« 安いものには訳がある | Main | 顔について »

07. 04. 24

「連戦連敗」を読んで

こないだから安藤忠雄さんの「連戦連敗」という本を読んでいる。
安藤忠雄というのは、ちょっと前まで東京大学の先生だった人、
というよりむしろ建築家として名前が知られていると思う。

俺の住む街にも安藤建築がいくつかある。何度か出かけた
△印良品の入っていたビルが安藤さんの設計、
と知って、ああ、あれが、っていうような認識の仕方では
あったのだけど。(笑)

この本はその安藤先生が行った集中講義の話を、
文章に起こしたもの。だからこの本の出版は東京大学出版会(笑)

建築家の仕事というのが二通りある、っていうのは俺もなんとなく知っていた。

ひとつは事務所を開設していて、そこにお客さんがやってきて
「うちの建物の設計施工をしてくれないでしょうか?」
って言ってきたのを請け負うもの。
これは、言うなれば依頼が直接あっての仕事だから、
最初から決まっている。

もうひとつ。それとは別にコンペっていう公募展がある。
国家とか財団とか団体が何か建物を作る、ある地域の整備を
行う、ということになって、それを誰にさせよう、ということに
なったときに、指名をするためのオーディションを行う。

ただ、大きなコンペになったら、誰でもが自由参加、というわけではなくて
過去の実績がある程度ある人を最初から6、7人か選んで、その人の出した
案を審査する、というようになってるようだ。
一次審査は省略して、二次審査から入る、っていうようなもの。

安藤さんは、もちろんいろいろな建築を手がけてきて
実績もあるから、そうした財団とか国家からコンペに参加しませんか?
という話が来るらしい。で、そのコンペに出す、ところがそうしたコンペでの
結果は、「連戦連敗」という結果になるのだそうな。

俺は文系の人間だから、建築のことは分からない。
だけど、展覧会の審査とか公募ということで言えば、
書道でも小説でもあるから、分野こそ違うけど、その募集・審査の過程って
いうことでは、読んでて、ああ似てる似てる、って思った。

コンペに作品を出すときにどうするのか?
安藤さんは書いている。

 コンペの要綱を熟読し、その背景にある諸事情まで想像を及ばせながら
 その条件をかいくぐって実現し得る建物の可能性を探る。

これを俺の専門の言葉で言うと、
展覧会に作品を出すときには、審査員の顔ぶれを見て、どういう作品傾向だと
入選するのか、しやすいのか。それと自分の書く作品の字の特徴をいかに
調和させて、かつ独創的な作品に仕上げるのにはどうすればよいか、という
ことを考える、ということだと思う。
こういう記述を読んでいると、ああ、建築も文学賞も展覧会もおんなじなんだ、
って思ってしまった。(笑)

書道をやってる友達でも、出品する展覧会に応じて作品の傾向を微妙に変えていた。
これは毎日展向き。こっちは日展。これは読売書法展、っていうふうにね。
そういう出す展覧会で、審査員の顔ぶれが違ってくるから、そういうことも頭の
中に入れて、作品を出す、なんていうことをしてた。
そういうのって、戦術の一つとしてあることなんだよ。

こんなことを書くと、「え? 自分の好きなように書いて展覧会に出してだめなの?」
という質問も来るかもしれない。まぁそれは展覧会の性格にもよるから
はっきりしたことはわからない。だけど、たとえばゲイ雑誌で言うとね、
G-MENにジャニーズ系の男の子が主人公の小説書いてですよ、
載ると思います? (笑)

いや、それは雑誌の編集長さんが決めることだから、はっきりしたところはわかんないけど、
でも雑誌によって大体の傾向があるでしょ。だから、そこからあんまり逸脱したような
内容のものは載りにくいでしょ。そういうことだよね。

 安藤さんはこんなふうにも書いている。

  特に近年のような厳しい社会状態の中では、コンペの勝敗は死活問題です。
 ただ勝つことだけを目的とするようになったら建築家としては終わりですが
 負けてばかりいては建築という仕事自体を続けられなくなってしまう。
 不安定でリスクが高い一種の賭けのようなところがあるのです。
  これは自分との闘いといえるでしょう。考えに考え抜いて、それこそ
 ギリギリのところで理想と現実とのバランスをとりながら前に進んでいかなければ
 ならない。絶えず緊張感を持っていないと、瞬く間に転落してしまう。建築で
 生きていこうとするなら、必ずこのジレンマに苦しむことになります。

ホントは建築だけではないんですけどね。(笑)書道だって小説だって
こういうところはあったりするから。

生きていると、自分の思い通りに行かないことなんてしょっちゅう。というか、
思い通りにいくこと自体がすごくまれなことで、思い通りに行かないことが
普通だったりする。ため息は出る。自分のやり方は果たしてこれで
いいのか、悩むことも多々ある。
だけど、俺なんかから見たら、十分すごい安藤さんでさえも、
そんなことに向き合われて闘ってこられたんだ、、、。そんなことを思うと
安藤さんの存在が少し身近に感じられたりもした。

建築を志す若い人に、建築をやっていくために必要な覚悟を求めていることと、
そんな人に自分が一生かかって追い求めていく生涯のテーマっていうものは、
どうやって見つけていくのか、そんな安藤さんの打ち明け話が書かれている。

専門外の話だけど、自分の中で近い部分がいくつもあって、俺的には
すごく面白かった。

(今日聴いた音楽 BUZZ歌 愛と風のように 1973年
 音源はカセットテープ 日産プリンス(当時)製作  非売品
 愛と風のように、というよりケンメリのスカイラインの
 コマーシャル音楽、というとああ、と反応される方も
 いらっしゃるかもしれませんね。 スカイラインは今年で
 発売開始50年だとか。さすがのゴーンさんも作るの
 止めなかったんですね。笑 ということで、50周年を
 お祝いして、今日はこの音楽でした。)

|

« 安いものには訳がある | Main | 顔について »

おげいじゅつ」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91870/14827551

Listed below are links to weblogs that reference 「連戦連敗」を読んで:

« 安いものには訳がある | Main | 顔について »