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07. 11. 01

かんちゃんのこと(その13)

それから4年が経った。完一は高校を卒業した。もちろん
途中で休みはしたけれど、結局最後まで、彼は陸上部で
走ることを続けた。


そうして彼は関西の大学に行くことになった。
学費は自分で調達しなければならなかったけれど、
誰からも文句を言われずに、自分のやりたいことができる
ということが、こんなに気持ちのいいことだったのか、
ということを、完一は、はじめて知った。

彼は授業の合間に、大学の近くの喫茶店でバイトを
していた。小さなカウンターだけの、バス通りに面した
その店にはいろいろな人たちがやってきた。


そんな中で、完一にはいつも待っている客がいた。
それはひとりの高校生で、彼は思い出したように
ポッとやってきては、コーヒーを飲んで行くのだった。

はじめてそいつが店に入ってきた時のことを
完一は今でもよく覚えている。


最初、完一はエスプレッソマシンの陰から、客が入って
来た気配だけを知った。 そしていつものように
おしぼりを保温庫から取り出し、ガラスのコップに
水を注いで、その客の前に出した。 そうして、その時
はじめて完一はその客を見た。
薄緑色のシャツに濃緑色のネクタイ。
彼はH高の制服を着ていた。
どこにでも居そうなふうの高校生だったが
目だけが、ちょっと違っていた。

その目は何だかとても哀しげで、完一は彼のその目を
見た時に、何となくいつかの自分を見ているような
気がした。 それと高校生は大抵誰かと一緒に来るのに
ひとりで店にふらっと入ってきたのも、他の高校生たちと
ちょっと違うな、という気がした。

その高校生はエスプレッソを注文してきた。
完一はレバーをぐっと引き下げ、シューっという大きな蒸気音
をたてるマシンから抽出されたコーヒーを、にこっと
しながら彼の前に置いた。


その時は、ただ、それだけだった。

                     (つづく)


今日は短めですいません。
明日はいよいよ最終回になりました。
長らくのご愛読に感謝。
感想・リクエスト 
よろしかったらお聞かせください。
よろしくお願いします。


11月の第1週、謙介は毎年大抵
お歌を歌う、ということになっていて、
毎年、今年はどうする? ステージに
立つ? って聞いてくれていたんだけど
今年はそれがなくて、正直、ホッとしたり
していた。 身体もしんどいし、、
体調もいまひとつだし、、と思って
言ってきてくれないのを、これ幸い、
に思って、だまーって静かにしていたら、
一昨日。
「ちょっと、なんで今年は出演者名簿に
あんたの名前が入ってないのよ。」という
大元締めからの電話があって。
「だって、何も言ってこなかったしぃ、、。」
と言ったら、「出るの分かってんだもん。」
って言われたから、、
「今年、、しんどいし、体調はイマイチだから
よそうかなぁ、、。って思ってるんだけど。」
って言ったんだけど、
「何言ってるの。今年は20周年なんだから
出るのよ。」と当然のように言われて、、
「出ます。」と言った根性なし、が約1名。(笑)
そんなわけで、今日は昼の休憩時に
ピアノのある部屋に言って、ひそかに発声
練習をしていた謙介なのであった。(ふぅ)

   

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