
さっと決着がつくようなことって、日々の生活では
なかなか起こり得ないことだなぁ、と、改めてがんセンターの帰り
車の中で思った。

(今日聴いた音楽 ヨハン・セヴァスチャン・バッハ作曲
 パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV 582 6つのコラール
 目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声 BWV 645
 オルガン演奏 マリー・クレール=アラン 1993年 ドイツ
 ニーダー・ザクセン 修道院教会における録音)


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Comments

高いねスピード社の水着、でも、なんでもすごく締め付けるのにしめつけ感が少ないってので、スリムにみせるために、女性に人気が以外やでてるんだそうですよ。でも、着るのに一人じゃ着れないって聞いたけど…。

書や絵の、紙などの材料もぴんからきりまでありますね、僕は、アルジェマリーと言う水彩師が好きです。それも細目から中目、荒目、耳付き耳無し、ボードなど、あり、キャンバスなどもいろいろありますね。
僕はキャンバスの目作りに、相当時間さくときもあったりします。
きっと書なども何枚も書くから、結構、かかりますね、それなりに…道具や、材料って。

インターフェロンの投与、なんだか、つらそうですね…。

Posted by: holly | 08. 06. 18 at 오후 8:40

----hollyさん
すごいですよね。水着着るのに、手助けがいる、って。そうですか。女性が買う、っていうことなんですね。それは何となく分かるようにも思いました。紙、絵の場合もそうですよね。紙質が違うと絵の具の色の乗りも違ってくるし、結局そうしたことが作品に反映されてくる、ということですし。やっぱりそういうものは選ぶ、ということが大切なんですね。お話うかがって、共通するところがたくさんあるなぁ、と改めて思った次第です。
 注射は、ホント、ものすごく副作用がきつくて、体力をごっそり取られていく、っていう感じなんですよ。そこまでして、という気持ちと、したほうがいいかなぁ、というところで目下悩んでいます。

Posted by: 謙介 | 08. 06. 18 at 오후 10:28

8000円する筆を買うのにエエッ!と言い、
50枚入り・2300円の紙を買うのにも、
躊躇してます…自分は(笑)。

Posted by: ヒシ | 08. 06. 19 at 오후 10:56

---ヒシさん
 いや、もうそれは単に惰性というかなれてしまったんだろう、と思います。(笑)俺も学生の時なんかは、墨が1丁2000円でも高ーーーーーぃ って思ってましたし、紙はホントそうですね。ピンからきりまであって、どうしよう、って悩むし。その上、展覧会なんかに出したら、出品料とか取られますし、、。未だに、持ち出しばっかりです。ヒシさんのお気持ち、すごく実感をもってよくわかります。そうですよ。

Posted by: 謙介 | 08. 06. 20 at 오전 12:01

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