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07. 11. 19

退院報告

しばらくお休みをいただきました。


11月のはじめくらいからでしょうか。
普通に生活をしていたら、ふっ、と意識が遠く
なったり、ホンの少しの間ですが、意識が
切れてなくなってしまうことがありました。
そういうことがありました、と、念のために11日の
晩に主治医に連絡を入れたら、肝臓の病気が原因で、そういう
意識障害が起こる肝性脳症という病気があって、その可能性
だってあるからということで、急ぎ入院することになりました。
検査をしましたが、結局肝臓が原因ではない、という結果で
それで今朝退院することができました。

その間、いろいろと病状に関しての励ましのメールや
お見舞いをいただきました。
待ってるよ、と言ってくださったかた。
大丈夫? 辛かったらいつでも話してね、と、途中でいただいた
メール。それから、更新が止まっているにもかかわらず、
サイトを見にきてくださったかた。
それぞれが全部うれしかったです。
本当にどうもありがとうございます。
まずはお礼を申しあげたいと思います。


身の回りがガタガタする時期ってありますね。
実は、少し前から、自分の身のまわりできついなぁ
と思うことが続いていました。そんな中で
入院、ということがありました。
そして今日退院して帰ってきたら、
今度は冷蔵庫が壊れていました。
部屋に入ると台所から、ががががががという
すごい音が冷蔵庫から聞こえてきて、フリーザーをあけたら
中に入れてあった食パンとか、作りおきして凍らせて
おいたはずのハンバーグとか散らし寿司、といったものが
全部自然解凍されてパアになっていました。
冷蔵庫よ、お前もか。(やれやれ)


生きていたら、まったく
いろんな思いもかけないことが
起こりますね。 


病院というところは、人間のいちばん弱い部分が
さらけ出される場所だと思います。
平生なら、適当に隠していられるエゴとか、
押さえつけていた思いとか、そういうものが
わっと出てくる感じです。

急におなかが痛くなって、トイレの
個室に駆け込んで、ふたをあけたら、前の人が流して
いなくて、、入院して、トイレに入って、、
そんなものを見てしまうと、正直言って言葉が
出てこないような、哀しい
気持ちにもなりました。

夜中に同室のおじいさんが、「しんどい、、、、はぁ、、、、、
ワシはいつまで生きられるのだろう。」と独り言を言って
泣くのです。  それを毎晩聞いていました。
消灯になった薄明かり病室の中で、そんなおじいさんの
かすかな声を聞いて、まんじりともせずに天井を見ていたら、
自分も一体、これからどうなるのだろう、と思って
夜も眠れないことがありました。

今回の入院、「おなべ」は一応持っていっていて、
メールの送受信だけ、していました。
こんな日常の中で、みなさんからいただいたメールやかきこみを
読ませていただいていました。
そんなことばひとつひとつが生きる希望になりました。
先が見えなくて、どうしようもない焦燥感ばかりがつのりそうに
なって、寝られなくて。 そんな中でたったひとつ足許を
照らしてくれたメールでした。
だから「生きる希望」っていうことば、
決して大げさな表現ではなかったのです。


特に、今回の入院は、このあいだ、今年の残りあと一ヶ月ちょっとの間
なるべくいろいろな人に会おう、ということを
思って、ここでお知らせしたとたんに、ということだったので
正直、何でこうなるかなぁ、って思ったりしました。


もう本当に人生というのは、こうあって欲しいなぁ、という
ことは予想通りいかないのに、まったく想定外のことだけは、
もう本当にあれやこれやと起こってくれますね。
(みなさんも毎日の生活で、十分承知のはずです(笑)よね。)


今回も入院ということになりました。
けれども、なってしまったものは仕方ありません。


かつて自分の中で病気というものが分かったとき、
やっぱり目の前が真っ暗になりました。
何年かかかって、少しずつ気持ちの整理をつけていって
辛いことですが、それが自分なんだ、と思うようになりました。
まぁそこに自分の気持ちを置くしか、他に場所がなかった、のですが。
使っていた薬のせいで頭の毛があらかた抜けてしまったときも
これが自分なのだ、と思うしかありませんでした。

そんなことがあって、そして今回。
途中何とか落ち込まずにやれたのは
自分が文学をずっとやっていたからかもしれないと思いました。
文学は、人間の営みのすべてを見ていきます。
人間のすばらしいところ、人の善意とか高貴な精神、いうさわやかな
部分だって見て書いていきはしますが、
どろどろとした醜い部分、弱い部分だってたくさん見ます。
適当に嘘をつくところ、ごまかし、暴力、恐喝。
それからエゴと直結したところとか。
汚い部分をこれでもか、と見ていきます。


世の中にはいろんな人がいます。
うそつきで、見栄っ張りで、いいかげんで自堕落で、
だけど、だけどどこか憎めない、とか。
外ではまじめにバリバリ仕事しているけど
SMクラブに行って、縛られるのが好き、とか。(笑)
そんな人だっていますよね。
人間ひとつの面だけではありませんよね。
いろんな面があって、いろんな面を持っているのが
ひとりの人間だと思います。

そうした人間の営みを文章にした文学を通して
人間っていうものについてずっと考えてきていたおかげで(笑)、
そういう病院の中での人のエゴむき出しなところを
見ても、人間って、弱いからそういうところもあるしなぁ、、
って思って済ませられる、ということがありました。

だからあまり落ち込まずに
いられたのだと思います。

それから自分は、ああいうふうにはしたくない、とか
あんなふうに歳取りたいとか、いろいろな人を見て
気がついたり、参考になったりすることもいろいろありました。
いろいろな人たちのエゴむき出しの病院は、
いろいろなことを自分に投げかけてきてくれたし、
大きなものを自分に教えてくれたように思います。
本当にいい経験になりました。
なかなかしんどいこともありはしたんですけどね。(笑)

すっかり間が開いてしまいましたが、
明日からまた“After the Game” の連載を再開
したいと思います。

ハルくんもパンツ一丁で
「謙介ぇ、まーだー? もうさっさとはじめろってばよー。」
と傍らでうるさく言っていますし。(笑)
お時間があるようでしたら、またハルくんの話、聞いてやってください。
よろしくお願いします。

お見舞い、お心遣い、どうもありがとうございました。
待っていてくださったみなさんに、
心からのお礼と、ひとまずのご報告を。

(今日聴いた音楽 人類みな兄弟~夜が来る 
 サントリー・オールドのコマーシャル音楽
 入院している間、ずっと頭の中で鳴り続けて
 いた曲でした。)


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Comments

とにかく、無事退院されて本当によかったです。
謙介さんのご負担になるかもしれないと思って、コメントでいろいろ書くこともためらっていたのですが…。
私のパートナーも、心臓に病を得てからは、術後も時折眩暈や発作に襲われることがあります。これらの症状が完治することはないとのことですし、もう気長に付き合っていくしかないのかなと。
病院には、たくさんの負の空気がながれていますよね。私自身、パートナーの入院中に、いろいろな出来事を見聞きしました。また、思わぬパートナーのエゴにも出くわしたり。でもまあ、こればっかりは仕方ないと思います。

このブログから感じられる謙介さんの誠実さは、目には見えないかもしれませんがたくさんの方々を魅了していると思います。そんな、謙介さんを大切に思ってらっしゃる方から伸ばされた無数の手が、謙介さんの背中をしっかり支えているとも思いますよ。
明日からのハルくんのお話、楽しみにしておりますが、無理はなさらないで下さいね。ボチボチと。

Posted by: 豆酢 | 07. 11. 19 PM 10:37

----豆酢さん
 お見舞いのことば、どうもありがとうございました。まったく一病息災ですね。ひとつ、確かに病気は持ってはいます。けれども、その病気を持っていることで、逆に自分の身体のこととか、身体に訪れる微妙な変化、にも鋭敏に反応して、それが却って健康を考えられる、ということですよね。 俺も最初は病気に抗うことばかり考えていました。けれども、今は、何となく一緒にいけたら、と方針を(笑)変えてみました。それからすごく楽になりました。
 そんなふうに、病気と付き合っていけたらいいなぁ、と思っています。
 ハルくんの話、また再開します。待っていてくださって本当にありがとうございました。
 これからもどうかよろしくお願いします。

Posted by: 謙介 | 07. 11. 19 PM 11:30

 何事もなくてよかったですね。
 きっと冷蔵庫が全部持ってってくれたんですよ(微笑)

 ハルくんパンツ一丁なの?
 さっさとお兄さん(厚顔!)のところに飛び込んでおいでっ(笑)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 11. 19 PM 11:51

こんばんは、お帰りなさい謙介さん。
書き込むのは随分久しぶりです。

更新をお休みされるということで、入院されたのではと案じていました。
どうかご無理なさいませんように。

ちっとも更新しない私のサイトをいつも見にきてくださってありがとう。
それからご自身も大変な中、励ましてくださってありがとう。
謙介さんのお気持ちがうれしかったです。

Posted by: 秋津 | 07. 11. 20 AM 12:01

---Ikuno Hiroshiさん
 昨日は帰ったら、冷蔵庫から面妖な音が
していまして、驚愕しました。
その前兆は実は夏くらいからありました。
フリーザーを開けると氷が一度溶けて固まったような、変な残り方をしていたり、パンを置いてあった部分だけ、解凍されてたり、と、これは正直時間の問題か? なんて思いはしていたんです。でもまぁ持ち直して、ここのところ支障がなかったので、措いていたんですが、とうとう、ダメになりました。20年選手でしたし、(昭和の製造・笑)本当によくやってくれたよ、と思いました。電器店からの帰り、俺もIkunoさんとおなじことを考えました。冷蔵庫が身代わりになってくれたかな、って。
 何はともあれ、またはじめます。よろしくお願いします。ハルはもうねぇ、俺の小説の主人公の中ではいちばんハラハラさせる奴でして。
何を考えているんだか。(笑) よろしくッス
と横で言っておりますです。

Posted by: 謙介 | 07. 11. 20 AM 6:14

----秋津さん
 昨日はこちらはもうスカッと晴れたいいお天気でした。
こちらこそ、おことばどうもありがとうございます。お元気かな、と思ってサイト、お伺いしています。いろいろなしんどいこと、毎日ありますね。もう一体いくつ起こったらいいの? っていうくらい。でも、それをあるがままに受け入れておいでの姿勢、あ、そうだよな、と改めて考えさせていただいています。どうぞこれからも、よろしくお願いします。秋津さんも
お身体、どうぞお大事に。

Posted by: 謙介 | 07. 11. 20 AM 6:19

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