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07. 06. 04

もしも、の時には

月曜日なので仕事が終わってがんセンターに行く。
この時間は予約の人しかいないはずなのだけど
内科外来、今日はまた待つ人が多い。
聞くまでもなく外来の受付窓口に俺の主治医の名前があって
「○○先生、予定より1時間半遅れています」との掲示。


前に入院していたときからの顔なじみの人がいたので
挨拶をする。俺と同じ主治医。
60くらいの男の人で、仕事は農家だとか。県内の町に住んでは
いるけど、隣の県の境に近いから、この病院まで来るのは
ちょっと大変だ、という話を前に聞いたことがある。
「地元に病院はないんですか? 」
「田舎やからね、診療所みたいな、小さなとこはあるんやけど、私の病気を
継続して診てもらえるような設備のあるところではないんで、
しんどい話ですけんど、月にいっぺんのことやから、ここまで
出てきてますわ。」とのこと。

田舎にあるようなお年寄りがボツボツ来る程度の市町村立病院では
毎年赤字が出る。
そうすると、市町村の外部監査委員の人から、
効率が悪いから経営状態の改善をしろ、とか、
病院も経済性を追求しなければならない、と言われる。
そんなことで、田舎の病院がどんどん閉鎖されたり統合されてなくなっている。
しかも統合されて、病院は遠くなったり、診察してもらえる科も減る、
ということがどんどん起こっている。


それからこれは俺も実際に見たことなのだけど、
あるとき田舎の祭りでけが人が出た。太鼓台の上に乗って
囃していた若い人が太鼓台から振り落とされて地面に落ちた。
救急車を、と誰かが携帯で消防署に連絡して呼ぶことになった。

以前はそこの地区にも救急車はあったのだけど、市町村合併で、救急車は
以前の隣町の消防署に全部集中配置された。しかも、その救急車、
たまたま別の病人の搬送やら事故で、出払っていて1台もいなかったらしい。
そこで救急車要請は、協定を結んでいる別の町から来ることになった。
救急車が到着したのは、なんと1時間も経過した後のこと。

幸い命に別状はなかったから、よかったようなものだったけど、
実は今、田舎に行くと、こんなことだって起こっていたりする。
しかも「死んだ人は出なかったから。」という理由で
新聞の記事にもならなかった。


俺がずっと前に島に住んでいたときも、夜、急病人が出た。
定期船はもうない時刻だったので、海上保安庁に電話をして、
巡視船に来てもらって病人を運んだ。
このときは幸い海がおだやかだったから
船もすぐ来てもらえたけど、仮に海がしけていて
船が接岸できなかったら、、どうなっていただろう、ということを後から話したりした。

  ×     ×      ×


「さっき○○先生、病棟から戻ってきましたわ。」
「やっぱり1時間半遅れですかね。」
「たぶんねぇ。」
とそんな話をする。

交通機関だと定刻より遅れてしまったら、クレームが集中するだろうけれど、
病棟に行っていた、ということは、病棟で病状の急変した人がいるからで
もうこれは、お互い様だものね、と思うより仕方がない。


「ピアニストの羽田健太郎さん、亡くなったそうですよ。」と、おじさんに話す。
「あんたの知った人かな?」
「いえ、テレビに出てる有名な人だったんですけどね。」
と俺が言うと「ほうかな。」とまったく関心はなさげ。
「死因は肝細胞がんだったそうです。」と俺が言うと今度は
みるみるかわるおじさんの表情。

「あらぁ、ほうかや。それで、その人、いくつで亡くなった?」
「58歳だそうです。」
「ほうかなぁ、、」とおじさんは少し考えていたらしい。
ちょっと間があって俺に言った。
「やっぱり、肝臓の病気は、60がひとつの山やなあ。美空ひばり石原裕次郎も60にもならん間に、、
やったろ。」
「俺もねぇ、やっぱり同じ病気で亡くなる人のニュース聞くと、やっぱりショックですねぇ。」

「わしゃ、60がひとつの山と思うとる。わしもな、この10月で60よ。
ぼーちぼーちお迎えが来るような気がしとるんやけどな。」
「そんなぁ、、。」
「そやけどな、もし万が一の時のことは考えておかんといかんやろ。
死んだ時によ、有名人だったら、今話が出た人みたいに新聞や
テレビで言うてくれるやろうけんど、わしみたいな人間は、知らせんかったら
みな知らんからの。」

「そうですよね。そういうときに誰と誰に知らせたらいいか、ちゃんと
考えておいて、家族に話しておかないといけませんよね。」
これは大切なことだ、と思った。
実はこのことは前に姉に話をしたことはあったのだけど
すいぶん前で、またそれから人間関係とか付き合いのある人が
変わったりしている。

それから、そのおじさんともう少しいろいろな話をした。
だけど、話をしながら、もし自分が亡くなったときに
家族に頼んで、知らせるのは誰と誰にしておけば
いいかなぁ、、ということを考えていた。

帰りの車の中もずっとそのことを考えていた。
職場関係はまぁ必然的にお知らせするだろうし、、問題はプライベートな友達関係だな。
こういう友達関係って誰のところへ知らせたら、いいのか、って考えはじめると
誰と誰と、、っていろいろと考えた。
だけど、こういうことって、やっぱり日ごろからちゃんと
考えておかないとなぁ、、。
そんなことを考えながら、病院から戻ってきた。


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Comments

 もしもの時・・・ですかぁ。
 僕は性格が猫な上に,人間関係については妙に達観しちゃってるものだから,別に誰にも知らせないでもいいやって(汗)

 「あーそういえば,アイツどうしたんだ?最近顔見ないけど」
 「半年前に死んだらしいですよ」

という具合に,ひっそり逝きたいですね(変人!)

 ま,実際のところ,知らせなきゃいけない人ってのもほとんどいないんですけどね(笑)


 沖縄本島北部の集落(公共交通機関はほとんどないに等しい)でも,医師不足&財政難のあおりで診療所が閉鎖されちゃいました。
 採算だけではないだろ,と思うんですが・・・

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 06. 05 at 오전 1:04

僕も、母親とは、もしもの時に誰に連絡するかという話をしてます。
誰がいつ亡くなるかは分からないですけど、いつか死ぬことだけは
わかっていますしね。いろいろと考えてみて、、今のところ、ですが、、
例え小さくても構わないから、のこされる人がいたときのために、、
集まって些細な想い出話なんかをしてくれる人たちに、
連絡を届けてもらいたいな、と思ってます。
そう考えて、もう少し素行を見直さないと、と少し焦ってたりしますが。(笑)

Posted by: rhino | 07. 06. 05 at 오전 1:05

----Ikuno HIroshiさん
 ええ、まぁ俺もね、昨日病院からの車の中で、
えーっと彼には知らせたほうがいいのか、うーん。
でも、最近というか、ここ何年も音信不通だしなぁ、、とか考えていくと、ほんの少し、ということになりました。でも、そのどうしてもお知らせしたい、っていう連中は、逆に言うと俺にとって本当に大切な友達ばかりで。日ごろは全然意識していないし、(ねぇ。普通はそんなこと考えませんよね。笑)改めてそんな彼らのことを思える機会ができて、これはこれで、ああ、よかった、って思いました。
 四国もそうですけど、へき地は今、どんどん病院がなくなっていますね。やはり沖縄もそうですか。採算・効率って、それで片付けられてしまってはねぇ、、。人が当たり前に生きる、ということすら保障されない、って、一体どういう社会だろう、って改めて強く思いました。

Posted by: 謙介 | 07. 06. 05 at 오전 9:13

----rhinoさん
 お書きいただいた文章を読んで、あ、俺も願いはこれなんだ、って思いました。俺の友達の中には、すでにもう何人か、思い出の中でしか会えなくなってしまった連中がいます。けれども、残されたわれわれが、時々集まっては、「あいつ、あのときあんなふうに言ったよね。」なんていう集まりがあります。たぶん彼も目には見えないけど、ここに来ているんじゃないか、と思ったり。そんなふうな集まりがあったらなぁ、と思います。あ、でも俺も、後になって「謙介ってさ、ほらぁ、、」って言われないようにしておかなくちゃ。(笑)

Posted by: 謙介 | 07. 06. 05 at 오전 9:25

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