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07. 12. 25

After the Game(後編 その10・完結)

「ハル、今度の日曜日、ヒマか? 」シンジが
教室から出ようとした俺に、呼びかけるように
訊いた。

「何? 」
「ちょっとつきあってくれる? 」
「一日? 」
「いや、そうだなぁ…..2時間くらいでいいや。」
「どこか行くの? 」
「うん。まぁ、な。」
「分かった。」 


俺は簡単にOKした。 しかし、めずらしいことも
あるもんだ。シンジ、っていうより、クラスの連中と
なんて俺、教室よか外で待ち合わせたことなんて
なかったから。

待ち合わせの本屋で、マンガを立ち読みしてると、シンジが
肩をたたいた。「ワリィ、ワリィ、遅くなっちゃって。」
「いいよいいよ。でもさ、それより、今からどこに行くんだ? 」
「まぁな。」とやっぱりシンジは何も言わなかった。「来たら、
分かるさ。」そりゃ、そうだけど。まぁ、それはそうなんだけど、さぁ。
でも、どこに行くか知りたい、ってあるじゃないか。

俺たちは本屋を出て、10分ほど歩いた。そうして
県立美術館の前まで来た。
「冗談。俺、こんな絵とか、わけのわかんねぇ彫刻とか
苦手だぜ。」
「まぁ、来ればいいって。」


ヤツは、俺の意見などまるで気にかけないで、どんどん中に
入っていく。「県展」とか言う大きな看板が建物の入り口の
ところに掲げられていて、どうやら今、この展覧会が
中で開かれているのだろう、ということは分かった。
シンジは、受付で二言三言、そこにいた女の人に言うと、
サッとそこを抜けた。俺がぼんやりつっ立ってると
「関係者はかまわねえんだよ。さっさと来いよ。」と言った。


「え? 」
「オイ、こっちだ。」 俺たちはガラス張りの広々とした
エントランスを抜け、2階に上がっていった。そこは
写真の部門の会場のようで、いろいろな作品が
架かっていた。シンジはなおもずんずんと歩いていった。


「ほら。」
「あ! 」
それは何枚かの組写真になっていた。一枚目の、
その飛び込もうとしている何人もの水泳選手の
中心にいたのは、まぎれもなく、この俺だった。
二枚目から後は、泳いでいる俺がさまざまなアングルで
写っていた。プールの壁にタッチしているところ。
プレストで流していた時の表情のアップ。
コースロープに手をかけてタイムを聞いている時の
表情。コーチと練習のメニューについて
話をしている時---------。
へーえ、俺って、こんな表情をしたりするんだ、なんて
ちょっとびっくりしたり、えー、ちょっとこりゃ
ひどい顔だよな、とか、いろいろなことが頭の中に
浮かんできた。
「これを見てもらいたかったのさ。」
「ふーん。」
「おかげでさ、入賞したよ。」 言われたら、作品のタイトルの
上に、金色の小さなリボンがついているのに気がついた。
「やっぱ、実力だよ。………でも、マジ、すげえよな。
良かったな。」
「ありがとう。ハルのおかげだよ。」
「んなこと、ねえって。」 だけど俺も、なんだかスゲエいい
気持ちになった。

 8


部のほうは、もう高垣さんは
引退しちゃったけど俺は俺できちんと出てる。 

練習? ちゃんとしてるぜ。
毎日しっかりオニガワラに怒鳴られながら、泳いでる。
部長もさ、俺たち2年の中で、マジメで面倒見のいい
サカモトってヤツに変わった。 

高垣さんも時々来ては
俺たちに文句をつけたり、身体がなまる、なんていいながら
筋力トレーニングの機械をがちゃがちゃと動かしてる。
部のほうはそんだけだけど、俺は携帯でずっと
高垣さんとメールをやりとりしてる。もちろん電話で
直接話だってするけど。電話で話してると、あっという間に
時間が経っちゃってて、時計見てびっくりすることもある。

でも いろんな話してるとさ、みんな案外似たような
ことで悩んでるんだ、なんて、少し分かったりした。


俺だけがこんなことで悩んだりしてるのかな、なんて
最初は思ったりしてたけど、高垣さんと話をしてると
あ、先輩もこんなことで悩んでたり、とかするんだな、
なんて分かった。 なんかさ、俺、うまくは言えねえ
んだけど。 それで、一週間に一度会って、(ホントは
もっと会いたいけど、忙しいだろうしさ。)エッチしたり
するの。やっぱ、すっげえイイ。


んでも、この先、俺と先輩がどうなるのか、って
そんなことはわかんない。けど、今は何となくだけど
俺、自分がどうしなきゃいけないのか、っていうことが
わかりかけてるから、しばらくは、これでやってみよう
って思うんだ。


ま、これからもいろいろなことは、
きっとあるんだろうけど、さ。

                                     (おわり)

ながながと引っ張ってしまいましたが、
After the Game これでおしまいです。
ハルくんの話につきあってくださって
どうもありがとうございました。

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