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07. 12. 17

After the Game(後編 その5)

それから5日ほどして、地区大会の
試合があった。
ま、イロイロあったけど、結果は自由形で
3位だった。
今までの全然足りなかった練習とか、
自分のこととか考えたら、こんなところかな、
って俺は思った。
そうして、また練習の日々がはじまった。
シンジが何度かプールにやってきた。
「オーイ、撮るぞォ!」 
「ああ。」
返事はしたけど、俺はそんなことは全然気に
とめていなかった。
そして俺は泳ぐことだけに集中した。


もう今年の夏もそろそろ終わりかけていた。
「よーし。今日はこれくらいにしておこうか。」
高垣部長はミーティングのまとめをそう結んだ。 
「それから、束村、ちょっと残っといてくれ。」 部長は
そう付け加えた。
「はい。」
夕焼けのあかね色が、プールの水面に映っていた。時々
水面をなでていく風も、素肌にドキッとするほど、
涼しくなっていた。
「高垣さん。」
「ああ。まぁ、そこに座れよ。」プールサイドのベンチで
部長はじっとそんな風の吹き渡る水面を眺めていた。
どうしたのかな、と俺は思った。

「ハルさ。」
「はい。」
「無限の可能性、って何だろうな。」
「無限の可能性、っスか? 」
「より速く、より高く。確かに可能性っていうヤツは
無限だよな。けど、一体、その先に何があるんだろ、
って考えたら、俺は空恐ろしくなってくるんだよ。
ハルは、そんなこと、考えたりしねえか? 」
「俺は、まだ、そんなことなんて。だって、
他の連中みたく、まだタイムだって伸びてねえし、
もうホント、泳いでいるだけで精一杯、っていう
感じで。」
「まぁ、なぁ。他の奴なんて、はっきり言って
もう限界だからな。あいつらのフォームじゃ
後、いくらがんばったって、たかが知れてるからな。」

赤トンボが、二匹。 すいーっと前から俺たちの前を
横切るように飛んで行った。

「ハルはどうして泳いでんだ? 」
「どうして、って、言われても、まぁ、、中学から続けてるから,,,,,,。」
「なら、どうして泳ぎを続けてるんだ? 」
「高垣さん。」
「うん? 」
「俺、こんなこと言ったら、どうしようもねえな、って
笑われるかもしれないから、今まで、誰にも言わずに
きたんですけど。」
「.....笑わねえから、話せよ。」
「水の中、進んで行くのって、スッゲェ気持ちがいいんですよ。
こう、手が水をかくっしょ? すると抵抗がなくなって、
すっ、と身体が軽くなったみたいになって、進んで行くんです。
ほら、風でふわっとふくらんだカーテン、押さえるときみたいに。
それで、また抵抗がふわーっとできて、,,,,,,そんなふうな
繰り返しが、俺、たまらなく好きなんですよ。 なんかね、
自分の身体がどんどん消えていって、自分も水と一緒に
なっていく、っていう瞬間が、あ、だけどこんな瞬間が来るの、って
いつもじゃないんです。 たまに、なんです。 ホント、1シーズンに
一回か二回くらいしかないんだけど、それが俺、スッゲエ気持ちよくて
それをまた経験したくって、、。 ハハ。バカみたいっしょ。
こんなの。情けねえみたいな話ですけど。」
「情けねえことなんて、ないぜ。」

俺は、部長の顔を見た。 部長も俺のほうをまっすぐに
見ていた。

「俺は気づいてたよ。ハルの泳ぎと、他の連中の泳ぎとが、
決定的に違うんだ。 オマエはさ、水の中にいるのが
好きで好きで、、っていうのが分かるんだ。 どうしてか、
っていうとな、フォームに無駄がないし、変なクセだって
ついちゃいねえんだ。 水の流れって、ものがあるだろ、
プールでもな。けど、ハル、オマエは、
いつもそんな流れに逆らわずに、泳いでいるんだよ。
見てたら、それは分かるんだ。」


                (つづく)

そろそろ年賀状を書かねばならない時期に
さしかかってまいりましたですね。
謙介は手で書きます。
だって、その方が断然早い。
プリンターがガシャガシャと印刷してる間に2枚は
書けるし。
まぁその前にやっぱりちょっと練習はしなくちゃいけません。
おめでたい歌でも載せますか。


Yakamocchann

これは前に高知の友達が、俺が書いているところを
撮ってくれたもの。

万葉集の一番最後の歌。
作者は大伴家持です。

あらたしき としの はじめの はつはるの
今日降る 雪の いや敷け 吉事(よごと)

いつかもいいましたが、この歌の表向きの解釈は 

「めでたいことがこの降り積もる雪のように
積もってくれたらいいなぁ。」


という歌です。 
だから結構お正月の歌で使う人多いんだけど。
ただね、作者の家持さんの人生の中で照らし合わせて
みると、それだけならめでたそうな歌で
済んでしまうけど、
そこに彼の述懐として、(ろくなことのない世の中だから)
と言葉を補ってみるとどうでしょうね。

あれこれとひどい事件は多い。世の中は乱れている。
この歌を歌ったのは夜のこと。暗い晩、
雪だけがしんしんと積もっている。せめて、去年はろくなことが
なかったけれど、今年はもうちょっと明るいことがあって欲しい、
っていう意味になってきます。


言うなれば、精一杯の祈りの歌です。そしてこんな哀しい歌が
万葉集の一番最後に来ているのです。
どんな気持ちで家持はこの歌を最後に持ってきたのでしょう。

「ろくでもない世の中だけど、何とか今年は少しましになってね。」

この歌を作った家持さんの気持ちを思うと、
俺は、決して千何百年前の歌とは思えないんですよ。
今だって、この歌の気持ちは十分通用するじゃないか、
と思います。

とはいえ、表面上はめでたそうな歌なので(笑)
まぁ、そこはそれ、いやみったらしく深い意味を取るのは
国文科出身の人間くらいだろう、という
ところで、年賀状に書いたりします。(笑)


金・土・日、と京都の病院にセカンドオピニオンを聞くために
行っていました。病院の診察結果は、
まぁ今のところ、治療方法も「私もこの方法で
いいと思います。これ以外に、方法は
ないですから、この方法で行くしかないですね。 」という
ことでした。

今日はさっきまで、その京都での診断書を持って
主治医のところへ。
「先生、そういうことでした。」と京都での診断結果
を診断書を渡してお話しする。
「な、ボクの方法、まちがってへんかったやろ? 」(笑)
「そうでしたね。」
来週の採血の時に、ちょっとたくさんの項目の検査
するからね、との話。
ということは採血の量がまた7本とか取られる、という
ことのようです。
やれやれ。

ところで、、、
読んだ?
Oda


特に感想、として書くようなことはないですね。
ただまぁ、きっぱり、とした文体だなぁ、とは思いました。
これは著者の「決意表明」みたいなものだから、
読むほうは、「ああ織田くんは、そういう考えなんですね。」
っていうようなものでした。

(今日聴いた音楽 Everything 歌 EXILE 
”生きてることで、すべてはOKさ” って歌詞が
この歌の中に出てくるけど、本当にそう思います。)


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Comments

け、謙介先生。
あまり年賀状を書かない私ですが、
私の師から「今年ぐらい(筆で)書きなさい」
って言われてしまいました。
うーん、やっぱり楷書だよね(これしか…)と考えていますが、
間違いなくプリンター君の方が早いです。
書いたものをスキャナーで取り込んでから、
それを印刷するという裏技に取り組んでいいですか?(笑)

ああ、本当に綺麗な字だなぁ…。

Posted by: ヒシ | 07. 12. 17 PM 10:54

---ヒシさん

 面倒くさかったら、隷書で一字、「子」と
書く、という手もあります。(一体何の手なんだか。笑)子、って書いておいて、横にでも
「およろこびを」って添えたら、それはそれで
作品になるんじゃないでしょうか? またこれもやってみますね。

Posted by: 謙介 | 07. 12. 18 AM 12:08

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