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08. 04. 25

こんぴら歌舞伎(その3)

まずは『双蝶々曲輪日記』(ふたつちょうちょうくるわにっき)

主な登場人物は濡髪長五郎と放駒長吉。
だから「長」が二人で「ふたつ」の「ちょうちょう」ね。
この演目に限らないんだけど、歌舞伎って
全編通しで演じられることは
少なくて、たいていは「角力場」か「引窓」っていう特定の場面だけが
独立して上演されることが多いんだ。俺が見たのも「角力場」。
お話は、まぁ色と欲の代理戦争と言ったところですかねぇ。


大関の濡髪長五郎と飛び入りの素人力士放駒長吉の相撲は
あっけなく素人力士の放駒長吉が勝ってしまう。

なぜか。
実は大関の濡髪には山崎屋の若旦那の与五郎が後援者でいて
放駒には武士の平岡郷左衛門が後援者でいた。
その若旦那の与五郎と平岡郷左衛門は、遊女吾妻をめぐって
どちらが身請けをするか、恋のライバルだったわけ。

相撲が終わって、勝った勝った、ってすっかり舞い上がっている
放駒長吉にその後援者の平岡郷左衛門が、頼みを言うの。
その遊女吾妻の身請けを手助けして欲しい、と。
神様放駒様って、それはそれは熱心なお頼み。

ところが、濡髪のほうだって濡髪で与五郎から
平岡郷左衛門に手を引いて欲しいと言われていた。
それで放駒を呼び出して
その与五郎の身請け話を成就させたいから
平岡郷左衛門に手を引くように勧めて欲しい、と
放駒に言った。で、まぁその頼みがあったから
大関は相撲にわざと負けた、と。
言ったら、八百長相撲っていうことだね。
にらみ合う二人。手に持った茶碗を片手で
あっけなく握りつぶす濡髪と、どうしても握りつぶせないで
割ってしまう放駒の力の差ははっきりしてるんだけど、やっぱり
力士だし、意地があるからさ。
引くに引けない意地の張りあい、っていうところでこの幕は
終わる。  

あのね。昨日の中でさ、こんぴら歌舞伎って、役者さんとの距離が
近いって、って言ったでしょ。
それはこの劇場の中もそうなんだ。
俺たちの座っていた升席のうしろの廊下、実は役者さんたちの
通路になっててさ。俺の時は、うしろから役者さんたちの
あそこの出をこうしたら、とか、ちょっと時間が押してるから、、
っていう声が聞こえてきたの。
普通の劇場じゃ、そんなもの聞こえてなんかこないでしょ。
そういうところもこの劇場の面白さだ、って俺は思う。

それから
この話でも八百長相撲、っていうのが出てくるんだけどさ。
歌舞伎の中に八百長相撲が出てくる、っていうのは、
まぁいつの時代だって八百長相撲なんて、日常的によくあった、
っていうことでしょ。

あのさ、相撲をスポーツって考えてる人がいるんだけど、
俺、相撲なんかスポーツじゃないって思う。
相撲なんて見世物じゃないか。
見世物っていうのはね、日本国語大辞典ひいたら

 珍しい物や芸などを料金を取って見せる興行。またその出しもの

ってある。この説明で相撲の説明だって片付くじゃないか。
そう思うけど。
相撲をスポーツなんていうから、変に取り繕うわないと
いけない無理が生じるわけでさ。

だから見世物は、「興行」って言うでしょ。
相撲の興行、プロレスの興行、っていう言い方はあるよね。
だけど、シンクロナイズドスイミングの興行とか、バスケットの興行、
サッカーの興行なんていわないでしょうに?

ホラ、みんな、気がつかないけど、無意識のうちにちゃんとそういうふうに
スポーツと見世物を区別してるんだもん。 (笑) 
だから、相撲なんて最初から、見世物だよ、って言ってしまえば、
全然何の問題も起こらないのに、って俺は思うけどなぁ。

それを相撲はスポーツです、なんて言うから、本音と建前で矛盾が
起きて、それをまた言いくるめたりしないといけない、
なんてなるんだもの。

さて。舞台はここで20分間の休憩。
おぢさん、おばさん一斉にトイレに殺到。
あたり一面にただようサロンパスの香り。

周囲の人の話があれこれと聞こえてくる。
どうも隣の升の人は、海老蔵の追っかけの人みたい。
とはいえ、その人も、こないだ××でみかけた人、今日も
さっき来てるの見た、なんて話を隣の人としてたから
追っかけの人はものすごくいるのだろう。
それから、後ろの席の人は、おっちゃんプラス若い20代の
女性という組み合わせ。
言葉を聞いていると、地元の人みたいだったけど、
どうも袖の下 いや、接待で、この若い女の人を
案内してきた模様。 最後に「こんなお席を設けていただきまして、
地元ですが、はじめてで、、。」 なんて、ご挨拶をしてた。
でも20代の女の人に何故、接待をしなくちゃいけない関係なのか、、。
終わってから姉と二人で、一体あの人間関係は何だったんやろねー
と話の盛り上がること。(笑) こういうところに来ると
結構日ごろ伺い知ることのできないような人間関係の人たちを
見聞きできて、おもしろいなぁ。(笑)
きっとわたなべぢゅんいちの書いたとうじょうじんぶつのような
「ふりんのかっぷる」も来ているに違いない。
というか、大体がさー、演じている座頭の海老蔵からして、
「今年は座長なので、今回は、晩に女の子と遊ぶのをやめて
舞台に専念したい。」なんて言ってるしさー。(笑)
あーあ。もうー。 まぁねぇ梨園なんて、大体がこんなものですけど。


はいはい、それでは気を取り直して。
さて、次の演目は「太刀盗人」。

これは、もともと狂言の「太刀奪」から来てる。
だから演じる役者さんの衣装が太郎冠者、
次郎冠者っていう感じで裃に長袴、っていう狂言の装束。
で、歌舞伎の公演のお約束で
ひとつは踊り中心のにぎやかな演目を挟む、
っていうことになってる。今日の一部の演目の場合、これがそう。

だけどこの話って意外に新しくて、初演は大正6年(1917年)
話は簡単で、田舎から訴訟に出てきた万兵衛がスリの九郎兵衛に
自分の太刀を盗まれてしまう。俺のだ、いや俺のだ、と二人が
言い合っているところに都の警護役の目代がやってきてどちらの
ものか、裁定を下そうとする。だけど、田舎侍の万兵衛の言っている
ことを九兵衛が全部聞いてそのまねをして言うために判断がつかない。
おもしろいのはその途中の聞き耳をたてるやり取り。

それから聞かれたことを舞で答えようとする場面があるのだけど
その舞が、田舎侍の舞に対して、スリのほうがそれを
必死で真似しながら舞うのだけど、微妙にずれるという
その連れ舞のところが、見所。ちょっとずつずれて間を外して
一生懸命真似をしてる、っていうところ。だけど、その外しているのを
おもしろおかしく見せないといけない。本当に踊りの度量とか
センスが問われるもんねぇ。九郎兵衛、男女蔵がやったんだけど、
ホントうまかった。

最後になって、目代の質問を内緒で答えたがために
スリの九郎兵衛は返答に詰まって、答えられなくて
逃げて去って幕、という話ね。

歌舞伎がわかんない、っていう間に、
こういう分かりやすい話を見て
わっはっは、って笑っていればいいんじゃないかな、
って俺は思う。


はい。ここで、今度は30分の休憩でございます。
さーて。ここで待ちに待ったお弁当タイム。
この幕間(まくあい)に食べるお弁当こそが
正真正銘の「幕の内弁当」ね。

さっきお茶子さんに頼んで預かっていてもらってた
お弁当を取ってきて、いただくことに。
みんな、あちこちでお弁当を広げて
すっかりくつろいだ感じ。

お食後は、おばちゃんの持ってきた
鶴屋吉信の「あやめ餅」をデザートにいただいて、
すっかり堪能いたしました。急いでトイレに行って
戻ってくると、再びの開演を知らせる柝の音が。
本当はこんぴら歌舞伎のご報告、3回で完結、にしたかったんだけど、
この後、、って考えたら、まだもうちょっと続きそうなので、
一旦ここで本日は措きます。
よろしければお付き合いください。


(今日聴いた音楽 (音楽か?)  新版歌祭文 野崎村の段 
 浄瑠璃 四世 竹本越路太夫 三味線 二世 野澤喜左衛門
 三味線 ツレ弾 三世 野澤喜左衛門 まぁ野崎村、というので
 情緒があっていいんですが。大阪府大東市野崎、って言っても、、。笑)


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Comments

本文を差し置いて、「今日聴いた音楽」にコメ
ントするのもなんなのですが・・・。
越路太夫は端正で理知的な印象があるのです
が、野崎村はいかがでしたか?
三味線も二世・三世の喜左衛門とは豪華ですね。
三世の演奏は生で聞いたことがあります
が、いかつい顔と華麗な音色のギャップを
良く覚えています。

Posted by: mishima | 08. 04. 26 at 오후 2:22

----mishimaさん
そうなんです。演奏者の記録を見て、ちょっとこれは、って思ったので聴いてみることにしたんです。しかも、このCD出したの、レコード会社じゃなくて筑摩書房、だったりしまして。日本の音楽、というものの中の1巻だったんです。恐るべし筑摩です。それで、語りなんですが、野崎村は結構ドロっぽくやってました。けど、単にどろどろとしてるのではなく、余韻はさらっとしてて、やっぱりその辺、品があるんですよね。聴いてて、ぞくぞくしました。

Posted by: 謙介 | 08. 04. 26 at 오후 7:00

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