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07. 06. 27

筆を買いに行って「中国」を考える

土曜日の晩、実家に戻っていたのだけど、夜の8時過ぎだったかな。
玄関のベルがなった。
一体なんだろう、こんな時間に、と思って、玄関に出たら、
近所の中学生(男子)が、彼のお母さんと一緒に玄関に立っていた。
「まぁどうぞ。」ということで、中に入ってもらって
話を聞くと、何でも剣道の昇級試験があった、とかで、
その免状をもらってきた、と。ところが、免状の文章とか
授与する剣道の団体名なんかはもう印刷されているけど、
名前や、授与された年月日は、改めて筆で書かないといけない。

そういうことで、「ついては、謙介にその字を書くのを頼めないか。」
というお話だった。
中2の男の子、えらい緊張しているみたいで、こちらの聞くことに
何でも「はい。」としか答えない。(答えられない、というほうが正確かな。笑)
「この門田という名前は、かどた、って読むの? それとももんでん?」
「はい。」
どっちなんだよぉ。とは思うけど、もうね、そんな質問も分からないくらい
頭がポーとなってるみたいなの。かわいいやつ。

まぁね、あまり日ごろお付き合いのない
人にいきなり会って、用事を頼む、ということは、多分まだそういう経験の少ない
彼の人生の中ではものすごい大事業、っていうことなんだろうな。
(おっさんになると、そういう面倒なことばかり来るもので、自然に場数を踏んで
 少々のご依頼は無理やり引き受けさせる、という荒業だって用いるように
 なれる。)
あ、おっさんはいいんだ。その中学生の話。もうねぇこちらまで緊張感が
伝わってきたもの。
「はいはい書きますよ。何枚あるの?」
ホッと表情の緩む彼。でもあがっているのかこちらの質問には答えられなくて、、。
彼のお母さんも「すみませんねぇ。お忙しいのに。こんな手間なことをお願いして、、。」
と口ぞえをする。「○○、何枚あるの? ちゃんと言わなきゃ。」 さすがは母。
ちゃんとフォローがある。
「え、、と剣道部で今回受けて合格したので、、7枚です。」
「いつまでに仕上げたらいい?」
「え、っと水曜日まででいいです。」
「あ、じゃあ明日の夕方には渡せるから。」
と言ってお引き受けをした。

彼のお母さんの話によると、彼はもうすでに初段なんだそうな。
だけど、剣道部の副主将で、そういう雑用をする係になってて、
それで頼めないか、って持ってこられたそうな。
道理で彼の名前がない(田舎のご近所だから、お互いの
名前はみんな知っている。)と思った。

彼らが帰ってから、「あ。」 と気づく。
実は先日仕事場のほうで、ある人に渡す感謝状を書いてくれ
って頼まれたんで、筆だの墨だの硯だのの一式の入った
バッグを仕事場のほうにおいてきていたのだった。
幸い小さな硯と墨はあった。問題は筆。
ま、この際もう一本持っておくのもいいか、と思って、明日朝
買いにいくことに。

と、いう経緯があって、日曜の10時。店の開くのを待ちかねて
書道用品店に行く。
筆のコーナーに行って何本か見る。
筆も値段が本当にいろいろで、同じ太さの小筆でも1本が200円
くらいから1000円、2000円なんていうものまで、いろいろなランクが
ある。もちろん毛の材質もウマにヒツジにイタチにタヌキに、、といろいろ。
毛の材質に特徴があるから、書くものに応じて、その材質の
毛を選ばないといけない。 
筆なら何でもいいんじゃないのよ。
弘法は筆を選びまくりなんだから。
今回はオーソドックスな賞状書きなので、
腰のすわった剛毛のほうがいいかな、と思う。小さな部分でも
ちゃんとこちらの動きに反応してくれる毛がいい、ということで
イタチ、タヌキの毛の筆にしようと決める。

イタチの毛は、毛の材質がやや固めなので、ちょっとした手の動きにも
素直に反応してくれる。だから書きやすい。
それが、ヒツジだったら、ちょっとねぇ、、。
書いててもくにゃくにゃしてて、力を入れても
その力が半分くらい抜けて出てしまう。
書いた作品はふにゃふにゃだし、、。(笑)
前に、ヒツジの毛の筆で書いてる、って言ったら、
「ウールマークはついてないの?」 って聞かれたことがあって、
ちょっと絶句してしまいました。 あれは毛糸とか毛織物に
つくんじゃないのかな。 筆にはそんなものつきません、ってば。

それでイタチの毛の筆で、まぁまぁのものをさがすことに。
よさそうなものがあって、値段を見る。1本840円か。
まぁこのくらいかな、って思う。その中から今度は
1本選ぶことにする。
というのが、その840円のイタチの毛の筆が、そのボックスの中に
30本くらい入ってるんだけど、
日本の筆だと、筆の持つ部分(筆管)の竹の太さとか、筆の毛先の
長さとか全部同じはずだよね。均一な製品。
ところが中国製のこの筆、
持つ部分の竹の太さは筆それぞれによって全部違う。
おまけに筆の竹だってまっすぐなのもあれば、くにゃ、って曲がっているのもある。
だからその中から自分の手になじむものを探す、ということをする。
太いのは書きにくいし、かといって細すぎるのも書きにくいし、、
ということで、一番自分の手になじむものを選んだ。

でね、俺、ここでちょっと考えたんだけど、中国の筆って、たいていそんな感じで
筆によって、それぞれ形状が異なっていたりすることがよくある。

たぶんそんな筆の管の太さとか、竹の曲がっているのとか、
中国の人は、どっちでもいい、って思っているんだと思う。
だって、そんな部分で字を書くわけじゃないから。
筆にとって大切なのは、毛であって、それがすべてだもの。
筆管なんて、はっきり言って要するに持てればいい、っていうこと
なんだから。
製品としての形状を整える、っていうことは二の次で、
もっと実質的に、その筆で字を書いたとして、そこそこの字が
書けるかどうか、っていうところに主眼があるように思う。


そういう実質主義というのか、実利主義というのか、見た目とか形なんかより
そのものが、自分にとってどれくらい利用価値があるかどうか、っていう部分に
中国人って、すごく敏感だと思う。中国で1年少し暮らして、彼らの意識を
見てて、はっきりそう思った。まぁ最近では上海あたりではおしゃれになって
多少、そういう外見っていうことも、出てはきたけど、家計とか、
仕事の交渉になったら、そんなことより、あくまでも実利優先。
だからさ、中国政府の発表する統計とかコメントなんて
あんまり信用できないじゃないよね。北京ではあのように言ってはいるけれど、
果たしてその実態は、、って言ったら
そういう政府のコメントと実態では、ぜーんぜんかけ離れたものだったり
するのが当たり前みたいだし。中国の内実を知ろうとすると、そうした乖離状態
があるなんて大抵の人は知ってる。
それにさ、そういう実用本位っていう見方で見ると、中国でなぜ海賊版とか
コピー商品がなくならないのか、だってはっきり分かるじゃない?
要するに浜崎あゆ○のCDが欲しければ、聞く側の人間にとっては買ったCDから
自分が聞きたい、って思ってる彼女の歌が流れてくればいいわけで、
コピー商品であろうがなかろうが、そんなことはどっちだっていいんじゃない?
コピー商品だったら、おまけに安いし、万々歳じゃないか? 


ちなみに日本人は「形式」にこだわるものね。時には形の優先ばっかりで、
肝心の内実を忘れていたりさえすることだって、よくあるように思う。(笑)
ホラ、資格試験とか検定を受ける、っていうの。資格を取って仕事に
役立てる、とかその希望の職種に就くために取る、っていうのが
最初の目標だったはずなのに、いつの間にか、資格試験に合格する
ことが目標になってる、なんていう人いっぱいいるじゃないか。
資格ばっかりコレクションしてどうするの? っていうの。
ああいうの、資格取るとか検定に受かるのが趣味? なんだろうか。

これも誤解してる人が結構いるんだけど、
「黒い猫でも白い猫でも鼠を捕る猫がいい猫」っていうあの言葉、
鄧小平が言った、って思ってる人がいるんだけどさ。
あれは鄧小平じゃなくて、もともとは四川省の農民のことわざなんだ。
それを彼が引用した、だけのこと。

ね、だから中国人民は、こんなことわざをもともと使っていたわけでさ。
もう、このことわざを見たら、彼らが実利主義だ、っていうのが
一目瞭然じゃないか。(笑)

筆でもそうだけど、紙とか筆とか、俺、書道やってた関係で
こういう中国のものを使ってたでしょ。だから、そういう品物を使っている中で、
彼らが、品物について、どういうふうい考えて作っているのか、
自然とそういうことも実際に経験してなんとなく感じるようになった。
だから、中国の人とお付き合いするときは、そお互いどこまで実利的に
値打ちがあるかどうか、っていう駆け引きということになるんじゃないかな。
こちらも形より実利。彼らと目先のことで交渉するときは「損して得取れ」の精神で
行かなきゃダメじゃない? 


筆を買いに行って、そんなことを考えてた。(書道用品店の店先で
こんなことをボーっと考えている奴も奴だけど。)

筆を買って帰り、昼までに免状書きもできて、
夕方にはちゃんと渡すことができた。 めでたしめでたし。(笑)


(今日聴いた音楽 阿川泰子歌 シニア・ドリーム
 アルバム  SUNGLOW から 音源はLPレコード
 今ではセダンタイプの乗用車を作らなくなって
 しまったいすゞが、作った ピアッツア っていう車の
 CM音楽で使っていました曲。 あーさんのコンサート
 コンサートに行きました。はい。)

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