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07. 08. 03

どうすればいいの?

今日はうちのおばのことを書く。

うちのおばは、一昨年、肺にがんが見つかって
去年京都大学の医学部の附属病院で手術をした。

彼女は20年ほど前に胃がんになって、そのときも京大病院で
手術をしてもらって、胃を全部取った。その後は経過もよく
今まで生きることができた。

その胃がんにかかって以来、彼女は身体のことを真剣に考えるように
なった。いろいろな栄養学の本を読んで、栄養バランスの取れた
食事をするようになったり、健康診断も定期的に行って、診てもらうように
していた。自分でも素人なりにがんの勉強をして、
数値の変化があると、彼女は主治医に自分が納得のいくまで質問をする。


そして、一昨年、その検査から、肺にがんができていることがわかった。
がんのステージ(段階)でいえば、あまりいいほうではなかった。
それでも、主治医の先生の手術で、病巣を取ることができた、という
ことだった。手術が終わって、その主治医の先生から90パーセント
転移はないでしょう。ダイジョウブです。と言われた、と彼女も
喜んで電話をかけてきてくれた。


ところが、去年。再びがんが二ヶ所見つかった。
一つは大たい骨。もう一つは脳。手術直後の主治医の話では
転移は考えられにくい、ということだったのだけど、転移をしてしまっていたのだ。

彼女はタバコは吸わない。だから、薬として、イレッサとゾメタという薬を
使うことになった。
ゾメタ、というのが骨に転移したがんをやっつける薬だ。
イレッサのほうは、きつい薬で、実はあちこちで副作用による死亡事例が出ていて
裁判沙汰になってるものもあるくらいのちょっと使用が難しい薬だ。

このイレッサは、もともとの喫煙者には使えない薬ということだったのだけど
彼女は非喫煙者であったので、使用することになった、と言っていた。
このイレッサの使用については、病院から毎日身体の状況の記録をつけてください、
という指示があったそうで、彼女は家にいても毎日熱を決まった時間にはかったり
身体の記録を細かく記録していた。
身体に不調があったら、すぐに病院に電話してください、ということなので
電話をして服用をやめる、ということも何度かあったようだった。

京大病院はさすがに大きな大学病院なので、肺がんの場合は
単に「外科」というのではなくて「胸部外科」という科が担当するのだそうな。

で、そこの胸部外科の先生に彼女は別の治療法を勧められたのだとか。
それが免疫療法、というもの。
どういうものか、と言うと

患者の血液を採血てし、血液内にあるリンパ球を取り出し、
特殊培養容器や特殊培養液で活性化・増幅させるのだそうな。
そうしておいて、その培養したリンパ球を回収し、細胞を投与用に
洗浄調製を行う。
それで投与用に調製された活性化自己リンパ球を、点滴で体内に戻す、
という治療法。 

自分の血液を用いるので、薬を使う、というような
従来の治療に比べて、身体にあまり負担がかからない。そういうことで最近
注目はされている治療法ではある。ただ、この免疫療法には、すごく
大きな問題があってね。


何が問題なのか、というと、実はこの免疫療法、健康保険の適用が
ないので、ものすごく値段の高い治療法になるんだ。

一回の治療にかかる経費が367,500円(消費税込み)
これはたった一回。で、これを6回受けないといけない。
367,500円×6で、2,205,000円。 
ね、ワンクールの治療が220万ほどかかる。さっきも言ったけど、
健康保険の適用はないから、全額患者負担となる。


でまぁこの免疫療法とさっき言った、ゾメタとかイレッサ、という
薬を併用して治療をしている、というのが、目下のうちのおばの状態。


それがね、京大病院のその胸部外科は4階にあるんだけど
問題がある、というのは、一つ階段を下りて3階に行ったら、、、なの。
3階には放射線科があるのだけど、その診察室の前に
放射線科部長名で張り紙がありまして。それには
「当放射線科においては、免疫療法の併用治療をしている
患者さんは一切診察いたしません。」 と書かれてあるのだそうな。


4階で「この治療法しませんか? 」って免疫療法を勧められて、
3階に下りたら、「そんなのダメダメ! 診ない。」って。まぁ、簡単に言うと
そういうこと。これを読んでくださっているあなた、これ、どう思います?
どう思うか? って聞いたけど、実際こういう患者がいるんだもの。
そういう患者さんは、診てくれない。 言ったら診察拒否、ということだよね。


あのね、違う病院なら、そういうことあっても別に不思議には思わない。
A病院とB病院だったら、治療方針に違いがあっても、それは違う病院同士なのだから
あり得ることだろうな、とは思う。

だけど、同じ病院の中の4階と3階で、こんなふうに治療の不一致があって、
それも張り紙にして張り出してるの。 で、はっきり診ません、って拒否してる。
4階でやってる治療法を、3階ではどうやら忌み嫌っている、ということらしい。


そういうわけで、今日のタイトルは「どうすればいいの?」なんだ。
だけどさ、つくづく思うのはさ、この放射線科の部長さん、患者さんのことなんて、
全然眼中にないのね。

大学病院は、研究機関だから、そんな患者のことなんて、、二の次
そう思ってるのかなぁ。
だけど京都大学医学部附属病院の基本理念と
患者の皆様の権利に関する宣言っていうのがあってですね、一応
下のようなこと言うてはりまっせ。


  基本理念
  患者中心の開かれた病院として、安全で質の高い医療を提供する
  新しい医療の開発と実践を通して、社会に貢献する
  専門家としての責任と使命を自覚し、人間性豊かな医療人を育成する


  患者の皆様の権利に関する宣言
  本院は、医の倫理と病院の理念に基づき、患者の皆様の権利を尊重します。
  人としての尊厳を保ちながら、良質の医療を受ける権利
  充分な説明と情報提供を受け、自らの意思で治療法などを決定する権利
  個人に関するプライバシーを保護される権利


「患者中心」って、 ホントに? 心からそないせなあかん、って思って書いてはります?
こんなうそっぱち、小学生があわてて8月30日頃になって作った、
夏休みの計画表と変わらへんやないですか。
実際は違うかったんやけどなぁ、、とりあえず書いてみたわ、っていうことじゃない?
理念を守ろう、という意志がないのであれば、その言葉には何の重みもない。
言いっぱなし。

少なくとも患者さんが、医者にかかる、ということは
今の病状が少しでも改善されて、不快な症状を軽減するか、治して欲しい
という気持ちがあって、治療に通ってきているわけでしょ? 

で、ましてや、大学病院ということであれば、施設もそれなりに整っていると思うし、
スタッフの水準だって、他の病院をリードするような
先進的な研究がなされていて、それに基づいた治療が
受けられるんじゃないか、っていう気持ちだって患者さんの側にあると思うんだ。
だから、そういうことに期待をするからこそ、入院患者さんが全国から来るわけでしょ。

安心したくて、病院に行ってるのに、
これじゃあ、安心どころか、「ワタシ、この免疫療法受けているのに、、
ここでは受けられないんだわ。」って、ものすごく不安になってしまう、と思う。
免疫療法って、病状の進んだ、というか重篤な患者さんに使う治療法だからさ、
診察しない、って張り紙を見たら、ここじゃ受け入れてもらえない、って
ショックを受ける患者さんだっているだろう。


こんなふうに患者さんの気持ちを不安に落としいれるような病院って、
果たしていい病院、って言えるのだろうか? 

おばから聞いた話なんだけど、ちょっとひどいなぁ、と言う話。


(今日聴いた音楽 カンナ8号線 1981年 松任谷由実歌)


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