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07. 03. 28

ねかはくは

西行のうたを書いているところ。
いつも食べ物の写真ばかりでは、、ねぇ。(笑)
なので今日は俺の書こうとしてる字を見ていただこうか、と。

Saigyo


まだこれは、草稿段階。絵で言えばラフスケッチの段階なんだよ。
とりあえず書いてみました、っていうあたり。

これから作品を創っていくとして、
まず最初に基本方針として確認しなければならないのは、
どういう字体で書いていくのか、っていうこと。

ひらがなを多く使った作品に仕上げるのか?
漢字を仮名読みさせた文字を多く使うのか?
どちらにするか、っていうことをまず決まる。
まぁ漢字を使ったら、その分やっぱりどうしても作品が硬く重くなるけどね。
ひらがなを使ったら、やはりやさしく軽い感じになりやすい。


次は作品のおおまかな「傾向」が決まったら、次はいよいよ作品の中身。
まず字をひとつひとつ見ていかなければならない。
一行目「ねがはくは」とある。かなの書道は、今の文章語みたいに、文字に濁点はつけない。
だから「ねがはくば」じゃなくて「ねがはくは」と書く。


それから
「は」の文字が近くに2つあるから、どちらかの「は」を違う字にしなければならない。
同じ字が接近した場所にいくつもある、というのは、避けなければならないのが鉄則。
もし、どうしても同じ字を使うのならくずし方を変えるとか、字の大きさを変化させるとか
しなければならない。
その部分は写真が切れて見えないけど。(笑)
次二行目、「はなのもとにて」
一行目に「は」が多かったのでここでも違う「は」。「者」という漢字をくずしてできた「は」
「な」は普通の「な」ではなくて「那」由来の「な」。「の」は「能」の字由来の「の」
「に」は「二」。「て」は「天」由来の「て」 
二行目は比較的多くこうした今のひらがな以外の変体仮名を使っている。(以下省略)

まぁ、こういうふうに、歌の中のひとつひとつの字を見ていく作業がある。
当然作品は上から下への縦書きだから、上から下へと視線が流れるときに、
途中どの字を置けば、作品が映えるか? とか視線がスムースに流れるか? 
ということを検討していかなくちゃならない。

それでよくないところがあったら、もちろん
それぞれの字を同じ読みをする、ほかの字に置き直しをしなければならない。


と、ここまで書くと、大抵の人は、「え? こんな書道の作品なんて
書かれてある通りに上から順番に書いていってるんじゃないの?」
って言う人がいるかもしれないね。 

それは全然違う。
そんな単純に書いていたのでは、作品になんかならないもの。

だって、音楽だってそうでしょ? 歌を歌うときに、
どこも同じ調子で、同じ強さで歌うのか? っていうことと同じでしょ。

一曲の歌の中で、聴かせどころっていう部分とかさ、逆に
ボリュームを落として、歌うところだってあるだろうに。
フィギュアスケートだって、見せ場ってあるじゃない?
どこで4回転を入れるか、とか、演技の「構成」っていうことを
考えなきゃいけないよね。それを書道では紙の上でやってる、
そういうこと。


たとえば、西行のこの歌の中で、思いの中心はどこか。そこをどう書くか
大きく書くなら、墨はふき取ってかすれた文字で大きく。
小さく書くなら、太く濃く。どちらの表現を使うか? 

その感動の中心の文字の墨の色が決まったら、
他の墨の色は、どこで墨をかすれさせて、どこで墨をつけて黒くするか?

そういうの墨の潤渇っていうんだけど、作品全体を見ながら、
墨の濃いところとかすれているところのバランスをみて
考えていく。

こんなことを書くと、今度は、「え? お手本は? 」って言う人が
出てくるかもしれない。
何で創作作品にお手本が要るんだよ。 変じゃないか (笑)

まぁ、実際はインスタントっていうのか手っ取り早くセンセイにお手本を
もらって書いて作品を仕上げるっていう人たちのほうが多いことは事実だけどね。

だけどさ、それはつまるところ、センセイの真似でしかないわけよ。
だから、そんなお手本の文字真似して書いて展覧会出すんだったら、
ヨドバシへでも行って解像度のいいスキャナ買ってきて、、ってやったほうが
良くない? (笑) 正直俺はそう思う。

だから、そういうお手本でしか練習していない人って、お手本の真似は
上手なんだけど、他の言葉を使って作品仕上げてみろ、って言われたら、
そういう人ってできないことが多いんだ。

応用が利かない。
そりゃ無理さ。基本の練習していないから。
基本の練習って言うのは、縦棒を書く、とか横棒を書くなんていうことじゃ
なくて、書の古典、って言われているような作品を全て一通り書いて
その作品の傾向を自分なりに把握しておく、ということ。
そういう基礎訓練をやってなくて、センセイのお手本、なんて
やるから、センセイのお手本しか上手に書けない、っていう
ことが起こるんだ。それは当然の結果だと思う。
確かにね、そっちのほうが楽なんだよ。
センセイがお手本くれて、それどおりに字を書いて、展覧会に出品して、、
っていうの。大して考えなくていいもん。(笑)
だけど、それじゃちっとも字を書いていく上でのセンスっていうものが育たない。

だからホントの作品作りっていうのはさ、自分でひとつひとつの字を見て
これはこの場所に置いていいのか、よくないのか
よくないのなら他のどの字を持ってくればいいのか?
そういうことを書きながら考えて行かなくちゃなんない。
そういう作業をする。

そうやって何百枚と書いて、時には何千枚と書いていって
ようやっとまぁこれかな、っていう作品ができるわけさ。
1枚だけ書いて、できた、ってそんなことあったら楽でいいよねぇ。(爆笑)
書道の作品って有名な人の作品たって、一つが百万円とか
するのあるけどね。
セコイ話をしたら、1枚1000円の紙を使って、2000枚練習したとして
小学校の算数問題だけど、200万だろ。

そのうえ、墨だって当然いる。筆だって場合によったら
新しいのを買わなくちゃなんない。なんて言ってたら
場合によったら一つ作品を仕上げようと思ったら、必要経費だけで
250万くらいかかる。それで100万で作品が売れたって、、ねぇ。
当然赤字だよ。
それに100万で作品が売れるのは、よほどの大先生クラスだからね。
だから大抵の書道の先生なんて、高校で書道を教えながら、とか
家がお寺で、とか、別に仕事を持って、そっちをやりながら、字も書いてる
っていう人が圧倒的に多いのさ。
そうじゃなきゃ経済的に成り立たない仕事だもん。
やっぱり好きじゃないとやっていけないんだよ。


何か字を書く人って、1枚だけ紙にさらさらっと字を書いて、ハイできました、って言って
それでウン百万もらった、、、なんて思ってる人が多くてさ。
うん、確かにすごく大きな字を書く場合、
(たとえば、バレーボールのコート1枚分とか)
そういう場合、紙が特注で1枚しかできなかった、 なんていうのは
特別中の特別で、ぶっつけ本番ってあながちないとは言えないんだけど、
普通に書いて、って言われたら、大抵の人だったら
何百枚とか何千枚とか、紙や墨を使って書くよ。
なのに、書道をしてる、って言ったら、そんな話をしてくる奴が結構多くてね。
「1枚書いて、何万円ももらえていいよな。」とか。

そういうことが実際あったとすれば、多分それは頼んできた奴が嫌な奴で、
字を書くほうが、何枚も書きたくなかったんだと思う。きっと。


さて
しかし、果たしてこの字が作品になって仕上がるのは、、うーん
いつのことだろう。(うーん。深い謎 笑)


(今日聴いた音楽 ザ・ビージーズ マサチューセッツ
 音源はLPレコード 1978年盤)

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Comments

わ、いつ見ても綺麗な書ですね。
僕は、文字が汚いのでうらやましいです。
そうですよね、何百枚、何千枚も書くんですよね、その上で技術も、完成も経費もそうですが、すばらしいものが生まれるんですよね。
綺麗な文字は、見ていて心が動かされます。
ありがとうございます。

Posted by: holly | 07. 03. 28 at 오후 7:39

-----holly くん
 綺麗だなんて、そんなことをおっしゃったら、謙介は舞い上がってしまいます。いけません。調子にすぐ乗るから。(笑)
 でもね、やっぱり写真が何千カットと撮って、
中の1枚を選んで、、っていうのと同じです。
 もうずいぶん前に亡くなったかなの日比野先生
っていう方は、家の表札の文字3文字を書くのに、
2千枚書いて練習した、という話を伺いました。
たった3文字、それもホントさりげない文字
なんですが、その裏に2千枚の練習っていうのが
あるんですよね。だから、1枚ポッと書いて
できた、なんていうことはないんですよ。
 でもこれは何でもそうでしょうね。スポーツだって
毎日の地道なトレーニングとか練習の積み重ねが
あって、結果が出るわけですし。
 こちらこそ、見てくださっていつもどうもありがとうございます。

Posted by: 謙介 | 07. 03. 28 at 오후 10:16

素敵ですね。見とれてしまいました。
見てるだけなのに、今にも文字が?言葉が?筆が?、、
これ自分でもよく分からないのですが、、
何かが動き出しそうな感覚が起こりますね。

ああでもない、こうでもない、と試すときの気持ち、
想像するだけで楽しくなります。と、謙介さんの心知らずに、勝手に楽しんでます。(笑)
僕の手も、こんなふうに、思うように動かせたらな。

Posted by: rhino | 07. 03. 29 at 오전 12:50

-----rhino さん
お言葉ありがとうございます。
ちょっと説明をしておきますと、筆は羊毛で、すごく柔らかい毛です。紙は日本の、じゃなくて中国の紙です。
羊毛の筆は柔らかい分、書きにくくて、思ったようになかなか動いてくれません。(タヌキとか馬だと毛が硬いので、書きやすいし、割と思った通りに筆が動いてくれるんですけど)でも自分の意にならない分、時々意外な
線を記してくれたりすることもあるんですよ。3行目の
はなのもとに「て」の「天」の字の線は、そんな意外な
気持ちを出してくれました。書き上がってから、ちょっと
自分でも驚きました。
 それでもなかなか気持ちを伝えるのは、むずかしいです。時には、うまくいかずに投げ出したくなる時も
ありはするのですが、いただいた言葉をはげみに、
ぼつぼつ手探りでやっていこうと思いました。
 本当にいつもどうもありがとう。

Posted by: 謙介 | 07. 03. 29 at 오전 10:06

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