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07. 12. 11

After the Game(後編 その2)

チャイムが鳴ると、バラバラと人の群れが
それぞれの目指す方向へと散っていった。
俺のいる向こう側の校舎の3階の端の
音楽室からは、ブラスバンドの連中の
吹く、ロングトーンの練習の音も聞こえて
きた。 グラウンドでは、サッカー部の
奴らが、トラックを列を組んで走っている。
そのグラウンドの向こうのプールでは
もう何人かの一年生だろう。練習の準備の
ために、部室とプールサイドを忙しげに
何度も往復しているのが見えた。

俺は、そんな風景をぼやーっと
眺めていた。
「ハル。」 不意に後ろで声がした。
「あ? 」 シンジだった。 「何? 」
「いやぁ、いつになったら、泳ぎを
再開するのかな、って思ってさぁ。」
と奴はニヤニヤしながら俺に言う。


「さあな。」
「何だよ。もう泳がねえのかよ。
練習してたんだろう? 」
「俺、ダメだ。」 俺はそう言って、
またため息をついた。
「写真はいいよなぁ。」
「あん? どうして? 」
「パシャって撮ったら一丁あがりじゃん。」
「バーカ。」
「違うのかよ。 じゃあ、何枚くらい
撮るんだよ。? 」
「そりゃあ、報道カメラマンみたいにさ、
決定的瞬間、っていうのであれば、一枚、って
いうときだってあるだろうけどさ。
普通は何百カットとか撮るし、プロなんて
何千カット、って撮るんだぜ。 で、そのうちの
採用はたった1枚、っていうことになるんだ。 
たった1枚撮って、変な顔だの、写りが
悪いだのって、そりゃあ何も知らねぇ奴が
言うんだよ。」

「そんなに、か,,,,,,,。」 俺はシンジの顔を見た。
「まぁ一枚、っていうことはないだろうけど、
パシャパシャ、くらいで
済むのか、って思ってた。」
「めでたい奴だな。そんなことで
撮れるのだったら、誰も悩んだりすっかよ。」
「そうなのか。ふーん。......けどさ、それだけ撮ったら
却って一枚、なんて選ぶの迷ったりしねえの? 」
「いや、それだけ撮っても、これっ、って思うのが
ないときだってある。」
「どうすんの? そんな時って。」
「仕方がないからまた撮る。」
「また、か........。」
俺はしばらく目の前の机をじっと見ていた。
いろいろなことがめまぐるしく俺の中で
浮かんでは消えた。それは、相当に長い時間の
ようにも感じられたし、それでいて、
また、あっという間のようにも感じられた。

「俺、プール、行く。」 そう言って俺は立ち上がった。
「ふん。」 シンジは気のない返事をして、立った俺を
見上げている。 まるで、どこまでが本当か、見際めて
やるぜ、っていった顔つきで。

ま、やってみっか。,,,,,,,,,,


                 (つづく)

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