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08. 03. 24

本を返してもらいに

先週の木曜、退院してきた晩、
友達に貸した本のことを書いた。

別に本はまだ先でもよかったのだけど
別の用事があったので電話をしてみた。
彼に3番目の子どもができて
そのお誕生の祝いをすることになった
のだけど、その名前を大きく紙に
書いて欲しい、というご依頼。
実は頼まれたときは「書いてくれへん? 」
「書くよ。」 っていうことだけで何月何日に
要る、なんて全然聞いてなかったのだ。(両方とも
なんとまぁいい加減な……笑)


それで
そのお誕生100日目のお祝いは
いつなの? ということを確かめることもあって
電話をした。

「ああ、本、返さんとあかんな。」
「いや、本はまた別の日でええねんけど、あの
100日のお祝い、いつや? 」
「4月6日や。頼むわ。」
「うん、分かった。」
金曜の晩、実家に帰って、土曜の朝、書いた。
「できたわ。」
「え? もう? 」
 それでその書いたお礼にお昼をご馳走して
くれる、ということになって、彼の家まで
行った。行くと、彼の奥さんとオフクロさんが
食べきれないような
食事を作ってくれていてすっかりご馳走になって
しまった。

食事が終わって、せっかくここまで来たからには、
と散歩に出る。この街には何度か来たことは
あったのだけど、ゆっくりと歩いた、なんてことは
一度もなかったので、彼の案内で町内を一通り歩く。
「もう人出、落ち着いた? 」
「まぁ、一時に比べたらなぁ。あのころはホンマ
むちゃくちゃやったから。」
今から4年前。静かな漁師町だったこの集落は突然の
喧騒と渋滞、いやもうほとんど生活ができない、という状態にまで
なったらしい。もうあれから4年経つから、落ち着いただろう、
と思ったら、何の何の。まだブームは続いていた。
彼の家の近くの駐車スペースに停めてあった車を見ても
和泉、滋賀、広島、三河、福岡、愛媛、神戸….
今も県外ナンバーの車があちこちからやってきていた。
まずは市のギャラリーに行くかなぁ、ということで
来たのがここ。(笑)

Ajibunkakan


セカチューの映画で、重蔵じいさん(山崎努)がいた写真館ですね。


そうなんだ。この町であのセカチューの映画の大部分のロケが
行われたわけで。
もうねぇ、いまやこの町は「純愛の巡礼地」なんだそうな。
この建物だってさー、中に入ると、もうハートマークだらけなんだから。
独り身のおぢさんには、いささか刺激が強すぎましたですねぇ。(笑)
中には、映画の中でサク(森山くん)が乗ったバイクの本物が
あって、中の案内係のおばさんが、「乗ってみてください。
かまいませんから。」とカップルには声をかけていたのだけど、
さすがにオッサンがムードに駆られて、バイクに
またがるとは、思えないと判断したのでしょうか。
俺には、そんなことは言ってくれなかったですね。
(声をかけていたのは、俺が二階に行ってたときに
下にいたカップルにそんなことを言っていた。)
拗ねるおっさん。平等に扱えよ。ふん。(笑)

実は映画の時の写真館は私有地に仮建築したもので、
今はその場所はこんなふうに更地に。
Shashinkanato

そこから再び彼の家の方に戻る。
彼の家のある地区の神社に登る。
目の前に台地状の屋島の裏側が見える。

Yanyanyashima

ちょうど屋島の前に左から半島が見えていると思うけど、
その半島の向こう側が壇ノ浦。
平家物語に出てくるよね。源平の合戦、那須与一が
扇の的を見事射止めたのがあの半島の向こう側あたりになる。
今は、埋め立てられて、住宅地の中ですけど。(笑)


それから、御殿山にある皇子神社に登る。
どうして御殿山っていうか、と言えば、江戸時代に
この御殿山の海側に、藩主の別邸があったから。
今は、もう跡形もなくて、井戸の石組くらいしか
のこってない、ということらしいけれど。


さて、神社の参詣。
階段のところで、10人近くのオニイサンに出会う。
それがさー、全員男だよ。純愛の聖地めぐりしてるの
みーんな男。

でこの階段、200段くらいあるんだけど、
オニイサンたちの中には、三人で「ちよこれーと」とか言いながら
階段をじゃんけんしてのぼっている連中もいてさ。
まぁ牧歌的というか、、。(笑)
どうしてオニイサンたちが階段をのぼっていたか、と言いますと
上がった場所が、ここ。

Ojijinjya

ここも映画で出てたよね。(笑)
正面のぼこぼこってなった山は五剣山(ごけんざん)って言って
昔は5つの峰がのこぎり状に佇立していたのだけど
江戸時代に地震でひとつ峰が崩れていまは4つの峰が立っている状態。

だけどさ、俺、びっくりしたのは、このロケ場所に来てるの、って
(さっきも言ったけど)たまたま俺が来てたときだけ
そうだったのかもしれないけど
全員男よ。(笑)

でも思うに、やっぱさー男のほうがロマンチストなんじゃないかなぁ。
ゲイの人は乙女なこころ、なんて言うけど、俺はゲイだからノンケだから
って、あんまり関係ないって思う。ゲイだとかヘテロだとか
そういう性的な志向性は関係なくて、男だって案外そういう「記念」とか
「思い出」にこだわる人っているんじゃないかなぁ。また逆に女の人だから
そういう、記念日とか、思い出にみんなこだわるか、と言えばそうでもなかったり
するし、、。それはたまたまのその人の個性の問題だけのような気もするけど。
男ってロマンチストだし、嫉妬深いところもあるし、、。

さて皇子神社のお参りを済ませて、再び御殿山を降りて
今度は港の突堤のほうに行く。
正面に屋島がひときわ大きく目に迫ってくる。
この突堤。
このアングルで撮影したら分かる?

Ajitottei


あの映画の上映時は、恐らく日本で一番有名な
突堤になってたんじゃなかっただろうか。(笑)

この突堤から西を見るとこんな風景。
Megi


正面の左の島が女木島(めぎしま)。


映画の予告ではこんなふうに映ってた。(ちょっとボケボケだけど)
Yokokuhen

ご町内にはこんな案内板までございました。
Rokechi


しかし、映画が封切られてもう4年が経つ。
評論家には酷評された映画だったけど、
今もなおこうして影響を与え続けていて、
訪れる人だって少なくない、というのは
一体どうしたことだろう。
専門家と普通の人の意識っていうのが
こうも違うというか、ずれているものなんだ、
っていうことを、俺はこの町を歩きながら
考えさせられた。


その間、ヤツとはいろいろな話をした。
俺の身体のことも話したし、
ヤツの子どものことも。
久しぶりであれこれと話ができて本当に
面白かった。

折角出してくださった鰆の刺身が食べられなかったのは
とても残念だったけれど(生のものは禁止なので)
それでもおいしく食べられて本当によかった。
お礼を言って、本を返してもらって帰る。


          ×        ×        ×


日曜、冬休みに国語と歴史を見た受験生、
結果報告に来てくれる、第一志望の○立大は
あかんかったので、すべりどめで受けて通っていた
○命館に行くことになりました、とのこと。
まぁ、どこの大学行くかもいるけど、大学で何を勉強するか
っていうことも大切だから、がんばれよ、と言った。
「以学館がキミを待ってるよ。」
「以学館って? 」
「ああ、○命の文学部のある建物。」
「あーわかりました。」
いいなぁ。彼は来月から京都の住人だ。

出会いとか別れとか、この時期って本当にいろいろなことが
交錯するなぁ、としみじみ思った。


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Comments

 映画は滅多に見ないんですが(粗筋と結末だけ教えてくれればいいです,ってな人なんで 笑),常々評論家と一般人の評価の落差があることが多いのが気になってました。評論家って,どんなところを評価してるんでしょうかねえ???

 ところで,皇子神社の名称の由来が知りとうございます。源平合戦に関係があるんでしょうか?

Posted by: Ikuno Hiroshi | 08. 03. 24 PM 10:10

----Ikuno Hiroshi さん
 俺の友達で1年間に映画を400本くらいと芝居を100本くらい見る奴がおりまして。(大学時代からずーっとそのペース)時々その話もするんですよ。そいつは単純におもしろい、おもしろくない、っていう分け方なんですけど、俺が以前京都にいたとき映画の撮影のバイト(何たって住んでたのが、右京区の常盤で、100メートル向うは太秦の撮影所 笑)をしてたときにそういう映画の専門の人に話を聞いたんですけど、例えば、画面の構成から批評する人もいるし、内容の筋立てで批評する人もいるし、ホントさまざまでした。あ、それからもちろん映画の中でのキャスティング、というか役者の人選でも。ですからいろんな批評の仕方があるなぁ、ということですね。
 皇子神社ですが、行って思ったのは、「王子権現」の王子の表記の異体表現ではないか、と思いました。でもね、確かにこの神社の裏に、船隠って、源平の争乱の時に船を隠した、というらしい場所があるんですが。ただこの辺は安徳天皇側の行在所ではなかったので、皇子と言っても、その安徳天皇から、ではなくて、おそらく王子からの変換したものじゃないか、と思います。

Posted by: 謙介 | 08. 03. 24 PM 11:24

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