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08. 01. 17

行かない場所

今日は1月17日。

やはり俺は阪神間に親戚とか友達が多いから
メールで地震のその後の話を少し前からしていた。
父方のおばの家は淡路島の北端の岩屋というところで、
そこが震源直下だったから、もう直後は大変だったけど
それでも何とか13年が経って、暮らしは
元に戻りつつあるとのことだ。
だけど、俺は今も神戸に行っても、阪急の三宮の駅が
見られない。やっぱり目がそちらに行くのが恐い。
そこには、もう見知ったあの建物はないから。
昨日も1994年の12月28日
釜山から一時帰国して神戸港に着いて
撮った神戸の街の写真を見ていた。


1995年の1月16日まであんなに
元気だった人が、あの日、あの瞬間を境に
時間が止まってしまった人もいる。
そうしてそんな止まってしまった時間は
もう取り戻せない。


人の幸・不幸を自分の身を比較して、という
いうことは、してはならないことだけど
そんな話をしていると、やはり自分の生という
ところに考えがいってしまった。

昨日は病院でもショックなことが
あったけど、ほかにもうひとつ
個人的に情けなかったことが
あって、散々な一日だった。


だけど、そんなふうに友達と話をしていて、
ふりかえってわが身を憶うと、
先のことはちょっと分からないにせよ
とりあえず今は生きている。
いや、生かされてここに在ることに気がつく。


ここで終着だよ、って
完結されてしまうのではなくて、
オマエはもうちょっとここにとどまっていて
行けるところまで歩いていって、
見なければいけないものを見、
しなければいけない修行をして行けと、
いうことなのだろうと思う。
それがオマエがここに生まれてきた
責任でもあるよ、と。

道の半ばで斃れてしまった友達。
ある日突然にそこから先を絶たれてしまった人。
そんなふうに思ったら、やはり自分はこうして
生きている。それから、今までにいろいろな人に出会って
いただいてきたものも持ち合わせている。
それをきちんと形にして残しておかなければ、と思う。
そんな大切なものの受け渡しをしていく仕事が
いま少し残っているような気がした。
それをしなければ、と思ったら、
少し気持ちが前向きになった。


昨日病院からの帰り、
もう今月でブログ止めてしまおう、とも思っていたのだけど
気を取り直して、後どれくらい続けられるかは
分からないけど、
もう少し自分の記録を遺しておこうと思った。


            ×          ×

仕事場で昼休み、心理的な遠さについての話になる。
四国以外の人間から見て、四国という土地は
やはりそこに行くのに、ある一種の「面倒くささ」というか
心理的な距離間が大きいのではないか、という話をする。

大阪から見て、福岡が近いか徳島が近いか
と言えば、地理的にも、所要時間でも
徳島が近い。いまや大阪から徳島へはバスが
5分おきに出ている。 バスなんだから、梅田なり
なんばのOCATなりからバスに乗れば、新幹線で
九州に行くよりはるかに短時間で徳島に着く。
実際はそうだ。
だけど、心理的な距離感から行けば
断然博多のほうが近い、という意識が働くんじゃないか。

この四国という土地は、
自分の身に「何らかの心理的変化」とか
転勤、という有無を言わせない要件でも
備わらない限り訪れる、という意識のない場所
なのだろうか。


その心理的な遠さが、四国の自然環境に急激な変化を
もたらせなかったのかもしれないし、そのために
四万十川のような清流が残り得たのかもしれないね、
という話も。

俺、歌舞伎の劇評のサイトもよく見るけど、
京都の南座とか東京の歌舞伎座の話はあっても
春のこんぴら歌舞伎の話を取り上げている
人は、本当に少ない。

そういう劇評を書いている人の意識を見ても、本州の劇場は
行くけれど、わざわざ四国くんだりまでは、行かない、
っていう意識が濃厚に出てるように思う。
大阪からだとこんぴら歌舞伎の琴平町まで
JRだと2時間ちょっとで行ける距離なんだけど。

時々大阪の人に高松から大阪まで時間、どれくらいかかるの?
って聞かれて、2時間かかんない、っていうと、相手は
びっくりした表情になる。だから頭の中ではすごく
遠い、っていう印象なんだろうね。

その自分の中のイメージの時間と謙介に言われた事実が
大きく違っているんで、驚いて頭が混乱するのだろう、
って相手の表情を見ながら俺は思う。
きっと聞いた人の頭の中には、所要時間が4時間とか
5時間っていう遠い時間を想像しているのだろう。けど、
いまや新大阪から最速達の列車だと1時間50分
くらいで高松に着く。
そこには、やはり四国は遠い、っていう
意識が働いているんだと思う。


よくわかんないブラックボックス。
イメージの湧かない場所って人間は無視するか
意図的に存在を切ってしまう。だから、多分そういう
人の意識に四国はない、のだろうと思う。
やっぱり四国は遠い場所なんだ。


四国に行きたい、とか、行ってみたい、っていう話は
たまに聞くのだけど、でも、実際行くまでにはならない。
それは、やはりどこかで「遠い」から「面倒だ」っていう
意識が働いて、その行きたいと、高まろうとする
意識を阻害しているのかもしれない。

だって、人間、本当に行かなくちゃ、と思ったら
どんなことがあっても、どんなことをしても行くものね。(笑)
最後の最後でふんぎりがつかない、
でも行かない、行けない、って、いうのはやっぱり心理的な
距離感があって、それが大きく作用しているのだと思う。

きっと四国についての印象というのは
「何もない」というか「想像できるものがない」という
ことに尽きるのだろう。だからイメージのしようがない。
自分の想像が出来ない土地。 そういう土地というのは、
やはり心理的な距離は遠くて思考の外の場所なのだろう。
四国は遠い場所。

逆にそんな遠いイメージをうまく利用したのが
大江さんの「万延元年のフットボール」だったり
村上さんの「海辺のカフカ」だったりするのだろうね。
そんな話も少しした。


あなたにとって四国はやっぱり遠い、
行かない場所なのですか?

(今日聴いた音楽 そして僕は途方に暮れる
 大沢誉志幸  音源はLPレコード 1984年
 EPICソニー盤)


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Comments

>きっと四国についての印象というのは
「何もない」というか「想像できるものがない」という
ことに尽きるのだろう。だからイメージのしようがない。
自分の想像が出来ない土地。そういう土地というのは、
やはり心理的な距離は遠くて思考の外の場所なのだろう。

自分は何も知らないからと言い訳も考えるのですが、
上の言葉は自分に当てはまることだと思います。

それを乗り越えなきゃな、とそう感じるときがあります。
コメントになっていないかな、これは。

Posted by: ヒシ | 08. 01. 17 PM 10:50

----ヒシさん
いえいえ、そういう気持ち、無理もない、
って思うんです。何もないところからは
イメージのしようがありませんもん。
だけど、この間の九州でご一緒させて
いただいたみたいに、そこに親しい人が
出来て、そこで経験したことがすごく
生き生きとして楽しいものだったら、
イメージなんて、簡単にさっと
もうすっかり変わってしまうと思うんです。
その出会いっていうのも、縁だと思います。
何かがきっかけで、、っていうことじゃ
ないでしょうか。また、機会がありましたら
是非、お越しください。待っていますから。

Posted by: 謙介 | 08. 01. 17 PM 11:08

 四国の対岸で生れ育ったせいか,四国自体は心理的に遠くはなかったですね。山陽側の島から対岸に見えたりしたし。

 心理的に遠かったのはやっぱり東北か。北海道なら飛行機で直接行けるけれど,東北地方はワンクッション置かないと着けない,というのが大きいかも(その意味では北関東もだけど,こっちは東京から近いから)。

 せっかくバイクで日本縦断したのに,東北はほぼ素通りに近かったので,いまだに具体的なイメージが・・・湧かない。
 知識だけでも,距離感の克服はダメみたいですね;;;

Posted by: Ikuno Hiroshi | 08. 01. 19 PM 11:05

---Ikuno Hiroshiさん
俺のがんセンターでの前の主治医が筑○大学に
転勤になったんですけど、正直○波、って
どこにあるのか、あまり知りませんでした。
関東のどこに何県が、あるのか、未だによくわかりません。でも、関東の人が逆に四国は
愛媛県と高知県と、徳島県と、もうひとつは?って聞かれて、さぁ、、と言っているのと
いい勝負かもしれません。(笑) 前に、サイトのほうで書きましたけど、○HKの全国版の
天気予報で、女性の気象予報士の人が
全国の概況です、と言いながら、説明したのは
徹頭徹尾、埼玉とか群馬、茨城の予報でした。
きっとその人の頭には、自分の住んでる地域
以外は、全くの興味関心の外、だったんじゃ
ないか、ってその時に思いました。多分人間は、自分の興味関心の中でしか、テリトリー
を意識してはいないのだ、とも。
だから、きっと大半の人にとって、四国は
目立たずにひっそり、とあるのだ、と
思っています。

Posted by: 謙介 | 08. 01. 19 PM 11:33

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