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07. 10. 17

かんちゃんのこと(その2)

かんちゃんのこと 第2回

「部活決まった?」
「陸上です。昨日、先生に届け出して来たんスよ。」
「何だ。もう決まってんのか。まだだったらラグビーに
引っぱったのにな。」 そう言いながら、浅間は改めて
完一に視線を置いた。

完一は ”どきん” とした。 その視線は決して鋭いもの
ではなかった。 が、 彼は背中をさあっと熱い血の流れが
駆け上がっていったような気がした。

俊之は、洗濯物の入った紙袋を抱え上げた。完一はそれを
しおに、ゆっくりと自分の洗濯物を入れようとした。

「あ。」 完一は声をあげた。 「これ、残ってましたけど-----。」
完一は手を伸ばして、それを取った。出てきたのはカルバンクライン
のビキニだった。
「あ、すまん、すまん。」 俊之は無造作にそれを受け取ると、
さっきの紙袋の中に放り込んだ。

「オシャレなんですね。」
「フン。 でも、 俺なんて大人しいほうだぜ。時々、こうやって
洗濯機のフタを開けると、真っ赤なTバックとかあるもんな。ハハハ。
ところで、かんちゃんは何? 」
「え?」
「やっぱまじめにトランクス? 」
「はぁ、 まぁ、そんなとこ、ですかね。 えーっと、あのぅ。」 俺は
こんな話をここまでしに来た訳じゃないぞ、と完一は思った。

「え?」
「これ、使い方がよく分かんなくって。」
「あ、ああ。これは、ホラ、洗濯物を入れて、それから洗剤を入れて
で、フタをして、このおまかせコースっていうのを押せばいいから、ね。」
「ああ、はい。ありがとうございました。」
「まぁ、分かんないことがあったら、聞いてくれよな。じゃあ。」
 そう言うと、俊之は右手を差し出した。ポカンとしている完一に、
ニコニコと笑いながら俊之が言った。「握手だよ。アクシュ。」
「あ、はぁ。どうも。」 完一もとりあえず手を差し出す。
「よろしくな。 じゃあ。」 そう言うと俊之は鼻歌を歌いながら
ランドリー室から出ていった。


『何だ、ありゃ。』 と、完一は思った。 一体、高校って、、。ふぅん。
 
 そのうち、洗濯機がゴトゴトと音を立てて、回りはじめた。

                               (つづく)

      ×       ×        ×

何か書いていて、カルバンクライン、というのが時代だなぁ、
と思いました。今だったら何になるだろう。うーん。

それからいつかお話したように、この回の登場人物の名前は
「浅間」「新田」ですが、どちらも戦前に活躍した日本の客船から
取りました。
出てくる人の名前は凝ったりすることはないのですが、
ただ作中の中で何度も出てきたり、呼ばれたりする
訳ですから、やはり覚えやすくて、それなりに記憶に残る
名前、というのを考えないと、とは思います。

しばらくこんな感じで小説が続きますが、よかったら
お付き合いください。どうぞよろしく。

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