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07. 10. 16

かんちゃんのこと(その1)

少し前にある人からメールをいただいた。


前に謙介が書いて「さぶ」に掲載された
「かんちゃんのこと」がもう一度読みたいんだけど、、

というお話だった。そうさねぇ、「さぶ」は廃刊に
なってしまったし、、
その雑誌に掲載されていた小説なんて、もう一度、、って
言っても、読めやしないものね。

サイトに載せようかとも思ったけど、こちらのブログの
ほうで読んでくださっている方のほうが多いようなので、
こちらに連載形式で載せていくことにしました。

何しろ、10年前の作品で、、
今にして思えば、まだ未完成の部分が
あれこれあって、、
この機会に直そうか、とも思ったのですが、
リクエストしてくれた方に変わってしまった
「かんちゃん」を読んでもらうと、「俺の読みたかった
かんちゃん とは違う。」 って言われるかもしれないので
必要最小限の訂正だけさせていただいて、
後は掲載時のままです。


  かんちゃんのこと  (「さぶ」1997年5月号収録
                イラストは越後屋辰之進 さん)

            

                   
  新田完一と浅間俊之がはじめて出会ったのは、
完一が高校に入ってまもなくの頃だった。 彼らの
学校はキリスト教の修道士会の運営する全寮制の
学校だった。


 完一はその時、紙袋に入れた一週間分の洗濯物を
洗おうと思い、ランドリー室まで抱えて持ってきたところ
だった。
 彼はそれまで洗濯機なんてろくに使ったことはなか
った。でも、こんな物洗濯物を入れて、フタをして、スイ
ッチを入れてしまえば訳なんてないだろうと思っていた。
が、 何やらややこしそうなのだ。 コース選択? 
水位? 水流? ウール・おしゃれ着コース? 
何だァ、 これ。 まぁとにかく放りこまなきゃ。
完一はフタをあけた。
 と、その時後ろから声がした。


「悪い悪い。すぐに取り出すから。」
 あわてて振り返ると、そこには完一よりひとまわり
大きな(1m85は超えてる、と思った。)がっしりと
した体格の、多分、上級生と思われる人がいた。


「すぐ取り出すからさ。」と言いながら、その人は、
ランドリー室用のはきものにはきかえるのも
もどかしそうに近づくと、「ごめんな。」と言って、
バタンとフタをあけ、脇の紙袋に、その脱水の
終わった洗濯物をどんどん入れていった。


「じゃあ、あいたから。」そう言って、その上級生
らしい人は、ボサッと立っている完一のほうを見て
ニコッとした。「一年? 」
「え、あ、はい。」 完一は少し緊張して返事をした。
「あ、俺、三年の浅間っていうんだ。ヨロシク。」
「あ、ハイ。」
「そんなさぁ、 緊張しなくてもいいよ。 まぁ、そう
言っても無理か。」
「-------。」 完一はどう答えたらいいのか分から
なくて、黙っていた。
「ところで、名前は? 」
「はい? 」
「ナ・マ・エ。」
「あ、 あのう 新田完一っていいます。」
「完一、ふぅん。 かんちゃん、か。 ま、ヨロシクな。」
「あ、いえ。こちらこそ。」

                        (つづく)


                     

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