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07. 10. 19

かんちゃんのこと(その4)

かんちゃんのこと

「ただいまー」 俊之は自転車を店の前に置き、中に向かって
そう言いながら、先に入っていった。
奥から声がする。「オーイ、かんちゃーん。 来いよーォ。」 完一は
その声に導かれるように、酒瓶の並んだ棚の間を中に入っていった。
そこには、俊之と中年の女の人がニコニコしながら並んで立っていた。


「ああ、かんちゃん。こっち、俺のおばさん。」
「はじめまして。」
「あ、はじめまして。---すいません。何か急に押しかけちゃって。」
「いいのいいの。ホラ、夕ご飯さ、食べていけばいいわ。」
「かんちゃんさ、明日練習休みなんだろ? 」
「っていうか、連休中は自主トレ、っていうことになってるんス。」
「じゃあ、泊まっていけばいいじゃん。」
「で、でも-----」
「ホラ、寮監の先生に電話しろよ。」
「いいんですか? 」
「いいよ、ね、 おばさん。」
「そうよ。ウチはさ、全然遠慮なんか要らないんだから。」
「すいません。じゃあ、そうします。」完一は言った。
「今日なんて、晩はカレー作ってたから、人数なんて何とでもなるし。
それにね、フフフ、私、ちょっと作りすぎちゃってて、どうしようか、
なんて思ってたの。だから、良かったのよ。さ、さ、上がって、上がって。」
おばさんは笑顔のままでそう言った。

「ハアー、食った、食った。」 俊之は腹をさすりながら大きな声で
そう言った。
「フウッ。」 完一も大きな息をついた。
「楽にしてよ。後で布団持ってくるしさ。 TVでも見る? でもさ、
どうせ連休だしさ、大したのやってねよなぁ、、多分。」
完一は、そんな俊之の話の中で時折「あ、 え、 いや、、」と言うだけで
後は俊之の言葉だけが部屋の中で、宙に浮かんでいた。


しばらく二人は、取りとめのない話をしていた。たとえば部活のこと。
ラグビー部の練習の方法を完一が聞いたり記録が縮まらなくて
スランプの時なんかは、「どういうふうにして克服するの? 」 と
俊之が尋ねたりした。 けれども、いつまでもそんな話は続かなかった。
やがて完一がふっ、と黙った。


「どうしたの? 」俊之が完一のほうをのぞきこみながら尋ねた。
「俺、わかんないんスよ。」
「うん? 」
「どうして俺みたいなのに、こんなふうに親切にしてくれるんスか? 」
そう言いながら完一は俊之のほうを見た。 しかし俊之はただ微かに
笑っているだけで、何も言わない。


「だって、 だって、、、。変じゃないっスか。」
「そうかな。」
「どうして、こんなふうにしてくれるのか、俺、分かんなくて。」
「別に理由なんてないさ。  だけど、そんなふうにするのに、
何か理由、って必要な訳? 」
「いや、そうじゃないんスけどね。」
「別に、解んなくったっていいじゃん。 だけど、さ、、、」
完一は黙って俊之の顔を見る。

「俺さ、パッと見て、あ、こいつは友達になれそうな奴か
どうか、っていうのはすぐに解るぜ。 直感っていうのかな。
結構当たるんだよ。 これが。」
「そんなものなのかなぁ、、。俺、そういうの、
よく解んないっスけどねぇ。」


                          (つづく)

   ×      ×     ×


朝から頭の中でずーっと中島さんの「見返り美人」が
エンドレスで鳴っている。
「じゆう じゆう   、、、、だってさーみーしーくて
みっかえりのびじん なーきーぬーれて はっぽうびじん」
ここの部分ばっかり。 うーん。 

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