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07. 05. 10

こども電話相談、のようなもの

昨日の晩、先日本のタイトルを聞いてきた高校の時の同級生夫婦から、
また電話がかかってきた。
「あのな、ちょっと相談があんねん。今、かまへん?」
「ええよ。何?」
「実はうちの愚息というか豚児というか、、○○(彼らの息子の名前)の
ことやねんけど。」
「ふん。」確か彼らの息子は今年中学の3年で、来年の春は高校受験だった、
ということを思い出した。
「今日な、あいつ学校から、第一回進路希望調査用紙、っていうのをもろて
来てな。さっきまで受ける高校のことで話合いしてたんやけどなぁ、、。」
いつもは元気な彼も今日は心なしか声に精彩がない、という感じだった。
「どこ受けるか、まだ決めかねてるとか言うん?」
「いや、そうやなくて、もっとそれ以前のことで問題やねん。」
「それ以前? 」
「何のために勉強するか?」っていうことであいつ「分からへん。」って
言うねん。
「分からへん、って息子が言って、父ちゃんはどう答えたん?」
「そんなもん、アホに磨きかけてどないすんねん、って。」
「わはは。」
「そやけど、そんなことではあいつ納得しよらへんねん。」
「そら、せんわなぁ。、、、俺でもせんわ。」
「それでどう言うたらええか、ちょっと困ってなぁ、、。」
「どう言おうか、って言うのが相談?」
「そうそう。」
「分かった。 そうしたら、 すぐ豚児というか愚息さん、ちょっと
呼んでくれるか。」

「もしもし。こんにちは。○○くん?」と俺が言うと
「こんにちは。」あれま、新鮮な反応。(笑)、、いや、いかんいかん。
「俺、○○くんのオヤジさんの高校の時の同級生の謙介っていうの。
前に、○○くんが小学生だったときにみんなで一緒温泉行ったよね。
覚えてくれてる?」
「あ、はい。」
「来年は高校受験、っていうことになるのんかなぁ、、。早いなぁ。
お風呂行ったときは、まだ○○くん小学校の5年やったけど、もう中3やもんな、、。
で、どこの高校受けるか考えてる? 」
「あ、いや、まだです。」
「今なぁ、キミの父ちゃんから聞いたんやけど、何で勉強せなあかんか、
悩んでんねんて?」
「-----------」
「今のキミは、どう思ってるの?勉強って必要だと思う? どっちでもええと思う?」
「どっちでもいいとは、思わないんですけど、、、。必要なのか、って言われたら、
よく分からないんです。」
「ああ、その悩み分かるわ。 まぁ今の世の中って、確かに勉強して学校行っても
就職できにくいっていうのもあるし、就職しても、会社が急につぶれる、なんて
いうことやって普通にあったりするものね、、。」
「そんなのに、どうして勉強しないといけないか、って言われても、、。」
「そうやなぁ、、。」

確かに自分の将来を見たらさぁ、希望がもてないもんね。
どうしようもない、というのか、「さっぱり分からない」というのか、
「予測なり漠然とした想像さえ持てにくい」というのか。

「おっちゃんな、実は今、週に一回がんセンターっていう病院行ってんねん。」
「病気なんですか。」
「まぁね。ただ、おっちゃんの病気は急に悪くなったりはせえへんから、
きちんきちんとお医者さんに診てもらって追跡調査やってる、っていう、ことやねん。」
「------」
「がんセンターって、がん、っていう言葉がついてるくらいやから、がんの専門の
病院なんや。でな、小さい病院で診てもろて、そこのお医者さんでは、設備とか
がないからもうちょっとよう治せんなぁ、、っていう重い患者さんばっかりやって来んねん。」
「はい。」
「でなぁ、ここの病院は他の病院と違うんや、、。 患者さんが検査とかお医者さんの
診察を受けるやろ。そうして、例えば胃がんが見つかった、と。そうしたら、お医者さんが
言うねん。あなたは胃がんです、って。」
「はっきり言うんですか?」
「うん。ここの病院は100パーセント告知、っていってね。はっきり患者さんに言うのが
決まりになってんねん。だからはっきりと言う、、、。で問題はその後やねん。」
「何か違うんですか?」
「うん。普通なら、あなたの病気は胃がんです、って言って、そうしたら、こういう治療法で
ホラ、手術します、とかこの薬を使います、ってお医者さんが言って、治療がはじまるやろ。」
「はい。」
「そやけど、がんセンターはね、あなたは胃がんです、って言ったら、次にお医者さんが
こういう治療法があります。こういう手術による治し方があります。こういう薬を使った
治し方があります、って言った後で、さて、あなたはどれにしますか? って患者さんに
訊いて来んねん。」
「え? それ、、、お医者さんは、、。」
「お医者さんは決めない。患者さんが、そうしたらこの治療法にしてください、って
決めんとあかんねん。それなあ、難しい言葉で言うとインフォームド・コンセント って言うてな。
最近は大きな病院がだんだんこういうことになってきてんねん。」
「-------」
「そやからな。お医者さんに訊かれたら、自分が判断せんとあかんのや。」
「えーー、そんなん、難しい。」
「そやねん。日ごろから自分で勉強して自分の頭で物を考える習慣をきちんと
つけてる人は、いろいろデータを調べるとか、信用のおける人に聞くとかして
最終的には、自分で判断をつけられるんや。せやけど、何にも勉強をせんかって
父ちゃんの言うアホに磨きをかけてたら、お医者さんにそう訊かれたって困るやろ。」
「困ります、、。」
「えーーーそんな難しいこと訊かれたって、わからへん、、。って言うことになる、よね。
そやけど、難しいことわからへん、、、って言うてたら、自分の命もわからへん、っていう
ことになんねん。どうする? 困るやろ。」
「ハイ。」
「そやから、いろいろな本を読んだり、データを見たりしてなぁ、どれが正しいか
怪しいものなのか、っていうことをきちんと自分の頭で考えられるようにして
おかんとあかん、って思うねん。 誰かが言ったから、って簡単に信じていいとき
とあかんときがある。でもその判断はどうやってつけるか、っていうと、
科学的に筋道をたててものごとを考える、っていうことせんとあかんやろ。」
「そうですね。」
「そやから、自分の頭で筋道をたててものごとを考えるとか、人の気持ちは
こういうときには、どういう気持ちでいるか、とか想像したりすることって大事に
なってくるんや。勉強ってそのためにするねん。言うてること分かってくれた?」
「ハイ! 」
と言った彼の言葉のトーンがはじめにくらべて、明るく元気そうだったので、
少しは分かってくれたのかな、と思った。
父ちゃんに変わってもらう。
「一応納得してくれたみたいやで。」
「どうもありがとう。」
「なかなか大変やなぁ。」
「まぁな。」
そう言った後で彼は軽くため息をついた。
今の世の中って、「希望」が持ちにくい、持てない社会だもんね。


仕事帰りに病院に行く。今飲んでる薬が効いてきているので、しばらく
これで経過を見ましょう、とのこと。ホッと一安心する。


(今日聴いた音楽 平井堅歌 One Love Wonderful World  2002年)

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Comments

僕も、中高生の頃に謙介さんの話を聞きたかったです。(笑)
筋道立てて物事を考えることの大切さなんて、訓練させてもらった
大学を卒業するまでほとんど意識できなかったですもんね。

それにしても、中学生の子、「分からへん」と言えて、よかったですよね。
そんな大事な場面で頼られる謙介さんがまた、すごいと思いました。

Posted by: rhino | 07. 05. 11 AM 1:16

-----rhino さん
 実は俺も物事を筋道立てて考えるのが苦手なほう
なんですよ。それで困ったことになる場面がよくあったのと、病院へ行ったらお医者さんがそんなふうに言ってる、のを見てたんです。俺が話した内容が、そんなふうに自分自身の実体験から出た言葉だったので、中学生のその子も納得してくれたんだと思います。高校の同級生は、もう腐れ縁みたいなもので、「何や、わからへんことがあるな。」と言ってはお互いに「どうしよう?」と相談しています。頼られる、なんてかっこいいものじゃなくて、お互いが「頼り合い」をしてる、というようなところが実態なんですよ。(笑)

Posted by: 謙介 | 07. 05. 11 PM 1:27

こんにちは、謙介さん。
すっかりご無沙汰してしまいました。

「何の為に学ぶのか?」息子もその年頃に同じようなことを言っていました。親も子供と一緒に考え考え育ってきたような気がします。

娘がお薬を頂きに通っている病院でのことです。孫の通院に付き添ってきた女性がお医者さんに不定愁訴を訴えていました。(待合室に相談内容が聞こえてしまうというのも問題ですが)「娘が『習い事でもしてみたら』と言うのですが。習い事をしたほうがいいのでしょうか?」と。お医者さんは少し突き放した様子で「ご自分で決めてください」と答えました。「いえ、先生。誰かに決めて貰いたいんです」「ですからご自分でお考え下さい」というやり取りが印象に残っています。

人生の岐路に立ったとき、学んできたことが生かされるのかもしれませんね。

Posted by: 秋津 | 07. 05. 13 PM 4:03

----秋津さん
 こんにちは
 いえいえこちらこそです。毎日、しんどいことも
多々ありますが、こういう時こそ、「適当に流す」
ということも大切で、、。のんびり行きましょう。
 最近の病院、お医者さんの対応が変わって
きていますよね。大きな病院は、そんなふうに
患者さんに方針を決めさせる、っていうところが
増えてきているようです。だけど、病気のときほど
不安だってすごく大きいものがあります。
みんな強い人ばかりじゃないのだから、患者さんに
よったら、お医者さんに気持ちを寄り添ってもらいたい、っていうこともありますよね。そうしたところで、もう少し何とかならないものかなぁ、と思ったりすることもあります。
 またメールします。楽しみにしていることを目標に、お互い何とかやっていきましょう。(笑)

Posted by: 謙介 | 07. 05. 13 PM 4:38

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