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07. 10. 23

かんちゃんのこと(その6)

それ以来、寮の自由時間、二人は何となく一緒に
いることが多くなった。一人で部屋でボーっとしていても、
何だかつまらなくて完一が俊之のところへ行ったり、
俊之が完一のところを訪れたりした。

だから、それは目立ったのだろう。五月の終わりのころ、
完一は洗面所で、隣の部屋の奴に言われた。

「オマエさぁ、最近いつも浅間さんと一緒だよなぁ。」
「そうか? でも、悪い? 」
「別に。」
「別に、何だよ。」
「悪かないけどさ、だけどオマエ、ひょっとして-----」
「うん? 」
「浅間さんのことが、好き、とかさ。」
「へ? 俺が? 何、それ。」 完一は大きな声を出した。
「だって、いつも一緒で仲がいいじゃん。」


「一緒にいるから、って、そういうことになる訳? 」
「だって、嫌いな奴と一緒にいられるかよ。 」
「だからと言ってどうしてすぐにそう結びつくんだ? 」
「だって、かんちゃんは陸上だし、浅間さんはラグビーだろ?
学年だって違うしさ、何でいつも一緒にいる、っていうことに
なるのか、解んねぇの。」
「オ、俺はさ、ただ、いろいろ悩みっていうか、話があって、それを
聞いてもらってるだけだし----」
「へーえ。」
「それって、変か? 」
「別に。 たださぁ、ずいぶんと目だってるから、それだけ。」


完一はその時はじめて、自分が浅間さんに対してどんなふうに
接していたのか、気づかされたように思った。

----俺は浅間さんのことをいろいろと考えたり、
思ったりする。 だけど、一体浅間さんのことを
どれくらい知っているのだろう。
ラグビー部のフォワードで、フッカーで、島の出身で、
親切で元気のいいおばさんがいて、、、それくらいだ。
でも、不思議なんだ。 俺はいつも最後には浅間さんを
思ったり頼ったりしてる。  だけど、こんなことで本当に
いいんだろうか------
「はぁぁ。」
完一はそう思うと、鏡に向かって大きなため息をついた。


はじめての中間テストが終わり、再び練習が再開された。


しかし、完一は、ずっといつかの隣の部屋の奴に言われた
言葉がひっかかっていた。
そんな時、食堂で、俊之に、「最近、どうしたんだ? 
かんちゃん。また遊びに来いよ。」と言われた。その時は、
「最近、練習とかいろいろと忙しくて。でも、近いうちに行きます。」
とは答えた。しかし、そうは答えたけれど、完一はやっぱり
悩んでいた。

                      (つづく)

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