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07. 06. 21

近頃おもしろいゲイ小説、読みましたか?

まずはじめに、このブログをお読みいただいている方に
ちょっとお伺いをしたいのだけど、
「近頃、おもしろいゲイ小説を読みました?」


今の世の中、どれほどの物語が出てるのか、
ちょっと想像つかなくて、俺の読んだ、なんていう小説の数なんて
たかが、っていう数でしかなくて、ひょっとして俺の把握していない
ところで、すごくおもしろいのがあったりするかもしれない、のだけど、
なぜだか、そういうおもしろいゲイの小説に行き当たらない。

じゃあ、何でゲイの小説がこうもおもしろくないのか?
っていうのを今日はちょっと考えてみようと思う。


あのね、ブログに書かれている小説っていうのを俺、読むんだけど
あ、その前に。
誤解しないでね。俺、その書いている人の批判っていうんじゃなくて
全般的な傾向についての分析だから。

たとえばこんな出だし。

俺は丸の内に勤めるリーマンだ。
毎日、地下鉄に乗って丸の内のオフィスまで通う。
同じ課の後輩で道孝っていうヤツがいて、
こいつがとってもかわいい。

これは今、俺が適当に書いたんだけど、
こんな文章読むと、この冒頭の3行だけで
俺なら、ああ、もういい。って読むの止めたくなる。

この文章、全部説明でしかない。

地下鉄通勤をしてる。
丸の内に勤めるリーマン。
同じ課に後輩がいる。名前は道孝という。


全部状況の説明でしかない。
小説の文章が、いちいち状況の説明をしてどうするよ、って思う。
説明文とか論説文じゃないんだから。
小説の文章ならば、こういう状況の説明っていうのは、ストーリーの
展開に応じてすこしずつ読者に自然に分からせるように
工夫しなきゃ。それが小説の文章なんだ。
こんなふうに状況の説明をする文章なんて小説の文章じゃない。


で、こういうふうにはじまった説明過多の文章って、
何もそこだけでなくて全体にものすごく説明が多い。
説明なんて余分だから、全部カットしてしまったらどうなるのか。
説明以外の文章を、、って残ったの見たら、
多分ほとんど何も残っていなかったりする。


みんな、ためしに身近にある小説を読むときにね、一文一文、
これは説明だ、これは小説の文章だ、って分析しながら読んで
いってごらんよ。
そうしたら、何でまぁこうも説明が多い文章が多いのか?
やれやれ、って思うから。

小説っていいながら、こういう説明過多の文章なんか書いてたらダメだ。
まずこれが問題のひとつ。


それからさ、ブログでゲイの人が書いてる小説ってさ、
何だか書いてる人自身が、ゲイの小説を書いている、って
いうその一点だけで
もう自分は特別な人間だ、って思ってるふしが感じられるの。

だから、その出来上がった作品見たら、とにかく、字数をこなしました。
いっぱい書けましたね。はい。それでおしまい、とか。(笑)
何か、というと作品として一定の水準に達していない。


なにさま、書いてる本人がさ、ゲイの小説なんか書いてる
イコール、すごいことやってるんだ、っていうふうに思ってる。
だから、作品としての相対的な水準を見て、出来はどうか、っていうところまで、
思考が行かなくて書いてる。どうだすごいだろう。そのことに酔ってる。 
そこでストップしてるというか、終わってしまってる。だから文章が
ひとりよがりになって、読み手の気持ちの中にまで
作品全体が訴えかけてこない。
印象が弱い。
読んで数日したら、どんな作品だったのか、すっかり忘れている。


肝心なのは、小説の出来であって、書き手のご大層な意識じゃないもの。
ゲイ小説を書いてる、っていう意識が強すぎて、小説の客観的な
評価のめがねを曇らせているように思う。
もうちょっとクールに作品を見ないと。
突き放して見るくらいでないとね。


ふたつめの問題はそこにあるように思う。


それから、よく歌を歌う人にもいるんだけどさ、
声は確かにきれい。きれいなんだけど、歌全体を聴くと、
聴き手の側になんにも訴えてくるものがない、っていう人が、いる。


文章も同じでね。確かに一文一文の文章は上手なの。
だけど、トータルで作品としての
小説として見ると、肝心の構成ができていない、
っていう作品も結構多い。

もっと言っちゃうとさ、小説のテーマがない。
そりゃあ、テーマなんて、書き手がこれです、って説明するのはダメさ。
だけど説明はしなくてもね、書き手のほうに、俺はこの小説で
こういうことが言いたい、是非とも伝えたい、っていう気迫がないと
ダメだと思う。書き手にそこまでの了見があって書いてるのか?
俺、まずそれを書いてる人に問いたい。
あなたはどうしても、小説にして伝えたいことが
ちゃんとあって書いてますか? って。

単に登場人物が出てきて、適当に登場人物同士の交流があって、
場面が来たから、バックに一発挿入なんかしちゃってさ(笑)
アヘアヘって言って、イク! っていうんじゃあ、ちょっと、、ねぇ。


もし、「絶対俺は伝えたいものがある。」 
そういう意識があって書いたものなら、読み手に
たとえ、それが第一印象で、読み手が変なの、って思っても
あ、この人は、何かようわからへんけど、とにかくこのことだけは
言いたいのね、っていうことが伝わってくると思う。
俺、それが伝わる小説だったら、もう少々文章が下手だろうと
ディテールがいびつだろうと、全然問題ない、って思うの。

そうやって書かれた小説って、逆に言うと、その人の
切実な問題に根ざしているわけでしょ。
だから、現代のある部分を切り取って見せている、っていうことだってあると思う。
だけど、一体どれほどのゲイの小説で、現代のある部分を切り取って見せている
とか、反映してる、っていう小説があるだろう? 

この自分の生きてる「現代」ですら反映できないんだよ。
われわれがこうして生きている「今」ですら伝えられない、
伝わってこない小説なんてさぁ、、、、、。
だから、書いた段階で既にして終わってる、って言うの。
言い方きついかもしれないけど、そういう小説がホントに多いもの。


こういう小説って、読んでて先が見えてしまうほどの
ワンパターンでしょ。
あ、次はこーなるぞ、って予測ができる。
そうして、あ、やっぱりキターって。(笑) 
作品ごとで違うのは、登場人物の名前と職業くらいじゃないのかな?

さっきゲイの小説を特別視なんかしたらいけない、って俺言ったよね。
なぜか、ていうとね、これは前にもちょっと書いたけど
(多分みんな覚えちゃいないだろうと思うのでもう一度書くと)
俺、去年の今頃だったかな、3年ほど前まで芥川賞と直木賞
の事務局で責任者をしてた人に会ったんだ。


もちろんその賞の選考は数次に分かれていて
下読みからはじまって、候補作の選考、っていう何段階ものステップが
あるのだけど、その下読み段階でね、
候補で上がってくる小説のうち、男性筆者の
書いた小説の4割がゲイの小説だってさ。
編集部じゃ、「またホモ小説だよ。」って言ってるぐらい数が多いの。
ね、だからゲイの小説なんて、もうありふれてるんだよ。
ちっとも珍しいなんてことはない。
そんな現況で、ゲイ小説なんて書いているのが
特別だなんて思ってちゃダメなんだ。

そんなことより、もっともっと大切なことは、ゲイという登場人物をなぜ出してきたのか
ということと、その小説が、あなたでなければ、他の人間には絶対に真似して
書けない物語を書いているかどうかということじゃないか、って思う。


俺が言う、「小説としての水準を問う」っていうのは、
そうしたことができてるかどうか、なんだ。
ゲイを出してきてもいい。だけど、出すのなら出すだけの必然性が要る。
ゲイの人間が書いたからゲイを出す、って、それでいいの?
その必然性があるかどうか、一度考えてからにしたほうが
いいんじゃないかな。

もし、そんな必然性も、書いた人らしさもない、という作品なのであれば、
それは「山なし、落ちなし、意味なし」のやおい小説と
結局同じになっちゃうじゃないか。俺はそう思う。


それからゲイ雑誌の編集サイドにも問題があるよね。
お友達感覚で作ってるからなのかどうかは知らないけど、
作品の出来不出来より、書いた人間が編集にとって知り合いかどうか
で採用不採用を決めているもんね。


あ、知り合いのなんとかクンが書いて持ってきたから、
これは載せよう、って言って簡単に掲載する。
その一方で編集担当の人間が書いた技量よりいいものは
ジェラシーだか嫉妬だかがあって、いくら作品が良くっても
載せない。載らない。

だからさ、デフレスパイラルじゃないけど
作品の質がどんどん矮小化して落ちていってしまう。
俺、そんなのを密かに「お文ゲイサークル」って呼んでるんだけど
もうそういう状況よ。

だって、それが証拠に、雑誌に載った小説なんか、
思わず「こんなのが載るの?え、うっそ、マジ? 」って思うような程度の
ひどい作品が平気で載ってたりするじゃない。そう思わない? 
雑誌に出てる小説読んで。 作品見たら、それが了解されるような
のが結構出てる。 事実として。


まぁそういうことで、こんな問題が複合的にからみあった結果
なかなか読んで、ああよかったなぁ、
おもしろかったなぁ、、っていうゲイ小説にお目にかかれない、
っていうことになってるんじゃないか、って思うんだ。


これじゃあ、おもしろいゲイの小説なんてなかなか出てこないよな。
どうかしたら、いい作品の芽を摘みたがってる編集者ばっかなんだもの。
と、暗い気持ちになっている。

閑話休題。
月末も近づいてきたので、大家さんのところに家賃を持っていく。
いつもは旦那さんか奥さんかのどちらかが出てきて
応対をしてくれるのに
今日はなんと二人がご一緒に。
ちょっとびっくりした。
門前の桔梗の花が曇った空にすがすがしく咲いていた。

(今日聴いた音楽 明治製菓 チェルシーのうた
 小林亜星作曲 安井かずみ作詞 歌CHEMISTRY
2000年 アルバム Between the Lines所収)

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おげいじゅつ」カテゴリの記事

Comments

もう少し若い頃だったら、、生理的理由から(笑)流し読みすることもありましたが、、今はほとんど読まなくなりましたね。

最近のゲイの小説がどんな感じなのか、よくわからないのですが、、小説として読んでみたいものがあるとしたら、40代くらいのカップルの話ですかね。結婚して子どもを育てている人たちよりも可処分所得が多くて生活は楽しめる、とゲイマーケットあたりから言われることがありますよね。男女のカップルと対比しても面白くなりそうな気がしますし、それぞれの親兄弟との関係なんかから、今の家族関係を見てみるのも、ゲイが登場することで得られる視点がありそうに思いました。シャワー浴びながらの思いつきですが。(笑)

Posted by: rhino | 07. 06. 22 at 오전 1:33

---- rhinoさん
 あ、いいところに目が! って思わず思いました。
ね。だから、いつまでも先輩後輩ものとか、運動部の話とか、まだ若い大学生くらいの年代のカップルの話とか、そういう設定の話っていうのは、すごく多いんですけど、でも多すぎて、あ、また体育会系の男の子ね、はいはい、なんていうことだってあったりします。今の世の中、カップルとか家族構成のあり方なんて、本当にお話のように百人百様ですよね。もうちょっとそんな十年一日のようなお話の設定から離れて、「今」を描くようなものを書いて欲しい、って思います。もうそろそろそんな今の世の中を描いたものが出てきてもいいんじゃないですか、ね。

Posted by: 謙介 | 07. 06. 22 at 오전 5:49

はじめまして。

最近小説を書いたのですが、
読んでいただけないでしょうか?

本記事およびその2で述べていることを見て、
この方に読んでみてもらいたい、と感じたのです。

お気が向けばよろしくお願いします。

私は、なおと言う者で、
http://blogs.yahoo.co.jp/moeheya
ここに中編小説を現在毎日載せております。
こちらサイトには検索エンジンからたどり着きました。

Posted by: なお | 07. 07. 08 at 오전 4:21

----なおさん
さっそく、ブログにお伺いして読ませていただきましたよ。そちらにも書かせてもらったのですが、
文章のテンポがいいし、自然だな、と思いました。
それから形にはめ込もうっていう意識がない点も
いいなぁ、って思いましたよ。
いろいろな作品をお書きなんですね。また、おじゃまさせてもらって続きを読ませてください。楽しみにしています。どうもお知らせくださってありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

Posted by: 謙介 | 07. 07. 08 at 오후 6:07

説明になっている文章については同意だけど、ブログでやってるゲイ小説にそれをいっても仕方が無い。嫌なら見るなとしかいえない。あと自分はすごいことやってるんだー、って穿って見すぎじゃないですか?自分も小説かいてますけど、かきたいからかくだけですけど。

Posted by: | 11. 11. 19 at 오전 2:08

---???なお方
こんにちは。はじめまして。どうもおよみいただいてありがとうございます。この文章書いたのが2007年で、ちょうどサイトから移行してすぐの文章でした。で、サイトのほうで、ずーっと市販のゲイ雑誌の編集についてあんな志の低い編集でいいのか、って批評する文章を書いてきていました。だから上の文章を読んでくださった方、というのは、当然ゲイ雑誌のことだ、というのを前提にして話を読んでくださっている、ということがあります。
 もちろんおっしゃるようにブログは嫌なら読まなければいいです。それに会員制有料コンテンツ以外は、タダですし。課金も発生しません。
 そんなことじゃないんです。俺の言ってるのはゲイ雑誌のことです。店によったらセロハンで覆って、中が見られない。で、お金を出して雑誌を買う。そうしたら、やれやれ、という小説しか載っていないわけです。 なぜかといえば、編集が自分の知り合いだったら、少々下手でも載せる。でも上手な奴が投稿したら、フン、とか思って載せない。そういうの、ってお金取って売る商業誌のスタンスだと思います? ブログはタダだし、嫌なら見なきゃいいんです。おっしゃる通りです。でも、お金を取って作ってる雑誌なら、そんな文芸同好会の方式でやっちゃダメでしょ? っていうことを俺はずーっと言ってきたんですよ。だから、この文章を書いた段階では、このブログを読んでくださる皆さんは、たいてい、ああ、またか、(笑)っていう共通理解あったし、俺もそんなの繰り返して言わなくってもわかってもらってる、っていう部分があったから、敢えて書いてなかったんです。そうですね。2011年段階になって、そこだけ読んでもらうと、ちょっと誤解を生みそうですね。また加筆したほうがいいかなぁ、と考えました。まぁそういうことですね。ええ。

Posted by: 謙介 | 11. 11. 21 at 오전 5:56

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Tracked on 07. 06. 23 at 오후 10:11

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