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07. 12. 03

After the Game(その13)

で、次の日の朝、俺が目を覚ましたとき
オッサンは、まだグウグウ寝てた。 俺は、自分の身体が
自由なのを確認すると、急いで服を着て、荷物を持つと
後も見ずにドアを閉めた。
そしてホテルを出ると、目の前を学生服の連中が
チャリを走らせていった。『そっか。今日は学校の
ある日だった。』と俺はようやく気がついた。
けど俺は、学校になんか行く気にもならなくて、
ピカピカの朝日の中を、そんなふうにチャリをかっ飛ばして
行く連中を、ただ、ぼんやりと見ていた。
『家に帰ろ。』-------でも、帰ったら、オフクロが何て言うだろ。
まぁ言われることなんてどうでも良かったけれど、
ただ、それを考えると、うっとうしかった。


俺は、まだひりひりとする足を引きずって、ゆっくりと歩いていた。
どこに行くのか?
どこに行こうとしているのか。

でも、俺はどこにも行くところがなかった。
途中、何度か人やチャリとぶつかりそうになったけど
それさえも、もうどうでも良かった。
ぶつかりたければ、ぶつかればいいじゃん、とか思った。
うー、頭痛え。 もう ゲロ吐きそ。

その時だった。 俺の目の前で一台のチャリが停まった。
顔を上げたら、 目の前に誰かが立ってた。 もう、ぶつかり
たければ、ぶつかれ、って。クソッ!

「おい、ハル! 」
そこには高垣さんが立っていた。
「あ、俺、今から、家に帰るところなんス。 」 俺はやっとの思いで
そう言った。
「帰るって、オマエ、 その派手ななりで、ガッコ出てくりゃ
いいじゃないか。え? 」

ようやく目がはっきりしてきた。 部長はニヤニヤと薄笑いを浮かべてる。
「その紫のシャツ、なかなかいいよなぁ。 生徒指導の久保が見たら、
もう、プッツン来るぜ。 なぁ。」
「俺、今日、学校休むから、いいんス。」
「ハル、ちょっと顔貸せや。」 部長はそう言って、近くの公園まで
俺を連れていった。
「オマエ、夕べ何やってたんだ。言ってみろ。 」
「ツレに誘われて、飲みに行こう、っていうハナシになって、、」
「そのツレ、って、うちのガッコのヤツなのか? 」
「いや、よその-----」
「その、よその誰かと、オマエは、ホテルに行ったりする訳だな。」
「? 」 俺は、部長の言った意味が分からなかった。
「昨夜、バイトとかいうの、やってたんだろ? 」
「え? 」 俺はベンチに座ったままで、高垣さんを見た。
「ハル、オマエ、かんちゃんを知ってるだろ。」
「あ、ハイ。」
「あいつとは、家が近所でよく遊んでた。もう小さい時から何をするにも
一緒でさ。 すっげえいいヤツなんだ。何でも話せるヤツなんだ。
で、そのかんちゃんがな、オマエのこと、すっげえ心配してたぞ。
水泳部の束村、ってのは、大丈夫か、って俺に聞くから、
どうした? って聞いたら、 ハル、オマエのやってるバイトとやらの
ことを話してくれた、っていう訳さ。」

                               (つづく)


月曜なので、仕事帰りにがんセンターに行く。
寝て、おなかを触診されつつ、、
「どうぉ? 旅の疲れは出てない? 」
と主治医。 
「昨日、早く寝たので、大丈夫です。でも九州すごく
面白かったです。」
「え? 仕事の出張でしょ? 」
「え、はい、まぁ出張と、後、会議が終わってから
九州にいる友達にも会ったので、、。」
「あ、そうだったの。」
「まぁ、今日の採血は来週だけど、触った感じでは
問題なさそうやね。」
「あ、それと先生、こないだのすうっと眠くなるの、
脳外科とかで見てもらったほうがいいですか? 」
「心配? 」
「心配、っていうのか、何か不安で、家族も
セカンドオピニオンで診てもらったら、って言ってるんですが。」
「あなたが希望するんだったら、行ったらいいよ。」

ということで、再来週あたり、その検査で別の病院に
行くことになりそう。 姉の知り合いからの紹介話。


(今日聴いた音楽  グレゴリオ聖歌から
 待降節 第一主日 アレルヤ唱 神よ、あなたの慈しみをわたしたちに示し
 指揮 ローマン・バンヴァルート 神父 O.S.B.
 合唱 聖グレゴリオの家 聖歌隊 
 クリスマスの準備は11月30日に近い日曜日から開始されるのが通例。
 これからクリスマスまでの1カ月が待降節(アドベント)という。
 一週間ごとに、第一主日、 第二主日、と呼ばれていって、最後が
 降誕祭。(クリスマス) 今は待降節の一週目 ということで、この歌を
 聴きました。)


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Comments

 グレゴリオ聖歌,なかなかいいですよね。と言っても,ほんの少ししか知らないんですが。
 その中でも一番好きなのは,レクィエムのKyrieですね。なだらかに上り下りを繰り返した後の5度跳躍とか,たぶん当時の人にとっては目も覚めるような感覚だったんだろうなあと。

 ネットラジオからリッピングした中に,ロシア正教会の聖歌もいくつかあるんですが,これもまた玄妙な音空間で気に入ってます。

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 12. 04 AM 12:55

----Ikuno Hiroshiさん
俺も大して詳しくは知りません。(笑)
ただ、グレゴリオ聖歌の、あの静寂の中から次第にわきあがってくるような、曲、っていいなぁ、って思います。12月の慌しい時期だから、いや、そんな時期で自分を見失いそうになってるからこそ、あんな曲を聴いて、ちょっと気持ちを落ち着けることができたら、と思います。それにしても、声明も、この聖歌も、やっぱり宗教の音楽って、特別な精神性みたいなものを感じますね。

Posted by: 謙介 | 07. 12. 04 PM 10:45

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