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07. 04. 06

京舞と歌舞伎と

今月の1日から、京都・祇園の歌舞練場で、都をどりがはじまっているよね。

しかしまぁゲイのブログで取り上げる題材が「都をどり」かよ、って。(笑)
GBrに登録されている他の方々は、と見ると、選挙におけるゲイとしての政治的な意識の
持ち方について、、とか、ゲイのカップルの方々は日々の生活のあれこれとか、他には
××でみかけたオニイチャンがいけてた、とか。
内容は社会的な考えさせられる問題とか、カップルっていいなぁ、とか
あ、そういうのあるよね、とか。そういう話が多いし、そういう話って
読んでみようかな、っていう気になる。後、エッチなゲイ小説とか。

それが、謙介の「終着」のブログときたら、少し前がジャズ喫茶、
それから今度は都をどりで(ハハハハ)
もう一体これは何だ、というようなものですね。(笑)
まぁ、それも謙介の興味の方向のひとつ、ということで
お許しのほどを。

ということで今日のお話はタイトルのように京舞。
京舞は、京都の一角祇園の中だけで伝承されてきた舞。
他の地域では京舞の公演は東京なんかでもあるだろうけど
京舞を教えることができるのは祇園だけ。


京都に住んでいたときは、祇園とか北野っていう場所だって、やっぱり行った
というか、自転車でよく通った。北野あたりまでは、生活圏だったし、、。
だけど、おなじ北野でも上七軒、となったら、まったく自分の生活からは
関係のない場所だった。上七軒って、芸妓さんがいて御茶屋遊びするようなところね。
だから俺の生活とまったく縁がなかった。まぁ市バスに乗ってて、「次は上七軒、、」って
言われると、あ、もうすぐ天神さんや、(北野天満宮)というくらいしか意識はなかった。

祇園だってそう。 八坂神社とか、映画を見に祇園会館へ、とか夜桜を見に円山公園へ
っていうことがあって、祇園へいくことはあったけど、
花街としての祇園はついぞ関係ないよなぁ、、っていうようなものだった。
だって、祇園でお茶屋遊び、、なんて、ねぇ。(笑) まったく関係のない人生だ、
なんて思ってた。(と、助動詞過去がここに来ます。 )

花街なんて(「はなまち」、なんて間違った読み方はしないでね。花街、と書いて
正しい読みは「かがい」だからね。)無縁だと思ってた。
ところが人生どこでどうなるやらわからない。
謙介は、大学院で歌舞伎の授業を取った。まぁ院の授業では歌舞伎なんて言わないで、
近世演劇史研究っていう授業で、中身が歌舞伎、だったわけなんだけど。
で、まぁ歌舞伎の授業のテキストって、こんなものなのさ。
Kawai

題は「南総里見八犬士傳 花魁莟八総」(なんそうさとみはっけんしでん 
はなのあに つぼみのやつふさ) っていうの。
「発端 矢取の浦の段」 って書いてあって
1行目だけ読むと、
「犬の夜を守るや性なり。主を敬ひ主を志(し)」って書いてある。
何か小さな□があちこちに見えると思いますが、これは、今の文章で
最後につける「。」句点。

まぁ国文学科の学生で日本の古典を研究対象にしてる奴なら、
この程度の浄瑠璃の床本はフツーに読めるのが当たり前でさ。
だから授業は、その読んできたことをベースに話の筋を追って
ここで登場人物が、なぜこういう行動をしたのか、とか
それについてどう思ったのか、っていうような意見交換を
を中心に授業をしていった。

もちろん、歌舞伎の授業だから、おいおい演劇史とか歌舞伎役者のことも
調べてきたり、実際に南座とか金毘羅大芝居に行って歌舞伎を
見て、ということもあった。金毘羅大芝居では、実際に奈落に行って
回り舞台を下で回す、とか、いうようなこともやった。

指導教官は、江戸演劇史というのか、近世演劇の専門だったし
加えて学生が全員歌舞伎が好きだったから、結構テーマの話し合いとか
役者の月旦とか、結構深いところまで取り組む授業になった。
その指導教官、女の人だったけど、ものすごく気難しい人で、学内でも、
あのセンセイは恐い、難しくって嫌、っていう評判のセンセイだったんだけど(笑)
そのセンセイが「俺たちの授業だけは楽しかった。」って、最後に述懐して
くれて、メシまでおごってくれた。(後でその話を違うゼミの奴にしたら
え、あのセンセイが、、って絶句してたくらい。それは特別待遇だった、と。笑)
学生も全員もう凝りまくって情熱を傾けて、調べてきて発表したから
討議も丁々発止のやり取りがあってね。盛り上がった。
やっぱり嫌々授業に出てるんじゃなくて、好きなことをやってたから
みんなものすごく細部までこだわった調べをやってきていて、
そんな予習のおかげで、みんないろんな質問が出て、それをディスカッションした。

誰かが中心になって、話を進めて、なんてことは要らなかった。
みんな質問しまくって、納得がいったら次、っていう感じだったから、
自然に流れができていた。
さすがの気むつかし屋の先生も1度も声を荒げて注意するなんてことはなくて
終始おだやかな顔で、俺たちの発表を聞いたりしてた。


そのセンセイ、実は、京舞の井上流の名取でもあったんだ。
で、授業の合間に井上八千代さんのお稽古の話とか、井上流の
舞の話もしてくださった。
で、なぜ、それで祇園か、と言うと、最初に書いたけど
京舞、というのは井上流しかない。だから京舞=井上流の舞、ということになる。
そして、井上流の舞は、祇園の中だけでお稽古されて、そこでのみ
伝えられてきた。だから京都の祇園以外の場所に、井上流の稽古場は一切
ない。もし、その掟を破って、他の場所で教えると、それは破門ということになる。
そうして、伝承されるのは、必ず女性のみ。男性の踊りはない。
だから京舞を踊る人は、全員女性。そして、京都の祇園にお稽古に通える人、
というのが前提条件となる。

で、主に京舞を習うのは、俺のセンセイみたいな一般人も少しはいたけど、
大抵が、祇園の舞妓さんとか芸妓さん。もちろん、いつだったかマスコミを
にぎわした、佳つ○さんも祇園の芸妓さんだから、当然この京舞を習うし
うちの指導教官と時期的に同じ時期に名取りになったそうな。
「踊りの会では一緒になることもあるわよ。」とのお話。

そういうことで、センセイの話を通して
祇園の裏側のいろいろな話を聞くことになり、それまで、自分なんかと
全然関係のない、と思ってた、祇園の舞妓さんのことが急に身近に
なってしまったのだった。(笑)

先代の井上八千代さんの好物はコロッケだったとか、
お稽古の時、先代さんは面倒なときは、パジャマのままで教えていた、とか。(笑)
ちなみに先代の井上八千代さんは人間国宝。
いきなり人間国宝がですね、パジャマ姿で出てきて「お稽古どす。」って。あなた。(笑)
で、お稽古の時間は原則的にひとり30分だそうで。
舞いの演目も、簡単なのなら、30分で2,3回は繰り返して舞えて、稽古もつけられるのだけど
一つが長い時間の演目になったら、一つ舞うのに40分くらいかかって、だから
そういう場合は一回すら全部時間内で見てもらえない、ということもあったとか。

そんな話を聴いているうちに、「センセイ、今度祇園を見学に行きたい。」という話に
なって、授業の中で「御茶屋」に行ったこともあった。
大学院の授業で祇園行って御茶屋遊びなんかやったの、って
多分俺のところくらいじゃないかしらん。(笑)
だけど、祇園という街が、どういうふうな仕組みになっているか、とか
御茶屋というのがどういうふうになっているか、とか
そういう遊里のしきたりなんかは実際に体験してみないとわかんない、ことだしね。
独特の符丁とかしきたりだってあったし、、。
あれは、ホント楽しい授業だったなぁ、、。
あれ以来、京舞と聞くと、それまでみたいに全然かけ離れた、っていう意識が
なくなったのがおもしろい。

まぁ何はともあれ、春爛漫のこの季節。
都をどりを一度、京都は祇園の歌舞練場に行って見ておくのも
いいんじゃないかなぁ、、、。そんなふうに思う。

(今日聴いた音楽 上方端唄 京の四季 
 歌 三味線 祇園 豆力 竹吉 笛 まき栄 録音年不明
 今日はジャズではないのです。笑)

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Comments

 井上八千代さん,浅利慶太演出のミラノ・スカラ座「蝶々夫人」(LD版;;;)で2〜3幕の間の部分で踊っていたのを見ました(シルエットだけど)
 静かな抑えた動きで,短い時間ながら「ああ,いいなぁ」と思いましたよ。

 それにしても,パジャマでお稽古って・・・(笑)

Posted by: Ikuno Hiroshi | 07. 04. 06 PM 10:22

----Ikuno Hiroshiさま
 それから、あの家の女性は井上八千代の名跡を継いだりしますから、井上姓なんですけど、本来のあの家の主人は狂言の片山さんちですから片山家なんですけどね。(ややこしい)秘書はいないんだそうで、あそこの家に電話すると、先代の井上八千代さんが生きていらっしゃった頃は、電話をすると、いきなり人間国宝が電話に出てくる、なんていうことがあったそうです。

Posted by: 謙介 | 07. 04. 06 PM 11:21

Greatings, Not enought information Have a nice day Jinny

Posted by: Jinny | 09. 02. 05 PM 4:53

----Mr.Jinny
Thank you.
The physical condition is not necessarily good.
However, it spends it thinking it is likely to become an enhanced day if every day is not cheated every day and it lives in sincerity.
Please you also must spend a good day.

Posted by: Kensuke | 09. 02. 05 PM 9:07

Greatings, Thank you! I would now go on this blog every day! Have a nice day Dirnov

Posted by: Dirnov | 09. 03. 17 AM 8:05

---Dear Mr.Dirnov
Do you always read?
It is really glad. Thank you.
The circumference of my body will been written in my word, and I want to exist so in the future though wonderful cannot be written. My best regards in the future please.

Posted by: 謙介 | 09. 03. 17 PM 10:44

Greatings, Where are you from? Is it a secret? :) Thank you AnnaHopn

Posted by: AnnaHopn | 09. 03. 22 PM 4:32

---Dear Anna Hopn
It is so. The place where it lives is concealed. Because the content written of me has sometimes written a very special matter. The reason for man of the same specialized field as me is that it is very few, and might be specified the person in the country in Japan. It doesn't make it public so at all.

Posted by: 謙介 | 09. 03. 23 PM 3:19

Great blog, how about links exchanging? Please contact me asap, Thanks.

Posted by: hearing aids | 11. 07. 20 AM 4:19

---Dear hearing aids

Now, my site has limited the link to the one in Japan. I will report the site in the foreign country because I do not link.

Posted by: 謙介 | 11. 07. 20 PM 2:05

謙介さん、こんばんは。

今の観世銕之丞の奥さんが井上さんですね。確かな記憶ではありませんが。片山家と観世家も関係があるんですね。観世流だからですかね。歌舞伎の家とか、欧州の王家みたいな世界ですね。

観世家の女の子は、皆京都で過すんでしょうか。男は青山で育つ?雑煮はどうする、言葉は、とか考えるとややこしいです。

Posted by: まさぞう | 11. 07. 21 PM 8:36

---まさぞうさん
はい。実は今の井上八千代さんは、別の名前が観世三千子さんでもあります。片山家の女の子は将来井上八千代を継ぐ、ということが決まっています。
観世宗家と片山家とが、親族関係になったのは、明治になってからです。二十二世観世清孝の三男元義が、六代片山九郎右衛門晋三の養嗣子となり、晋三の娘、光子と結婚し、のち片山家七代目を継承し、片山九郎三郎を名乗ります。兄の二十三世清簾には実子がなかったので、元義の長男清久を養子とします。これが後の二十四世左近です。
 
井上流と片山家との関係は、六代片山晋三が吉住春子と結婚しました。井上流は初代が井上サト、二世はサトの兄の子のアヤが継ぎます。三世は、サト、アヤの高弟であった春子が推されました。ただ春子が三世八千代を名乗ったのは晩年九十六歳の時で、それまで片山春子で通していました。都をどりを創始して祇園町との関係を深め、井上流を今日の隆盛に導いたのはこの人の功績です。

Posted by: 謙介 | 11. 07. 21 PM 11:13

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