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07. 07. 17

滞院報告

こんにちは、謙介です。
今、病棟の部屋でこの文章を打っています。

木曜から入院して、
金・土・火曜は朝からずっと検査でした。
朝から夕方まで、立ったり、ベッドに寝たり、息を止めたり、
おなかを膨らませたり
血を採られたり、あちこち引きずり回された感じでした。
明日主治医から、そうした検査の結果が知らされるとのことです。

台風、みなさんのところではどうでしたか?
それから、新潟・長野で大きな地震がまた起こったのですね。


俺の隣のベッドに83歳のおじいさんがいます。おじいさん、イヤホーンをつけて
テレビを見ているのだけど、肝心のイヤホーンジャックがテレビ本体の側に
差し込まれないまま、っていうことがたびたびあって、
大きな音が、そのまま外に聞こえる、ということになっています。
おかげでテレビを見ない俺にも、台風の経過・巨大地震の発生
といったニュースが、ちゃんと伝わってきています。
病棟の面会室にあるテレビで、地震のニュースを一日に何度も伝えて
いますが、本当に心が痛みます。


台風、俺の病院のあたりでは、通過時よりも
実際に来る前の段階がすごかったように思います。
まだ台風は奄美大島のあたり、という時でしたが
トイレに行こうとして、ベッドを降りて、廊下に出たら
激しい雨が窓にたたきつけていました。
もうバシャっとバケツで水をかけたような感じのすごい量の雨が
ずーっと窓をたたいていました。
見ると雨は、上から下という、引力のままに降っていなかったのです。
横。そう左右に雨が降る、じゃなくて流れていってました。
そうか、台風のときは、雨は横に流れるんだ、なんて思いながら、
窓の上のほう、雨水があまりかからないあたりを見たら、
ちぎれた雲が、すごい勢いで向かいの山に吸い込まれていってました。


今まで俺が経験してきた地震で一番大きかったものは、震度5強でした。
地震が起こったとき、
俺はたまたま外出していて、信号待ちで交差点にいたのだけど、
すぐ近くの歩道橋の鉄製の橋げたが、大きくグワングワンと
上下にたわむように動いていたのがものすごく恐かったです。
家に帰りついたら、勉強部屋の5本ある書棚が全部転倒して、
すごいことになっていました。仕事場も、元の状態に戻すまでに
ずいぶんかかりました。
自分の生活の寄る辺が突然に、それも根こそぎ、喪われてしまう、
ということ。それも思いもよらないことで。
この絶望的な気持ちは、誰かが少々のなぐさめの言葉を言ったくらいで
何とかなるようなものでは決してありますまい。
それでも、俺はその言葉でしか気持ちを表すことができなくて
とても歯がゆく思っています。


今までにこのブログで何度も言ってきたことですが、
自然というものは畏怖し、尊敬しなければならないものだ、と
思います。

俺の住んでる場所は時々突風が吹きます。
その突風は、しばしば鉄筋コンクリート製の電信柱を
ポキン、と折ってしまうような威力の風です。
先日も、そんな風が吹いたようで、通勤の途中で
日産のエルグランが道路でひっくり返っていました。


以前は、自然を畏怖する気持ちとか、自然に感謝したり
尊敬する気持ちというのものが、人の感情の中に、
もう少しあったように思います。一体いつから
自然に敬意を払わなくなってしまったのでしょうか。


パソコンを使って、自分だけのバーチャルな世界を作り出したり、性能のいい車が
どんどん開発されて、自分の思い通りに動かせたりするようになった結果、
周囲はバカだ。オレサマが一番エライ、なんていう考えをヒトが持つように
なったのかもしれません。何でも思い通りに動かせる、なんて思ったり。

そういう考えがあるから、逆に自分の思い通りに行かない時は、ものすごくイラついて、
腹を立てたり、場合によれば、キレる、なんていう人もいるんじゃないかなぁ、なんて
思います。 ホラ、いるじゃないですか。車線変更の鬼みたいに先を争って道路を
走るヤツ。速度、っていうより、自分の思い通りに走りたいんでしょうね。ああいう人って。


がんセンターに入院していると、毎日毎日、必ず誰かの死と
接することになります。 大体この病院に運ばれてくるのは、
普通の病院ではもう無理、という人が多いから、そういうことに
なります。もう毎日毎日、誰かを見送ります。
きっと亡くなっていく人だって、大多数の人は
まだまだ生きていたかったに違いありません。
だけど、現実はそうは行きません。
こんなふうに人生の中では、自分の思い通りに行かないことなんて、
いくらでもあるし、不条理なことだってたくさんあります。
ましてや、自然なんていうのは、こちらが
こうなったらいいな、って思ってたって、こうなってほしい、と願ったって、
思いの通りなんていうのは無理ですよね。 


通勤途上でひっくり返っていた
あんなワンボックスタイプの車なんて
車高が高い車は、重心が高いということは、ひっくり返りやすいのだから
強風が吹いたら、速度は落とす、なんて
以前なら、誰しも当たり前に知ってたはずのことだと思うのです。
ところがいつもの調子で
走ったのでしょう。
電柱を折るような強さの横風を受けたら、、
どうなるか、突風に吹かれたら、車はどうなるか、
わからなかったのでしょうか。

そんな、たかが風くらい恐くない、って思って
平常のままの速度を出していたのでしょうか。

人間の存在なんて、自然の大きなサイクルの中で
たまたま何とか生きられているだけのこと。
そんなことを、われわれは忘れかけているんじゃないかなぁ、って
ここ数日のニュースを見てて、強く思いました。


台風と地震。
自然の大きな運行と、人間の生と。

そのことについて、お前は一体どう考えているのだ、という
自然からの人間ひとりひとりへの問いかけ、があった、と思いました。
そして、そのことについて
俺はこの数日の間、考えたりしていました。


食欲は相変わらずあまりありませんが
何とか毎日過ごしています。
昨日、夕方、こちらに雷雨でした。
雷が鳴ったら、梅雨はそろそろ終わり、と言いますよね。
暑い夏が来そうですね。
みんなの夏の計画はどんなものでしょう?
また、お話聞かせてください。
楽しみにしています。
それでは、また。


(今日聴いた音楽 元気を出して 歌竹内まりや
 1994年 アルバム impressions から)

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Comments

 検査って意外に疲れますね。人間ドックでさえそうなんだから,謙介さんはもっと・・・;;;
 検査結果がいいものでありますように。

 「地球に優しく」って言いますが,どう考えても巨大な勘違いですよね。「地球が優しい」んですもん・・・まあ,優しくしないよりは優しくした方がいいんですが,考え方が既に間違ってると思います(苦笑)

 あ,そうそう,僕の夏の計画ですが,何もありません(キッパリ 笑)。
 去年に引き続き,彼氏の再度の資格試験で一泊二日のささやかな島内旅行もなしだし。

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 07. 17 PM 10:18

----IKuno HIroshiさん
 お言葉ありがとうございます。
 検査は、ベッドに寝て、肝臓のあたりを膨らませたまま息を止めたり、「こっちを下にして寝てください。」「はいはい。」「で、息を止めて。」「次はこっちが下です。」「はい。」というような感じで、あれこれとしていただきました。一日検査をして、病室に戻ったら、もう何か一大事業をやり遂げた、っていう感じでぐったりでした。(食事も、朝から抜きでしたし。)
 何かあの「地球に優しい」っていうの、Ikunoさんのおっしゃるように、元々の言葉の取り方もそうですが、ちょっと控えたところで、結局使ってるんだし(笑)なんだか使う側の気分的な免罪符みたいになってるようにも思うんです。使うのであれば、無駄が出ないように、出ても最小限になるようにとことん生かして使うように、、っていうことになるのでしょうね。今年の夏は、そうですか。ここでがんばっておいて、充実の秋が来ることができたらいいですね。

Posted by: 謙介 | 07. 07. 18 PM 1:28

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