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08. 01. 16

げた

前の話の続きになるけど、
本当に最近は食べ物から季節感を感じる、
ということが少なくなってしまったなぁ、っていう気がする。

真冬にイチゴやトマトやきゅうりが平気で店頭に並んでいたり
真夏にみかんが売られていたり。
農作物もそうだけど、魚もそう。

この魚だったら、この時期がいちばんおいしい、
これだったら、春のこの時期。とかいうふうに、だいたい
その魚のおいしい時期っていうのがあったけど、
いまや何でもかんでも海外からの冷凍輸入だもんね。

スーパーに行ったら、タコ (マダガスカル産)とか
さば(ノルウェー産)にイカ(ベトナム産)とか。
もう世界各地から、冷凍のものがやってきていて。
だから、もうこの魚だったら、この時期、っていうのも
雲散霧消してしまったのかな、って思う。


地物の魚が減ってしまったなぁ。
魚屋さんのショーケースを見てもつくづくそう思う。
もういまや国内の漁業は危機的状態なのだ、と。
ろくろく魚が獲れない。
それでも海辺の街に住んでいるおかげで、
住んでる街の漁港に行ってみると
地物の魚を売ってる店が結構あって、
そういうところだと、今の時期においしい魚はどれだろう、
という感覚で魚を探すことができる。

それまで魚なんて、大して知らなかった俺が
魚の旬をきちんと知ることができたのは
瀬戸内海の島で3年間暮らした時だった。
それから、魚もそうだけど、貝だって、その日の
潮の加減で、こちらの砂浜で取れる、
この日はこっち、と、日によって現れる
タイミングが全く違うことも、そんな島の暮らしから
知った。

仕事帰り、島の港の辺を歩いていたら、
顔見知りになった島の漁師さんが
「晩ごはん、どうするの? 」って聞くから
これこれのものを作って食べる、って俺が答えると、
「これ余ったし、食べたらいい。」
ってよくいろいろな魚をもらってた。

そのときに、どういう調理がいいのか、
っていうことも聞いておく。
これはフライも案外いける、とか、これは煮付け、
とか、これは塩焼きとか。


あるときに、なんだか靴べらの化け物のような
魚をもらった。
「これは何? 」って聞いたら、
「げた。」というお答え。
「げた? 」
「下駄みたいやから、げた。」
何とまぁ分かりやすい。(笑)
「このげたは何で食べたらいい? 」 って早速聞くと、
「白身の魚だから、何でもええけど、煮付けにしたら? 」
ということで、早速いただいて帰って、しょうゆとみりんと
砂糖で煮付けにした。
淡白な味でとてもおいしかった。

げたは、結構取れる魚なのだろうか。
漁師さんから結構な回数、もらったような。(笑)
おしまいには、「げた、ほら持って帰り。」って言われたら
一応「ありがとうございます。」とは言ってたけど、、
なんだ、またげたかよ、っていう気持ちがあったりして。(笑)
そんなこんなで、げたはよくいただきました。


それから、数年後。
友達の結婚式が東京のホテル○ークラであった。
式が終わって披露宴。
コース料理の最初。
スープが終わって、
その次にウェイターさんが持ってきてくださった
金ぶちのボーンチャイナのお皿には、
あらま、おひさしぶりのげたが載っていた。

周囲の人とにこやかに談笑しつつも
思わず、何や、げたやんけ、と内心思ってしまうおいら。
でも、まさか、げたの何とかソース添え、なんてメニューには
書けないだろうし、、と思って、手許に配られたメニューをちらっと
見てみると。
「舌平目のムニエル、何とかソース添え」とあった。
そこでようやく「舌平目」と「げた」が同じものなのだ、と
分かった。

だけど、島での扱いは、ホント、余ったから、あげるわ、って
いうようなものだったんだけどね。
タイとかブリのように全然高級な魚ではなくて
おかずで普通に食べる、っていうような魚だったんだけど。

ホテル○ークラのきらびやかなシャンデリアの輝く宴会場で
金の縁取りのお皿に載って出てきた「げた」をしみじみ
眺めて、お前、えらい出世したなぁ、と思わず述懐してしまった
謙介なのでした。

×         ×         ×


月曜がお休みだったので、今日、仕事帰りにがんセンターへ。
先週の採血の紙を見て、主治医も俺も、
「良くないですね。」「ちょっとこれは、、」
という数値が出てきたんだけど、、。
もうこればかりは仕方ないなぁ。
どうしようもないからね。
帰りの車で泣きそうにはなったけど、
まぁ、とりあえず生きてるから、と自分を
なぐさめつつ帰った。
生きていたら、楽しいこともあるけど、
辛いこともあるもので。
今日は、さすがにちょっと辛かったなぁ。

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Comments

うーん…自分の持論ですが(あんまり信用無い)、
「野菜類は霜焼けするので、旬は秋まで」かなぁ…?
柑橘類はばらつきがあるので、ちょっと異なるんですが、
冬に取れるとはいえ、「実」は凍結には耐えられないので、
厳冬地域では無理かな?

「作物は基本的に冬は育たない」
要約しちゃうとこうかなぁ?

「?」ばかりで自信の無さが表れてますけど(笑)。

今は「(超)促成栽培」「晩成栽培」などの農業技術が
日々進歩しているので、価格が安くなくとも
冬に出回らない野菜はありませんものね。

でも旬のものが一番美味しいと思います。
旬以外の時期の野菜って、負担をかけられて育っていますから、
例えばイチゴなんですけど、
冬のイチゴってあんまり美味しさを感じないんですよね。
美味しいイチゴを食べてないだけかもしれませんが(笑)。

ここまで書くなら、
自分のブログで書いたほうがいいのかしら?(笑)

でも魚のことはわかんないの。山男だから。
「ヒラメちゃん、あなたの旬はいつなの?」
って聞いちゃいますよ。
港町住まいですけど…。

Posted by: ヒシ | 08. 01. 16 PM 10:46

----ヒシさん
 そうですよね。イヨカンでも、収穫は12月
までに全部してしまいます。それで倉庫の中にコンテナーごと置いて、熟成させるようですね。(ちょうど今、熟成のさなか。笑)イチゴ、まぁ「さちのか」とか「あまおう」とか
どんどん新品種が出てはいるんですが、温室ものって、おっしゃるように何だか味が薄い、って思います。やっぱり旬を待って、いただくのが、何でもいいんじゃないか、っていう平凡な結論なんですけど。(笑)栄養だって、一番旬のものがたっぷりあるし、、逆に言えば季節はずれの野菜って、やっぱり栄養価はずいぶん減ってる、っていう話でした。
 魚でも瀬戸内で「さわら」は春の魚なんですが、最近はもう他の海域からのものがスーパーなんかには並んでて、年柄年中ありますもんね。さっぱりわかんない、っていうことになっています。 やれやれ。

Posted by: 謙介 | 08. 01. 17 AM 5:50

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