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08. 01. 09

漢字検定

こないだ、ある人から、来年の目標、で
(去年の話だから、つまりは今年の目標)
漢字検定を受けて合格したい、いんだけど
漢字を覚えるのに、どういう勉強したらいいの?
という質問がきた。


最近多いのだろうか? 漢字検定受ける、っていう人。


漢字の勉強ですか? 
そりゃもう方法としては繰り返し実際に紙に
書いて、それから声に出して読んで覚える、
しかないと思うけど。
そう言うと、何だ、そんなことか、っていう人が
いるんだけど、覚えるまで繰り返し繰り返し
何百回、何千回と書くんだよ。 
見てるだけじゃダメ。
とにかく各級に出そうな字っていうのが
あるでしょ。それを何度も何度も書いて、
その読みを覚えて、その熟語にはどういう語が
あるか、その熟語まで何度も書いてみる。
そうやって覚える。とにかくひたすら書く
ということ。
漢字の勉強って、もうそれに尽きるんじゃないか、
って思う。


じゃあそういう漢字検定受ける、っていう人に
俺聞きたかったことがあったんだ。
何で漢字検定受けるの? って。
検定に合格したから就職に有利か、というと、
まぁ、仕事の中で難しい字が出てきた時、
読めないよりはまぁ読めたほうがいいかも
しれないね。
だけど、就職に有利か、と言われたら、
うーん。正直、あんまり関係ないんじゃないか、って
思う。だってさー、そんなこと言ってたら、
ほかの人間より多少は漢字を知ってるはずの中国文学専攻の
ヤツとか、俺みたいに国文科の卒業生が就職の中で
有利であるはずだけど、そんなことは全くない。
自分の経験から言っても、もうはっきりと断言する。
漢字が読めたから、って言って就職には関係ないよ。
俺、前にも言ったことあるんだけど、
ただまぁ漢字検定って、自分の中で、ひとつの
自信にはなると思う。俺は資格試験でここまで
取った、って。


だけどね、そこから誤解ができてしまうように思えるんだ。
何のために漢字検定受けるのか、っていうことにも
つながってくるんだけど、大切なのは、漢字検定で
一級に合格した、っていうことじゃないものね。
少々難しい漢字を知っていて、その難しい漢字を
日常の中で、どんどん使うことができないと話に
ならないもん。

よく資格と実際が見事に離れ離れになってる
人がいるでしょ。中学までお習字を
塾で習いました、と。五段を取りました、と。
だけどいまや日常で書く実際の字はめちゃくちゃです。(笑) 
そんな人、ざらにいるでしょうに。

そんなふうに資格は持ってるけど
実際はその資格が単にお飾りになってるだけ、っていう
人って実際にすごく多い、って思う。
資格は資格。でも実際は、、っていうの。
いや、資格はあったらあったにこしたことはない、とは
思う。だってその資格がないと職につけないことだって
あるから。だけど、漢字検定に限って言えば、
漢字をたくさん読めて書けたから、、って
どうでしょ。

就職に、、有利とも俺、思えない。
自分の経験から言って。(笑)
まぁたまに難しい漢字の読み聞かれるけどね。
「渺茫」って何って読むの?
「びょうぼう」だよ。
「大したもんやな。」 それだけ。

でもさ、謙介思うんだけど、これって漢字検定の
ことだけじゃない、って気がするんだ。
よく就職して、、すぐ辞めていく若い人がいるんだけど
その人たちの原因に、、「自分の専門が生かせなかった」
っていう言葉と、「仕事の意味が分からないかった」っていうのと
「もっと自分を生かせそうな職場があるように思う」
っていうのを聞くことがあるんだ。

今、ちょうど1月で、もうじき卒業のシーズンに
なるでしょ。学校でこれこれの勉強をしました。
入社試験のときに口頭試問だか面接で、たいてい
聞かれるよね。「大学で何を勉強したの? 」とか
「大学生活を通して学んだことは? 」とか。


それでね、4月になって、就職して、配属された
場所が、自分の専門が生かせないセクションだったり
専門とは関係あっても、そうして学校で習ってきたことが
全然通用しないセクションだったりすることだってある。

じゃあ、そこでどうしますかねぇ。
自分の専門が生かせないから、って辞めます?

学校で習うことってさ、基礎の部分を勉強するの。
原則を勉強する。もっと言ったら、マニュアルを一通り
解説された、と、そこまでなの。学校でやることって
基礎基本の原則だけなんだよ。


じゃあ、このわけのわかんないような
現実社会の中に入っていって、その学校で習った
ことを、どう応用していくか? それは
各自の課題なわけでしょ? 自分の力で応用問題は
解かなくちゃなんない。
そんな応用力を、実際の社会に出たら試されるわけなんだけど。

学校でやったことで、自分はもうバッチリだ、って思い込んで
いる人は、いきなりそういう応用が自分の身に降りかかって
きたら、焦ってしまうわけよ。わかんない、どうしよう、って
パニックになるとか、こんなはずじゃなかった、って
自信を根底からひっくりかえされて絶望してしまうとか。


だってさ、学校で経済とか金融論習って、銀行に就職して
これで俺の習った金融論が役に立つ、とか思って自信満々
だった人がいるとしますね。

ところが配属された支店で預金獲得しなきゃ、っていうんで
どっかの金持ちの爺さんの家に行って、お世辞を山ほど言ったり
ジジイの肩もんだり、足を按摩したりしなきゃなんない、ってどうよ。
そんな自分が思ってた理想と現実があまりにかけ離れていて
情けない?
だけどさ、就職して社会に出たら、そんなことちっとも珍しくなくて
普通にあることだもんね。

そのとき、どうします? 大学院まで行って金融論を
勉強したのに、何でこの俺さまがこんな○ロンパス貼りまくりの
加齢臭出しまくりの爺さんの肩もまなきゃなんないのか、って思う? 

でもね、仕事なんてみんなそんなものかもしれないんだ。
自分が学校で習ったことが生かせる瞬間なんて、
ごくごくたまにしかないんだよ。
さっきも言ったけど、これなんて読むの、、それくらいさ。
後は、全然関係のないようなことが延々と続くだけ。

俺だってそうだよ。学校卒業して就職して
何してたか、って言ったら、寒風吹きすさぶ中
コンクリート練ってさ、型枠に入れる工事してたんだもん。
あのね、何度もしつこく言うけどさ、俺、学校の専攻は
土木工学とか建築学じゃなくて、国文学だからね。
国文学科出たって、就職したら、あなた吹きっさらしの
場所で、朝から晩までコンクリート練るのよ。
どこが大学院で習ったことと関係あるのか。
誰が考えたってそんなもの、関係なんてない。(笑)


だけどね、だからこそ寒い中で仕事をしてる人の
辛さとかしんどさ、とか、っていうのが分かるし
そんな経験を自分がしておくことって、言葉の解釈の幅が
拡がって、小説を深く読み込むにも役にたつんだよ。自分の
中では決して無駄な経験ではなかった、って思う。


20代でそんなふうに一見全然関係のない、というか
アホか、って思ってたような経験が、40代にくらいに
なった時に、ぜーんぶが一斉にパーッとつながってくる
時が来るんだよ。
それはもう、ものの見事にひとつにつながってくる。


だからね、そこからが大事なんだ。
若いときって自分の専門以外のことをさせられるのが
時間の無駄、とか、、そんなことたまらなく苦痛だし、
バカげてる、って思うんだけど、それが不思議なことに、
後からすごく役にたつ時が来るんだよ。


漢字検定で一級を取る、ということはさ、
「あなたはよく勉強して、普通の人が読めない
ような漢字までも、読めたりかけたりする
実力があるよ。」というだけなのさ。力は認定されても、
実際の日常でそれが使えなかったら、
文字通りの「使えねぇヤツ」 っていうことだ。
ほらぁ、使えねぇヤツって、困るでしょうに。(笑)
一級受かって、めでたしめでたしじゃなくて、一級受かった
ことで、そこからがすべての出発点になるんだけどさ。

爺さんのあんまなんて自分の専門じゃない、のは
わかるけど、仕事をするっていうことは、実際の毎日の
生活の中で、それも全然関係のないような
自分の業務の中で、学校で習ったことを
どう関連付けて、応用させて解いていこうとするのか。


就職する、っていうことは、俺はその工夫を
毎日問われていることでもあると思うけどね。

大学入試もそうね。一生懸命勉強して
まぁそこそこの大学に入って、、
実際は入ったところでさらに勉強していかなきゃ
なんないはずだけど、、そこで、しなくなって、
あ、留年、、って言う人だって普通にいるでしょ。
希望の大学に入って、めでたし、なんかじゃなくて
そこから、また次の新しい段階がはじまるんだけどさ。
どうもねぇ、、そこでねぇ、、。(笑) さぼるというか
安心しちゃって、何にもしなくなる。
問題はそこから、どうするか、なんだけど。
 


漢字検定を受ける、っていう人の意識を見てるだけでもさ、
現代社会の抱えてる意識とか問題が、そこからはっきりと
見えてくるように俺は思うんだ。

(今日聴いた音楽 My Foolish Heart
ピアノ演奏 ビル・エヴェンズ 
ベース スコット・ラファロ 
ドラムス ポール・モチアン 1961年
ニューヨーク ビレッジ・ヴァンガードにおいて)

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