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07. 05. 18

「姉」の教えたまひし言葉

夕べ実家から電話があった。
「ソウルの○さんから、郵便が来たわ。」とオフクロ。
「かまへんから(かまわないから)あけて。」
「何や本が入ってる。私、このカギみたいな文字読めへんから分からん。
あ、本のカバー内側に○さんの写真がある。たぶん○さんの書いた本やわ。」

その○さん、というのはソウルの「姉」のこと。
彼女と俺は血縁関係はない。
だけど、ソウルで暮らしはじめたときに彼女は俺に
「私をソウルの姉と思ってなんでも相談しなさい。」と言った。
それ以来俺は彼女のことを「ヌナ」(男性から見た姉の呼び方
韓国語では、女性から見た姉の呼び方は「オンニ」、男性からは
「ヌナ」と呼ぶ。)とお呼びすることになった。

この「姉」との最初の出会いは俺が大学生だったとき。
3回生だったときに彼女は韓国の大学を終えて、しばらく働いて
俺の大学に新入生で入って来た。
なので、学年は俺のほうが上だったけど実際の年齢では
彼女のほうが上だった。
彼女とは学科が違っていたのだけど、中国文学の授業が
一緒で、中国文学の先生が「謙介くん、彼女、韓国からの留学生だよ。
ホラ、あんた、韓国語習ってはるんやし、何か彼女に話しかけてごらん。」
と言われて、「チョウム ペッケスムニダ。」(はじめまして) って言ったのが
そもそものはじまりだった。
もちろん俺が先に卒業することになったのだけど、その後も何かと
話をしたり、お互い用事を頼んだり頼まれたりすることがあった。
中で一番大きかったのは、彼女の院の論文、それも修士論文じゃなくて
博士論文を俺が校正して清書したこと。
原稿用紙に手書きしたんだよー。400字詰めの原稿用紙800枚。
校正から、清書まで3ヶ月でやって、って言われてさ。
書くの慣れてはいたけど、さすがにこのときは腕がヘロヘロになった。

でまぁ俺が清書した論文も無事に提出できて、
その後の口頭試問にもパスしたんだろう。彼女はパクサ(博士)
の学位をもらった。
まぁそういうことがあって、彼女は今めでたく、ソウルは筆洞の某大学
(ソウルに詳しい人は一発で分かるよね。笑)でキョスニムになっている。

ちょうど彼女が学位をもらってその大学に就職したころ
俺もひょんなことで、ソウルに仕事が見つかって行くことになった。
そうしてソウルにやってきた俺に、「私をソウルの姉と思って、、」
と親切に言ってくれたのだった。また、実際にいろいろな手続きを
するときの保証人になってくれた。
韓国ってコネ社会っていう一面があるから、そういうときに彼女が
一緒に来てくれて、私が保証人です。と一言言ってくれたおかげで
手続きがあっという間に済んでしまった。もし俺が一人で役所とか
銀行にいったってすごく待たされたり、また今度ね、なんて手続きを
引きのばされていたかもしれなかった。事実その言葉通りに彼女は
本当にいろいろと気を配ってくれた。
それから実際ソウルで暮らすときに、持っておいたらいいさまざまな
実際的なことも教えてくれた。
あるとき、俺が郵便屋さんとトラブルになった、ということを話した。
郵便局に行って、窓口で料金を聞いて切手を貼って出したのに
料金不足で、郵便が戻ってきた、ということがあった。
その話をすると、彼女は、そういうときは「がーん、と言ってやらなくちゃダメ。
いい? きれいな言葉だけ知ってても何の役にも立たないのよ。喧嘩をするときの
必要な言葉を教えてあげる。」ということだった。

ソウルというか韓国は自己主張の激しいかたがたが多い(笑)ので、
こちらも負けずに自己主張しなくちゃいけない。喧嘩だって
必要なときはしなくちゃなんない。
その時に、「あわわわわ。」って何もいえないんじゃ、最初から負け。
「いい? 私が教えてあげるからね。いざという時はちゃんと言うのよ。」とおっしゃって、
パクサニム(博士様)が最初に教えてくださったのが
「ポンデギ」という言葉。
「ポンデギなんて知ってますよ。屋台で売ってるじゃないですか。」と俺。
ポンデギって、実は蛹なんだ。これを茹でたとか炒ったものを
屋台で酒のつまみで売っている。

最初はさなぎー、って思ったけど、日本だってイナゴを炒ったりザザ虫を食べたり
する地方があるから、まぁ似たようなものか、と思い直した。
だけど、そのボンデギって???

「何ですか?」 って聞いたら、大先生(テソンセンニム)はのたまわれた。
「○んちんが小さいやつのこと。」
「ち--------.」こちらは思わず吹き出した。お、おねいさん。
「まだあるよ。トキジョッノマにムルジョッノマ。」
「え? どうせ変な言葉なんでしょう?」って俺が言ったら
「トキジョのほうはそーろーで、ムルジョのほうは勃たないやつのことよ。
いい? 喧嘩するときはね、相手の顔をジーっと見ておいて、
大きな声でパーン、って言ってやるのよ。
このボンデギ野郎が、って言うの。いい? 

そういうふうにして「彼女は喧嘩をするときに要るからね。」
って罵詈雑言の単語をいくつも教えてくれた。
そういう姉のご指導はあったのだけど、幸か不幸か俺はそんな言葉を
一度も使わず、激しい喧嘩もあまりせず(2回くらいはしたけど)
ソウル生活を終えた。


姉はますます元気のようだ。
だけど、授業中、まさか男子学生に「ムルジョノマ!」なんて
言っている、のだろうか。
(セクハラだよね。まったく。)
まさか、と思いたいけど。どこかで、ありそうなこと、という気も、、。(笑)
今晩実家に戻ったら、本を見せてもらって
近いうちにお礼を出さなきゃな、って思った。

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Comments

 思わず「オンニ〜!」と呼びかけたくなっちゃいます(笑)

 「ポンデギ」は裏の意味を聞いたことがあるような・・・使う機会はまったくなかったけど(苦笑)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 05. 19 at 오전 11:11

素敵なヌナがいらっしゃいますね。(笑)
ポンデギにそんな意味があるとは知りませんでした。
確か、唐辛子の「コチュ」もそうですよね。
昔、コッ(花)を読もうとして、間違って「コチュ、コチュ」と呟きながら歩いてたら、
友人に、それはあまりいわない方がいい、と言われました。(笑)

多分、もうないと思いますが、もし友人とけんかすることがあったら、
こちらで学んだこと、ぜひ使ってみようと思います。(笑)

Posted by: rhino | 07. 05. 20 at 오후 2:07

----Ikuno Hiroshiさん
 恐るべきオンニーです。というのか、韓国では
普通のおねいさん、ではありますよね。
韓国って、いつも言いますが、そんな女性の力で
国が回っているように思いますです。

Posted by: 謙介 | 07. 05. 20 at 오후 2:21

----rhinoさん
 そうでしたそうでした。「コチュ 」もありましたよね。(笑)花の「コッ」っていう発音、
あれ、日本人にはすごく難しいですよね。
言うのを何度も何度も練習してようやっと、、
ですよね。なかなか言うの難しい言葉です。
 実は、悪口(ヨクソル)あのほかにも、山のように
教わったのですが、またそのうちお話します。
 

Posted by: 謙介 | 07. 05. 20 at 오후 3:03

韓国はヨクの多い国ですよね。
日本が少ないのでしょうか?
 韓国のお姉さんが送ってくださった本は専門書ですか?
 蓮池さんが翻訳なさった詩「君がそばにいても
僕は君が恋しい」という本があるんですけれども
謙介さんみたく、韓国語ができたら原文のまま
読めて楽しいだろうなと思いました。。。

Posted by: yoko | 07. 05. 21 at 오후 6:04

----yokoさま
多分はっきりと自己主張が激しい分、そういう
ヨクソル、言う機会は日本語の会話に比べて
ずっと多いように思います。韓国ははっきり
その人の前で言うし、言われた側もまた同じように
言い返しますから、陰湿な感じにはあんまり
ならないように思います。それと火山の噴火
みたいに、言って爆発してしまった後は、
またさーっと元にもどってたりするので、
カラッとした感じですね。
 姉の本は、彼女の専門でした。途中
漢字の言葉も出てはくるのですが、専門学術用語
が多くて、「何かむずかしそうやなぁ、、。」
とパラパラと見て、机の上に置いてあります。(笑)

Posted by: 謙介 | 07. 05. 21 at 오후 7:17

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